子供は体に対して頭が大きいため、バランスがとりにくく、よく転びます。また、危険を察知する能力が低いため、思いもよらぬけがをすることがあります。頭部を強打した場合、見た目には大きな外傷がなくとも頭蓋骨骨折などを起こし、命に関わることがあることは広く知られています。
しかし、「たんこぶができたら大丈夫」「子供がすぐに泣いたから安心」「吐くのは危ない」など、ちまたで頭部外傷についてよく言われることは、必ずしも正しくないことがあります。子供が頭を打った場合、重症度をどのように見分けるのでしょうか。病院へ連れて行くべき目安と共に詳しく解説します。
もくじ
たんこぶを甘く見てはいけない!子供の頭部外傷に関する誤解
誤解1 たんこぶができたら安心
たんこぶは、頭を強く打った際に毛細血管から出血してできます。たんこぶの有無や大きさと、頭蓋骨骨折は関係がありません。しかし、大きなたんこぶは、それだけ強く頭を打ったということなので注意が必要です。逆に、たんこぶもできないような軽いけがであれば、心配する必要はないといえます。
たんこぶには「硬いたんこぶ」と「ぶよぶよたんこぶ」があります。「硬いたんこぶ」は、皮下組織の中の毛細血管からの出血で、「皮下血腫(ひかけっしゅ)」と呼ばれます。打ったところに赤いポツポツとした発疹が見られます。硬いたんこぶは数週間で吸収されて消えます。
一方、「ぶよぶよたんこぶ」は、「硬いたんこぶ」より少し深い部分からの出血です。頭蓋骨は帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)という薄い膜に覆われていますが、その帽状腱膜と頭蓋骨の隙間に血がたまってできたもので、「帽状腱膜下血腫(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)」と呼ばれます。
帽状腱膜下血腫も数週間で自然と吸収されるため、頭蓋骨に問題なければ、特に治療は必要ありません。ただし、たんこぶが大きい場合や、急激に大きくなる場合、子供が幼い場合は、病院で診てもらいましょう。
誤解2 血が出たら安心・泣いたら安心
「血が出れば頭の中に血がたまらないので安心」「頭を打ってすぐ泣けば大丈夫」などといわれることがありますが、出血の有無や泣くかどうかは、頭蓋骨骨折と関係がありません。頭部や顔面は血流が豊富なため、小さな傷でも血がたくさん出る傾向があります。
頭を打てば、子供はほとんどの場合泣きます。子供が泣くか泣かないかは問題ではなく、頭を打った後の子供の様子をよく観察しましょう。頭を打って泣いても、泣き止んですぐ遊ぶようであれば、心配はいりません。
いつまでも泣き止まない、または泣き止んでもぐったりしているなど、いつもと違う様子が見られたら、すぐに病院へ連れて行きましょう。もちろん、泣くこともできないほどの重症の場合も、すぐ病院へ連れて行きます。
誤解3 吐いたら危ない
頭蓋内出血がある場合吐き気をもよおすことはよく知られているため、頭を打った後子供が嘔吐すると、親は慌ててしまいます。しかし、子供は敏感なため、頭を打つと1~2回吐くことはよくあります。多くの場合は一時的なものなので、吐いたからといって慌てる必要はありません。
吐いてもその後普段と変わらないようであれば、まずは様子を見ても構わないでしょう。何度も繰り返し吐いたり、ぼーっとしたり、意識を失うようであれば、一刻も早く受診しましょう。