子供の将来は教師次第?10歳で進路が決まる「ドイツの教育制度」 - cocoiro(ココイロ) - Page 3

中等教育/選択制

子供の能力や適性によって、ハウプトシューレ、実科学校、ギムナジウムのいずれかの学校に進学します。3つの学校の特徴を持つゲザムトシューレなども増えてきています。学習内容や在籍期間は学校ごとで異なり、また卒業時に与えられる資格もそれぞれです。試験に合格すれば別の学校への編入学も可能ですが、大学進学を目指すギムナジウムへの入学はかなり難しいのが現状です。

次の章では、それぞれの学校について詳しくご紹介します。

職人を目指す「ハウプトシューレ(ミッテルシューレ)」

ハウプトシューレは5年生の学校で、将来、職人系の仕事に就く子供が入学します。職人系といっても種類は多く、電気、機械、パンや料理などさまざまです。卒業後は職人として弟子入りしたり、職業学校へ進学したりとさまざまです。レアルシューレへの編入も認められています。ハウプトシューレではあまり成績が重視されないことから、勉強が苦手な子供や物作りが好きな子供が入学することが多いようです。

また、最近ではグローバル化の影響もあり、外国語生徒の受け皿という側面も持っているようです。

参考

ドイツの学校系統図 |文部科学省

事務系の職に就く「レアルシューレ」

将来、事務系や公務員の仕事を希望する子供が入学する学校です。在籍期間はハウプトシューレより1年長い6年間。授業では商業に関する実務を学びます。早い段階から職業体験ができるのも特徴的です。卒業後は専門大学へ進むことができます。

参考

ドイツの学校系統図 |文部科学省

大学進学を目指す「ギムナジウム」

ギムナジウムは「アビトゥーア」と呼ばれる大学入学資格を得て卒業する8年制の学校です。基礎学校4年生の通信簿が5段階のうち、評価が上に当たるオール1または2以上でなければ入学が難しいとされています。ドイツでは成績表の数字が小さいほど評価が高く、「1」は最高評価となります。ですから、入学する子供は勉強好きで成績優秀者が多くなります。入学しても授業についていけなければ、留年または「ランクを下げた学校への転校」となる厳しい環境です。入学からストレートに卒業できるのが6~7割程度とされています。

参考

ドイツの学校系統図 |文部科学省

10歳で将来の分かれ道?!ドイツの教育システム|ナレッジキャピタル

ゲザムトシューレ(統合制学校)とは?

先にご紹介した3つの学校の特徴を併せ持つ学校です。小学校での成績が問われることなく、全ての子供が入学を希望できます。1つの学校内で3つの学校タイプによるクラス編成がされており、生徒はいずれかのクラスを選択して学びます。

生涯有効な成績「アビトゥーア」とは

アビトゥーアは大学入学資格です。日本ではそれぞれの大学で入学試験が行われますが、ドイツではアビトゥーアを取得した学生は医学部などの一部の学部を除いて、希望する大学や学部にいつでも入学できます。アビトゥーアは、ギムナジウム最終学年に行われる全国統一試験と、ギムナジウムの最後の2年間の成績で決まります。全員が受かるわけではなく、再チャレンジは可能ですが、2回目のアビトゥーアで一定以上の成績が取れなければ、大学への入学はできません。

ドイツではアビトゥーアを取得していればいつでも何度でも大学に通うことができるため、就職してから大学へ進学する人や、大学卒業後に就職しても再び大学へ進学する人も少なくありません。ただし、医学部や法学部など人気の学科はアビトゥーアの成績が良くないと入れないなど制約があります。

参考

筆記試験5時間!ドイツのエリート教育の中身|東洋経済オンライン

ドイツで暮らす日本人の子供は現地校に通える?

転勤や期間限定でのドイツ生活なら、子供の進学先として、日本人学校を選択する人は多いでしょう。しかし、長期的にドイツで生活する場合は、現地での生活になじむためにも、現地校への進学を考える人もいるかもしれません。ここでは日本人の子供がドイツの現地校に通えるかについて解説します。

受け入れの可否は学校の校長次第

ドイツの公立小学校では、途中入学者を積極的に受け入れていないのが一般的なようです。ただし、生徒の入学に関する決定権は校長にあるため、入学は校長次第というのが現状です。A校ではダメでもB校では入学許可が出たということもあります。希望する学校がある場合は、校長先生と直接交渉するといいでしょう。

両親が英語でコミュニケーションを取れることが大前提

現地校に通うには両親のどちらかがドイツ語を理解している必要があります。先生やクラスメイト、その保護者と会話は原則ドイツ語です。渡独直後でドイツ語の習得が難しいということなら、最低限英語でコミュニケーションが取れないと現地校に進学させるのは難しいでしょう。

ドイツ語を学ぶ「語学習得援助プログラム」は充実

移民の子供が増えていることもあり、子供への語学習得の場は比較的充実しています。学校によっては、「基礎的なドイツ語を学ぶクラス」を設け、入学前に授業に困らないようにドイツ語を習得させます。一定レベルのドイツ語をマスターしなければ、現地校に入学できないとしているところもあります。

まとめ

ドイツではすべての子供が10歳で人生を選択しなければなりません。これについては、ドイツ国内でも賛否があり、議論が重ねられています。日本とドイツ、どちらの教育制度がいいかは一概にはいえませんが、いずれも教育改革が進行中です。今後の動向を見守りましょう。

参考

Bildungssystem in Deutschland|Wikipedia

Das Bildungswesen in der Bundesrepublik Deutschland 2015/2016(PDF)|Kultusminister Konferenz

Nr. 20 学校選び・現地の学校を選ぶなら|ドイツニュースダイジェスト

この記事をかいた人

高橋マリ―

元フリーアナウンサー。企業イベントMC、ラジオCMナレーションなどに携わるほか、科学専門番組のMC兼APとして大学教授などを多数取材。結婚後はしばらく専業主婦。のちに地域情報紙の編集・ライターに。夫の転勤で退職し、ドイツで妊娠、出産、保活を経験。関心は幼児教育、ダイエット、時短家事、アンガーマネジメントなど。2児の母。親子バレエサークルの名ばかり代表。現在はライターとして活動中。