『ぼくは勉強ができない』の読書感想文、どう書く?
実際に『ぼくは勉強ができない』の読書感想文はどう書けばいいのでしょうか? ここでは3つのテーマを挙げて、その着眼点について解説します。
秀美の人物像・人生観を書く
秀美は高校生にしてはいろいろなことを考え、悩み、達観しているところのある青年です。文中には彼の名言とも呼べる言い回しがそこかしこにあふれています。
ぼくは、人に好かれようと姑息に努力をする人を見ると困っちゃうたちなんだ。香水よりも石鹸の香りが好きな男の方が多いから、そういう香りを漂わせようと目論む女より、自分の好みの強い香水を付けている女の人の方が好きなんだ。
幸福に育って来た者は、何故、不幸を気取りたがるのだろうか。不幸と比較しなくては、自分の幸福が確認出来ないなんて、本当は、見る目がないんじゃないのか。
(引用元:ぼくは勉強ができない改版(新潮文庫)|楽天ブックス)
秀美の人生観はとても独特です。普通の高校生ってこんなことまで考えているんだろうかと訝しく思うほどなのですが、それが秀美の秀美たるゆえんなのかと感じます。
秀美の生活環境や経験から形成された人生観や人物像は、読書感想文の題材には非常に適しているといえます。
短編小説を1つ取り上げる
『ぼくは勉強ができない』は9つの短編小説から成っています。
- ぼくは勉強ができない
- あなたの高尚な悩み
- 雑音の順位
- 健全な精神
- ○をつけよ
- 時差ぼけ回復
- 賢者の皮むき
- ぼくは勉強ができる
- 番外編・眠れる分度器
主人公はすべて時田秀美です。彼の周囲で起こった出来事を、短編にまとめてあるのです。作品すべての感想が難しいのであれば、一番印象に残った短編を1つピックアップして書いてみましょう。
登場人物にスポットを当てる
おじいちゃん・お母さんという秀美の家族、桜井先生をはじめとする学校の教師、片山・山野といった同級生たち……。秀美を取り巻く環境にはさまざまな個性を持った人物が登場します。
山田作品のすごいところは、登場人物にもきちんとした役割設定があり、主人公の成長に結びつけているところです。自分の置かれている環境と比較したり、自分の周囲の人に当てはめてみたりすることで、「秀美とは違った感情を抱く」とか「同じように嫌悪感を抱く」などの感想を得ることができます。