道徳の授業の指導案が読みたい!新学習指導要領に合わせた授業とは? - cocoiro(ココイロ) - Page 2

2018年からの新しい学習指導要領、道徳はどんな内容?

実際の授業内容や指導案を見ると、どのような授業が学校で行われているのか想像しやすくなったのではないでしょうか。続いては、2018年からの新しい学習指導要領で道徳がどのような内容になるのか、これまでとの変更点を具体的に見てみましょう。学習指導要領の全文は「小学校 特別の教科 道徳 | 文部科学省」で読むことができます。

道徳には特に「いじめに向き合う」という大きな課題があることが文部科学大臣からのメッセージで発信されています。

「主として自分自身に関すること」

道徳の学習指導要領には、大きく分けて4つの視点が設定されています。そのうちの1つ目が「主として自分自身に関すること」です。この視点は旧学習指導要領から名称の変更なく引き継がれています。

追加された内容 以前の内容 学年
「自分の特徴に気付くこと」 新規追加 小学校1・2年
「自信をもって行う」 「勇気をもって行う」 小学校3・4年
「長所を伸ばす」 「よい所を伸ばす」 小学校3・4年
「自律的に判断し,責任のある行動をする」 「自律的で責任のある

行動をする」

小学校5・6年
「安全に気を付けることや,生活習慣の大切さについて理解し」 「生活習慣の大切さを知り」 小学校5・6年
「短所を改め長所を伸ばす」 「悪い所を改めよい

所を積極的に伸ばす」

小学校5・6年
「より高い目標を立て,希望と勇気をもち,困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜く」 「より高い目標を立て,希望と勇気をもってくじけないで努力する」 小学校5・6年
「物事を探究しようとする心をもつ」 「進んで新しいものを求め,工夫して生活をよ

りよくする」

小学校5・6年

(参照元:小学校学習指導要領_特別の教科 道徳編 | 文部科学省  5ページ)

表現などが改められたほかは、小学校1年生で「自分の特徴に気付くこと」が追加された以外は大幅な変更がないことが分かります。

「主として人との関わりに関すること」

「主として人との関わりに関すること」は、改訂前は「主として他の人との関わりに関すること」という名前でした。

追加・変更された内容 以前の内容 学年
「身近にいる人」 「幼い人や高齢者など身近にいる人」 小学校1・2年
「家族など日頃世話になっている人々」 「日ごろ世話になっている人々」 小学校1・2年
「家族など生活を支えてくれている人々や現在の生

活を築いてくれた高齢者」

「生活を支えている人々や高齢者」 小学校3・4年
「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,相手のことを理解し,自分と異なる意見も大切にすること」 新規追加 小学校3・4年
「家族や過去からの多くの人々の支え合い」 「人々の支え合い」 小学校5・6年
「異性についても理解しながら,人間関係を築いていく」 「男女仲よく協力し助け合う」 小学校5・6年
「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに」 新規追加 小学校5・6年
「自分と異なる意見や立場を尊重する」 「自分と異なる意見や立場を大切にする」 小学校5・6年

(参照元:小学校学習指導要領_特別の教科 道徳編 | 文部科学省  6ページ)

変更点から大まかなポイントを抽出すると以下のようになります。

  • 「人・人々」を「家族などの人・人々」と具体的に表記した
  • 「自分の考えや意見を伝える」が追加された
  • 異なる立場・意見・異性などへの配慮・尊重が重視された

社会の変化や多様性に考慮しつつ、家族といった伝統的な社会の単位も重視するという姿勢が表れています。

「主として集団や社会との関わりに関すること」

「主として集団や社会との関わりに関すること」は、改訂前も同じ名称で、4番目の視点として位置づけられていました。2つ目の「主として人との関わりに関すること」とも似通っていますが、より広い社会との関わりとして見ることができます。

追加された内容 以前の内容 学年
「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」 新規追加 小学校1・2年
「働くことのよさを知り」 「働くことのよ

さを感じて」

小学校1・2年
「家族の役に立つ」 「家族の役に立つ喜びを

知る」

小学校1・2年
「我が国や郷土の文化と生活に親しみ」 「郷土の文化や生活に親しみ」 小学校1・2年
「他国の人々や文化に

親しむこと」

新規追加 小学校1・2年
「約束や社会のきまりの意義を理解し,それらを守る」 「約束や社会のきまりを

守り,公徳心をもつ」

小学校3・4年
「誰に対しても分け隔てをせず,公正,公平な態度で接すること。」 新規追加 小学校3・4年
「楽しい学級や学校をつくる」 に「楽しい学級

をつくる」

小学校3・4年
「我が国や郷土の伝統と文化

を大切にし,国や郷土を愛する心をもつ」

郷土及び国との関わりに関する内容を統合 小学校3・4年
「他国の人々や文化に親しみ,関心をもつ」 新規追加 小学校3・4年
「法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを守り」 「公徳心をもって法やきまりを守り」 小学校5・6年
「差別をすることや偏見をもつことなく,公正,公平な態度で接し」 て「差別をすることや偏見をもつことなく公正,公平にし」 小学校5・6年
「働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに,その意義を理解し,公共のために役に立つことをする」に 「働くことの意義を理解し,社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする」 小学校5・6年
学校との関わりに関する内容に含めた 「身近な集団に進んで参加し,自分の役割を自覚し,協力して主体的に責任を果たす」 小学校5・6年
「みんなで協力し合ってよりよい学級や学校をつくるとともに,様々な集団の中での自分の役割を自覚して集団生活の充実に努める」 「みんなで協力し合いよりよい校風をつくる」 小学校5・6年
「我が国や郷土」「国や郷土」 「郷土や我が国」「郷土や国」 小学校5・6年
「他国の人々や文化について理解し,日本人としての自覚をもって国際親善に努める」 「外国の人々や文化を大切にする心をもち,日本人としての自覚をもって世界の人々と親善に努める」 小学校5・6年

(参照元:小学校学習指導要領_特別の教科 道徳編 | 文部科学省  6-8ページ)

  • 自分の好き嫌いにとらわれない
  • 分け隔てをしない
  • 他国の人々や文化に親しみ、関心を持つ

以上のように、差別や偏見をなくすことに関わる項目が追加されています。「いじめに向き合う」という大目標のもとに、これらは今後の授業で大きく活かされてくるポイントではないかと考えられます。

一方「国」は「我が国」に言い換えられるなど、所属意識を高めるような変更も見受けられます。多様性に配慮しつつ、「国」という単位を強調することにより「我」と「彼」の違いを強調するように授業を展開することも可能な内容となっています。国籍など、子供たちのバックグラウンドが多様化している学校も少なくない中、この変更点をどのように指導に活かしていくかは現場でも議論がありそうです。

「主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること」

「主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること」は、改訂前は「主として自然や崇高なものとの関わりに関すること」と3番目にあったものです。

追加された内容 以前の内容 学年
「生きることのすばらしさを知り」 「生きることを喜び」 小学校1・2年
「生命の尊さを知り」 「生命の尊さを

感じ取り」

小学校3・4年
「自然のすばらしさや不思議さを感じ取り」 「自然のすばらしさや不思議さに感動し」 小学校3・4年
「生命が多くの生命のつながりの中にあるかけがえのないものであることを理解し,生命を尊重すること」 「生命がかけがえのないものであることを知り,自他の生命を尊重する」 小学校5・6年
「美しいものや気高いもの」 「美しいもの」 小学校5・6年
「よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し,人間として生きる喜びを感じること」 新規追加 小学校5・6年

(参照元:小学校学習指導要領_特別の教科 道徳編 | 文部科学省  8ページ)

「美しい」「気高い」など、主観的ともとれる表記があり、指導の方法の難しさがうかがえる内容ですが、いじめに向き合うという大きな柱のもと、人生や命に関わる視点に修正が入っていることが分かります。