【年齢別】指しゃぶりへの対処法
上で述べたように、指しゃぶりについての考え方は、専門家によって意見が異なることがあります。受診した小児科や歯科によって異なるアドバイスをされると保護者としては混乱したり不安になったりすることもあるでしょう。
ここでは、日本小児科学会、日本小児科医会、小児保健協会、日本小児歯科学会など各専門分野の代表者らによって設立された「小児科と小児歯科の保健検討委員会」の見解を参考にして、指しゃぶりへの対処法を年齢別にご紹介します。
1歳ごろまで
1歳ごろまでの指しゃぶりは、乳児の発達過程における生理的な行為であることから、無理にやめさせる必要はありません。保護者としても、この時期の指しゃぶりは自然なものだと考え、見守ってあげるといいでしょう。
1〜2歳ごろ
言葉をまだ上手に話せない1〜2歳の子供にとっては、自分の気持を落ち着かせる方法として指しゃぶりが有効なこともあり、それほど神経質にやめさせようとしなくてもいいとされています。
3〜6歳ごろ
3歳をすぎると、歯並びや噛み合わせへの影響が出てきやすくなります。子供の生活状況との関連も深くなってくることから、指しゃぶりの頻度を減らすための対応が必要になってくるとされています。生活リズムを整えたり、外で思いきり遊ばせてエネルギーを発散させるなど、生活の中でできる対応を実践できるといいでしょう。
小学校入学後
小学生になってからも指しゃぶりが続くようでしたら、小児科医、小児歯科医、臨床心理士などの専門家の連携による対応が必要となってきます。
参考
子ども達の未来のために―母子口腔保健と小児歯科医療の融合をめざして― 昭和大学歯学部小児成育歯科学講座 井上美津子|昭和学士会雑誌
指しゃぶりをやめさせる方法は?
ここまで説明してきた通り、子供の指しゃぶりは年齢によって対処方法が異なります。3歳前までは特に気にしすぎる必要はないというのが多くの専門家が共有している見解です。とはいえ、成長につれて本当に指しゃぶりをやめてくれるのかどうか、心配という保護者の方もいらっしゃるでしょう。子供の指しゃぶりの頻度を少しでも減らすために、日常の中でできる心がけについてご紹介します。
スキンシップを心がける
子供の気持ちを落ち着かせたり、安心感を与えてあげるためにスキンシップを心がけることが推奨されています。就寝前に指しゃぶりをする癖がある場合には、子供の手を握ってあげるなどしてみてください。
運動させてストレスを発散させる
環境の変化による緊張や、日々の生活の中で子供ながらに感じるストレスを緩和するために指しゃぶりをする場合があります。そういった緊張を解消する方法の代替手段として、運動する機会を増やすのもおすすめです。外遊びなどでストレスやエネルギーを発散させることは、適度な疲労をもたらし、子供の生活リズムを整えることにもつながるでしょう。
話して聞かせる
ある程度会話ができるようになってきたら、指しゃぶりをやめた方がいい理由についてお話ししてあげるのもいいでしょう。歯並びなどへの影響について噛み砕いて話してあげてもいいですし、分かりやすいたとえ話をして理解させてあげるのもおすすめです。子供の個性や性格に合わせて話し方を工夫してみてください。
指しゃぶり防止グッズについて
指しゃぶりを防止するためのグッズも販売されています。どのような商品があるのでしょうか。
通販サイトなどで頻繁に見かけるのは、「苦味のあるマニキュア」です。指をしゃぶったときに子供が苦味を感じることで、「指しゃぶり=まずいもの、不快なもの」といった認識を刷り込むことになります。マニキュアはオーガニック成分を使用したものなどを用い、子供が口に入れても問題ないようになっているものが多く見られます。
シリコンでできた指しゃぶりを防止するための矯正器も販売されています。本物の指と比べて吸い心地が悪く、指しゃぶりをしたくならないように誘導する仕組みです。
他に、指しゃぶり防止のための手袋も販売されています。
これらの防止グッズには一定の効果があるかもしれませんが、あくまでも物理的な方法です。子供が指しゃぶりをする原因が生活環境や心理面にあるのだとしたら、それらをうまく改善してあげることの方が重要です。より望ましいのは、いかに自然に指しゃぶりの頻度を減少させていくかを考えることでしょう。
絵本を利用する
夜、眠る時などに指しゃぶりをする癖のある子供には、絵本を活用する方法も有効かもしれません。親子水入らずの読み聞かせの時間を作ってあげることで、子供に安らぎと安心感を与えることにもつながるでしょう。
指しゃぶりを題材にした絵本もおすすめです。例えば、ポプラ社の『ゆびたこ』という絵本は、指しゃぶりが止められない小学1年生の女の子が主人公で、子供の指しゃぶりに悩む保護者の方に人気となっています。ある日、親指にできた指たこが話しかけてくるという内容。作者のくせさなえさんも小さいころに指しゃぶりが止められなかったとのことです。
こちらの絵本に関しては、効果があったというレビューと、なかったというレビューの両方があります。子供の年齢や性格によって、この絵本が指しゃぶり防止につながるかは変わってくるでしょう。
おわりに
子供が指しゃぶりをする理由や時期、歯並びや噛み合わせへの影響、年齢別の対処方法などについて解説してきました。繰り返しになりますが、指しゃぶりは胎生期から続く人間にとって自然な行為であり、月齢・年齢によっては、さまざまな有意義な効果を持つものでもあります。3歳前ごろまでは特に心配する必要はありません。一方で、歯並びや噛み合わせ等への影響があることも確かです。子供の年齢によって取るべき対応が変わってくることを頭に入れておきましょう。この記事が、子供の指しゃぶりにお悩みの方の参考になれば幸いです。
参考
小児期の口腔習癖とその治療法 大阪歯科大学 嘉藤幹夫|大阪歯科大学同窓会
指しゃぶり こども救急箱(61)|鹿児島大学医学部
乳幼児の保護者の皆さんへ、口と生活習慣のチェックポイント No.3|東北大学大学院歯学研究科 歯学イノベーションリエゾンセンター 地域連携部門 地域歯科保健推進室
子供が指しゃぶりをする原因と影響とは?やめない時の対処法|マウスケア辞典
ゆびたこ|絵本ナビ