【年齢別】子供の頭部外傷の原因
0~5ヶ月
この月齢の赤ちゃんが頭を強く打つことはあまりありません。自分で動き出す前の赤ちゃんが頭を打つとしたら、ベビーベッドやベッドからの転落、ソファからの転落が一番可能性があるでしょう。
赤ちゃんは日々成長しているため、昨日までできなかったことが突然できるようになります。寝返りできないからと安心せず、赤ちゃんのそばをほんの一瞬でも離れる際は、ベビーベッドの防護柵をきちんと上げたり、赤ちゃんを安全な場所に移したりしましょう。
6ヶ月~4歳
ハイハイができるようになると、行動範囲が広がり、家の中での事故の危険性が一気に高くなります。この時期の子供でよく見られるのが、階段からの転落事故です。赤ちゃんを2階に寝かせている場合、赤ちゃんがハイハイを始める前から階段の前に防護柵を付けましょう。歩けるようになると、興味津々の赤ちゃんはどこでも登ってしまいます。
階段の前の防護柵はもちろんのこと、ベランダに足がかりになりそうなものを置かない、椅子の座面がいつもきちんとテーブルの下に収納されているようにするなど、常に家の中を点検し、事故につながりそうなものをなくしましょう。言葉が分かる年齢になったら、何が危険かをきちんと言い聞かせることも大切です。
5~9歳
行動範囲が広がる上、スピードも加わるため、大きな事故の危険性が高くなります。自転車事故や、滑り台、鉄棒、ブランコなどの遊具からの転落事故が多くなる年齢です。自転車に乗る際は、必ずヘルメットをかぶる習慣をつけましょう。子供が公園などで遊ぶ際は、大人が1人ついていると安心です。子供同士の遊びやケンカに余計な口出しは不要ですが、事故につながりそうな危険なことだけは止めましょう。
小学校高学年~中高生
小学校高学年から増えるのが「スポーツ頭部外傷」です。スポーツ頭部外傷とは、スポーツ中に頭に衝撃が加わり、脳に損傷が及ぶけがのことです。事故が多いスポーツは、柔道、ラグビー、アメリカンフットボール、サッカーなど、選手同士の激しい接触を伴う競技です。
スポーツ頭部外傷で最も多い「脳震とう」は、すぐ回復する軽いけがのイメージがあります。確かに、脳震とうは1回起こしただけで命に関わることはほとんどありません。しかし、繰り返し起こした場合、2回目以降は大出血する可能性があります。
脳震とうを起こしたその日は、たとえすぐに回復しても、試合や練習に復帰することは絶対に避けましょう。指導者が事故に対する知識を十分持っているかどうか、学校やスポーツクラブに確認することも大切です。
けがの仕方による重症度判定
子供が頭を打ってしまった場合、どのようにけがをしたかが重症度を判断する参考になります。
軽度:足がついた状態で転倒
足が地面や床についた状態で転んだ場合や、止まっているものに頭をぶつけた場合は、あまり心配する必要はないでしょう。例えば、つかまり立ちをしていたらそのまま後ろに転倒して頭をぶつけた、はしゃいでいて机の角に頭をぶつけたなどです。
重度:高い場所から転落、大きな事故
同乗者が死亡した交通事故や、衝突で車外に放り出された交通事故、ヘルメットを着用しないで自転車に乗っていての転倒などの場合、2歳以下なら90㎝以上、2歳以上なら1.5m以上の高さから転落した場合は、重度の事故となります。見かけは元気そうでも、医師に相談した方がいいでしょう。
中度:それ以外
上の2つに当てはまらない場合は、「中度」のけがの仕方です。病院へ連れて行くかどうかは、子供の様子を観察した上で判断する必要があります。
病院へ連れて行く目安
すぐに受診すべき症状
- 意識障害がある。
一瞬でも意識を失った、目を開いていても呼びかけに応じずぼーっとしている、視線が合わない、顔色が悪く反応が鈍い、言っていることのつじつまが合わない、放っておくとウトウトと寝てしまうなどの症状が見られたら、一刻も早く病院へ連れて行きましょう。 - 呼吸が乱れている。(呼吸が速い、呼吸が浅い、苦しそう)
- 吐き気や嘔吐がある。気分が悪く食事がとれない。
子供の場合、頭を打って1~2回吐くことはよくあることなので、過度に心配する必要はありません。しかし、3回以上吐く場合は、すぐに受診すべきです。 - けいれんやひきつけを起こした。
- 強い頭痛がある。
- 目や耳の周りが黒くなっている、または鼻や耳から血の混ざった透明な液体が出ている。
- 手足の動きが悪い。しびれを感じる。
- 出血がひどく、処置を必要とする。
これらの症状は、頭を打ってすぐ見られるとは限りません。出血がゆっくりと広がり、症状が数時間後に出てくる場合もあるので、24時間は子供の様子を注意して観察しましょう。上記の症状が1つでも見られれば、その時点ですぐ病院へ連れて行きましょう。
家で様子を見てもいい症状
- 頭を打った直後は泣いたが、その後は泣き止んで遊んでいる。食事など普段と変わりない。
- 顔色や機嫌が悪くなく、体の様子も普段と変わりない。
- 1~2回吐いても、その後は吐かなくなり元気である。
- けいれんやひきつけがない。
- 頭痛を訴えない。
- 打った部分にへこみや出血がない。
- 1m以下(2歳以下の場合は90cm以下)からの転落で、顔色や機嫌は悪くない。
- いつぶつけたか分からないたんこぶがあるが、普段と違う様子はない。
※あくまで目安です。不安であればすぐに医療機関を受診して下さい。
頭を打ったときの応急処置と家での過ごし方
出血している場合は、傷口を消毒し、ガーゼや湿潤療法の傷パッドなどで止血します。家庭用サイズで止血できないほどの大きさの傷であれば、病院で処置してもらいましょう。
たんこぶは、保冷剤をタオルにくるんで冷やしてあげましょう。たんこぶは特別な処置をしなくても、数週間で自然に消えます。しかし、大きなたんこぶや、たんこぶがだんだん大きくなっていく場合は、病院で診てもらった方がいいでしょう。
頭を打ってから24時間は、経過観察が必要です。夜中も一度子供を起こして、容態が急変していないか確認しましょう。
まとめ
普段の心がけで次第で、事故を未然に防げたり、被害を最小に食い止められたりすることがあります。家の中や通園・通学路などをもう一度点検し、危険を及ぼしそうなものはあらかじめ取り除いておきましょう。それでも、事故はいつどこで起こるか分かりません。直後の応急処置が、予後を左右することもあるため、普段からひと通りの応急処置を頭に入れておきましょう。
参考
命にかかわるおそれも……子どものスポーツ頭部外傷を防ごう|NHKテキストビュー
こどもの怪我!こんなときどうする?|阪神北広域こども急病センター
医療に関する迷信・・・その2「頭を打ったとき、たんこぶができれば安心?|川越救急クリニック
子どもに「たんこぶ」が!どんな処置をしたらいい?|ベネッセ教育情報サイト