子供の「頭の良さ」が、両親の学力やIQから遺伝の影響を受けるものなのかは、親御さんにとって最大の関心事と言えるでしょう。実際に、遺伝子がどれほど影響するのかについて、専門家の意見を交えながら、遺伝すると考える側、遺伝しないと考えている側の意見をお伝えします。また、この記事では子供の成長を促す学習環境の整え方についても解説します。
もくじ
頭の良さが遺伝する派の主張
半分は遺伝の影響
慶応義塾大学の安藤寿康教授は、「行動遺伝学」の第一人者として遺伝の影響について研究している人物です。行動遺伝学とは、膨大なデータに基づき、遺伝や環境により人間の性格や才能がどれほど影響を受けるのか研究する学問。安藤教授らは、7000組以上の双生児を対象にこれまで比較研究を進めてきました。研究では、性格は30~50%、知能は70%、学力は50%~60%、遺伝が影響を及ぼすと明らかになったといいます。つまり、学力に関しては、遺伝が半分の割合で影響を与えるとしているのです。年齢を重ねるにつれてその影響は大きくなるようです。
参考
行動遺伝学者に聞く「遺伝」と「環境」はどれくらい影響する?【中編】|ベネッセ情報教育サイト
「知能が遺伝する」という事実に、私たちはどう向き合うべきか?|NewsWeek
「努力する才能」が遺伝
では、「物理が得意になる遺伝子」「語学が得意になる遺伝子」がそれぞれ特定されているかと言うと、そうではありません。東京大学の分子生物学者である石浦章一教授は、次のように説明しています。
仮に、数学が得意な父親と苦手な母親の間に、数学が得意な息子が生まれたとしましょう。でも、コンピュータを使ってこの一家の遺伝子を詳細に調べても、父親と息子にあって母親にない遺伝子というのは、意外と見つからないんです。
これは、頭のよさが数百、数千というたくさんの遺伝子の組み合わせによって決まるせいだと考えられます。ですから、特定の遺伝子が原因で起こる病気などと比べれば、後天的な要因も大きいのではないでしょうか。
むしろ、一つのことをじっと考え続ける持続力や集中力などの能力が遺伝することの方が、学業には関係しているのかもしれません
(引用元:週現スペシャル 大研究 遺伝するもの、しないもの【第1部】一覧表でまるわかり 遺伝する才能、しない才能、微妙なもの|週刊現代)
知能に関する遺伝子が100%影響しないとしても、「粘り強く勉強し続ける才能」が親から子へと受け継がれて影響するのなら、結局は両親の頭の良さは子供の学力に影響を与えるとも考えることができるでしょう。