指しゃぶりは防止した方が良い?歯並びへの影響や対処法について解説

「もう◯歳なのにまだ指しゃぶりをしている」「いつになったら指しゃぶりをやめてくれるのだろう」「指しゃぶりを続けることで何か弊害がないか心配」「指しゃぶりを防止するいい方法はないだろうか」などなど、子供の指しゃぶりについて悩みを抱える保護者は多いことでしょう。

指しゃぶりは、子供の年齢によって必要な対応が変わってきます。気にしなくていい時期もありますし、適切な専門機関の支援を受けながら対処することが推奨されるケースもあり、それらを見極めることが大切です。今回は、子供の指しゃぶりをやめさせるか判断するポイントや年齢別の対処法などについて解説します。

指しゃぶりは防止した方が良い?

指しゃぶりをやめさせる必要はあるのでしょうか。その必要があるのであれば、それはなぜでしょうか。まずは、指しゃぶりの理由や時期、歯並びや噛み合わせへの影響について確かめ、指しゃぶりを防止すべきか考察します。

子供が指しゃぶりをする理由

なぜ、子供は指しゃぶりをするのでしょうか。

指しゃぶりは母親の胎内にいるころからすでに始まっています。胎生16〜20週ごろになると指しゃぶりが見られるようになるよう。このような行動は、生後すぐに母乳を飲み始めるための準備だと言われています。

生後2、3ヶ月ごろの乳児にも指しゃぶりはよく見られますが、これらは目と手の協調運動や口の随意運動を促すという点で意味のある行動です。

参考

子ども達の未来のために―母子口腔保健と小児歯科医療の融合をめざして― 昭和大学歯学部小児成育歯科学講座 井上美津子|昭和学士会雑誌

子供が3歳ごろになっても指しゃぶりが習慣化している場合は、環境的な要因も考えられます。

例えば、2005年から2006年にかけて行われた調査「乳幼児における指しゃぶりの開始と習慣化にかかわる要因|口腔衛生会誌」によると、都市部に住む子供は他の地域に比べて指をしゃぶる子供の割合が低いという結果となりました。同調査では、都市部の方がおしゃぶりを購入しやすい環境にあることが影響していると考察されています。

また、同じ調査によると、「兄弟姉妹が指しゃぶりをしたことがある子供」は、「兄弟姉妹が指しゃぶりをしたことがない子供」よりも3倍以上、指しゃぶりを始めやすいことが明らかになっています。これらの調査結果は、子供が育つ環境が指しゃぶりの習慣化に影響するケースがあることを示しています。

一定の年齢をすぎても指しゃぶりが続く背景には、この他にも、精神的な緊張の緩和、子供自身の性格、発達の問題など、さまざまな要素が複雑に絡み合っていると考えられています。

指しゃぶりはいつからいつまで?

子供が指しゃぶりをする時期はいつからいつまでなのでしょうか。

前述したように、指しゃぶりは胎児のころから始まり、生後間もない時期にも自然な生理現象として続いていきます。5ヶ月ごろになると、玩具などの指以外の身の回りのものをあれこれと口に入れるようになりますが、指をしゃぶるよりも楽しいことを覚えていく過程で指しゃぶりの頻度は減っていきます。

1、2歳ごろになるとさらに指しゃぶりの頻度は減少していきます。言葉を覚え、口を使ってコミュニケーションを取る経験が蓄積され、手を使ってできることが増えていくためです。ただ、退屈なときや眠いときなどについつい指しゃぶりをする子も少なくありません。

参考

おしゃぶりについての考え方|日本小児歯科学会

3歳児はどうでしょうか。

長崎県内の10市町村において3歳児検診を受診した512名の3歳児(36ヶ月児から47ヶ月児)を対象にしたアンケート調査(2005年12月から2006年3月までに実施)によると、3歳児検診の時点で指しゃぶりが習慣化していた子供は15.8%でした。この調査からは、3歳児の8割以上が指しゃぶりを卒業していることが分かります。

参考

乳幼児における指しゃぶりの開始と習慣化にかかわる要因|口腔衛生会誌

3歳ごろまで指しゃぶりをしていた子供も、4歳から5歳ごろになるとその多くは指しゃぶりをしなくなると言われています。

当然ながら、子供の生活する環境や性格などには個人差がありますから、4、5歳以降も指しゃぶりが続いてしまう子供がいないわけではありません。

歯並びや噛み合わせなどへの影響は?

ある程度の年齢になってくると、指しゃぶりをすることで歯並びや噛み合わせに影響が出てくると考えられています。日本小児歯科学会のホームページでは、指しゃぶりの影響として以下の3つが挙げられています。

  1. 上顎前突(じょうがくぜんとつ):上の前歯が前方に出る。
  2. 開咬(こう):上下の前歯の間に隙間が空く。
  3. 片側性交叉咬合(こうさこうごう):上下の奥歯が横にずれて中心が合わない。

参考

おしゃぶりについての考え方|日本小児歯科学会

これらは、日常生活にどのように影響するのでしょうか。

まず挙げられるのは、口呼吸です。前歯が前方に出てくることで、唇を閉じるのが難しくなり、口で呼吸しがちになります。

次に、舌癖(ぜつへき)が挙げられます。舌癖とは、上下の歯の隙間から舌を出したり、飲み込むときに舌を突き出して歯を押し出すような癖のことです。このような癖により、サ行やタ行、ナ行、ラ行、などが発音しづらくなります。

専門家によって意見が分かれることも

子供の指しゃぶりをやめさせるかどうかについては、小児科医や小児歯科医、臨床心理士など、専門家によって意見が分かれる傾向にあります。

例えば小児科医の多くは、指しゃぶりは胎生期から続く生理的な行為であり、無理にやめさせる必要はないと考えているようです。また、指しゃぶりは緊張や不安を緩和したり、気持ちを落ち着かせる効果があることから、歯並び等への影響について、歯科医ほどには心配していないとも言われています。

それに対して小児歯科医の多くは、歯並びや噛み合わせへの影響や、それにともなう構音障害などを考慮し、一定の年齢を過ぎたころからの指しゃぶりは指導するのが望ましいと考えているようです。

臨床心理士は、子供の家庭環境や生活環境などの影響を重視し、4〜5歳をすぎても指しゃぶりが続いてしまう場合には、それらを問題行動の1つとして対応する傾向にあります。

なお、これらはあくまでも専門領域別の傾向であり、専門家がそれぞれ、考え方が一様でないことに留意しましょう。

参考

おしゃぶりについての考え方|日本小児歯科学会