月見草とはどんな植物?待宵草とはどう違う?月見草の花言葉と育て方 - cocoiro(ココイロ) - Page 3

文学や詩の中の月見草

太宰治『富嶽百景』

太宰治の私小説『富嶽百景』(青空文庫)は、高校の現代文の教科書に採用されているため、読んだことのある方も多いでしょう。その中の「富士には月見草がよく似あふ」(引用元:富嶽百景 太宰治|青空文庫は有名な一節です。

周りの人々が富士山をめでているときに、太宰は「あんな俗な山、見度くもない」(引用元:富嶽百景 太宰治|青空文庫と反対側を向きます。その際に、路傍で誰からも注目されることもなくひっそりと咲いている月見草を目にします。華々しい富士山に対峙するかのように咲いている月見草のけなげな姿に、太宰は好感を抱きます。

この一節は、華々しい文壇の王道を行く作家に対し、独自の世界を目指す太宰自らの姿を、月見草の地味ながらゆるがない姿に投影していたと考えられます。

ここでは重要な役割を果たす月見草ですが、太宰の見た「月見草」は、「黄金色の月見草の花」(引用元:富嶽百景 太宰治|青空文庫と書かれています。したがって、厳密には白い花をつけるツキミソウではなく、黄色い花のマツヨイグサだったと思われます。

竹久夢二原詩「宵待草」

「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな」という歌詞を聴いたことがありますか? 竹久夢二の詩歌に、多忠亮が曲をつけた「宵待草(よいまちぐさ)」が、かつては一世を風靡しました。

当時27歳の竹久夢二は、前年に離婚した妻と息子を連れて、千葉県銚子に避暑旅行へ出かけました。そこで偶然出会った19歳の長谷川カタに、夢二はひとめぼれをしてしまいます。結局、恋が実ることはなく、夢二は家族を連れて帰京します。

翌年、あきらめきれずに再び銚子を訪れた夢二は、カタがすでに嫁いだことを知ります。夢二は悲しみにくれ、いくら待っても来ることのない愛しい人への思いを抱き、夜を待って人知れず咲く待宵草に寄せて「宵待草」の原詩を詠みました。

(参照元:宵待草 高峰三枝子|Youtube

月見草の育て方

種まき

月見草は、秋に収穫して冷蔵庫で保管していた種を、翌年の2~3月にまきます。植え替えをするとうまく育たないことがあるので、最初から大きめの鉢に植えるか、庭植えにするといいでしょう。

種まきの際は、乾燥した種を1時間くらい水につけてから土の上に置きます。種に少しかぶる程度に土をのせ、水を与えましょう。月見草は発芽率が良く、種をまいた翌年に開花する「2年草」です。茎がある程度育ってきたら、支柱を立てて支えましょう。

置き場所

月見草は日当たりの良い、やや乾燥した場所を好みます。庭植えの場合は土を高く盛り、水はけが良くなるようにしましょう。暑さにも寒さにも強く、夏でも特に保護の必要はありません。冬は、簡単な霜よけ程度の保護をするといいでしょう。

用土

月見草は、水はけが良ければ土質は選びません。園芸店で売られているごく普通の草花用培養土でよく育ちます。粘土質の土壌に庭植えをする場合は、鉢植え用の培養土などを入れ、土壌改良をしましょう。

肥料

庭植えの場合、特に肥料は必要ありません。鉢植えの場合は、草花用の肥料を春から夏にかけて控えめにやります。肥料が多すぎると、枝葉ばかりが育ち開花が遅くなります。

水やり

月見草は乾燥した土壌を好むため、庭植えの場合は基本的に雨だけで十分です。晴天が続き地面が乾燥しているときのみ、様子を見て水やりをします。鉢植えの場合は、土の表面が乾いてきたら水をたっぷり与えます。

病気と害虫

月見草は丈夫で、ほとんど病気にかかることはありません。しかし、ハムシがつくことがあります。ハムシは春から秋にかけて葉を食べてしまいます。ハムシを発見したらすぐに取り、潰して駆除します。捕まえようとするとノミのように跳びはねて逃げるので、手に皿を持って皿に落として捕まえましょう。ハムシは増えると駆除するのが大変です。卵を産むとさらに増えるため、早めに手を打つことが大切です。

ハムシはキラキラしたものや反射光を嫌います。シルバーマルチやアルミ蒸着シートで株元を覆うと、ハムシの飛来を防げます。

まとめ

月見草は暑さにも寒さにも強く、庭植えであれば水やりの必要もなく、あまり手のかからない植物です。丈夫な植物なため品種によっては野生化し、路傍で人知れず花を咲かせていることもあります。

意外と身近にある植物なので、近所を散歩する際に注意して見てみましょう。ひと晩だけの可憐な花をつけるので、夏休みに子供と少し夜更かしをして、色の移り変わりを観察してみてはいかがでしょうか。

参考
イブニングプリムローズオイル、ボラージ(ボリジ)オイルのサプリ飲用はアトピー性湿疹に効果なし|被験者約1,600人による研究データから明らかに|ワイリー・ヘルスサイエンスカフェ
アトピー性湿疹の月見草油療法|特定非営利活動法人 日本食品機能研究会
スキンケア|特定非営利活動法人 日本アトピー協会
富嶽百景 太宰治|青空文庫
月見草(マツヨイグサの仲間)の基本情報|みんなの趣味の園芸
ツキミソウの花言葉/待てど暮せど来ぬ人を宵待草のやるせなさ|はなたま
宵待草 よいまちぐさ|世界の民謡・童謡
イブニングプリムローズ 月見草Evening primrose|緑の医学に取り組むグリーンフラスコ
国語教材としての太宰治「富嶽百景」―その指導法と読みの可能性について―|四天王寺大学紀要 第 56 号(2013年 9 月)
夏の夜に咲く月見草の育て方と待宵草との違い|LOVE GREEN
月見草(マツヨイグサの仲間)の育て方・栽培方法|みんなの趣味の園芸

この記事をかいた人

Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター。明治大学政治経済学部卒業。中国へ2年間留学。中国北京の日系広告会社で営業マネージャー。 結婚・出産後、北京で専業主婦。夫の転勤に同伴したフィジーで、アジアの女性のためのソーシャルグループ代表を務め、文化交流イベントを企画運営。2018年より、インド・デリー在住。ライターとして活動を始める。中国語HSK6級。TOEIC945点。中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期を迎えた1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。