子供のころ、扇風機をつけたまま寝ると死んでしまうという話を聞いたことがあります。子供心にも本当なのかといぶかしむ気持ちはありましたが、なんとなく扇風機はつけたまま寝てはいけないのだということがインプットされています。
夏の暑い時期になると扇風機が大活躍しますが、つけっぱなしで寝てしまうと何か大変なことになるのではないかと心配になることはないでしょうか? 特に子供部屋で使用する場合などは親が一晩中管理するわけにもいかないので、使用方法や注意点を親がきちんと理解して子供に教えるようにしなくてはいけません。
この記事では扇風機をつけっぱなしにした時のリスクについてまとめました。子供部屋やリビングで安全に扇風機を利用する方法もご紹介しますので、ぜひ参考にして寝苦しい夏の夜を乗り切ってください。
もくじ
扇風機をつけたままで寝ると死ぬの?
扇風機をつけたまま寝ると死んでしまうといわれているのは何故でしょうか? 2018年6月29日の朝日新聞では、エアコンや扇風機が原因となった火災事故についての記事が書かれています。独立行政法人の製品評価技術基盤機構が行った調査で、扇風機の火災原因としては、
- 長い期間使用したことによる部品の劣化(モーター・コンデンサー)
- 首振り運転の繰り返しによる配線の切断
などが考えられるという結果が出ています。扇風機をつけたままで寝るとこのような事故を起こし、巻き込まれる可能性があることを示唆しています。
考えられる死亡原因
機械の故障や不具合による事故以外に、扇風機をつけたまま寝た場合死ぬといわれている理由は2つあります。
低体温症
扇風機の風が当たり続けることによって、体の熱が奪われ低体温症に陥る可能性があります。
医学的な「低体温症」とは、救急医学会の「偶発性低体温症」の定義では、体の中心部の温度が35℃以下の場合をいいます。
普通の人では、体の中心部の温度は37℃程度に保たれています。そして体の中心から離れた皮膚の温度はそれより低くなっていきます。この図の「暑い環境」では、体の中心部はもちろん、腕や脚の中心部分までが37℃になっています。
「涼しい環境」では、頭や胴体の中心部のみが37℃で、肩から腕、下腹部から脚にかけて広い範囲で温度が低くなっています。
ところが「寒い環境」では体の中心部でさえも35℃以下まで低下してしまうことがあり、これを「低体温症」の状態といいます。
(引用元:低体温症について 子供の低体温 体温と生活リズム|テルモ体温研究所)
扇風機の風に長い間当たっていれば体温は奪われます。つまり扇風機の風で「寒い環境」を作ってしまう、もしくはエアコンとの併用で室温が低くなりすぎてしまい、それが原因で低体温症を発症する危険性があるということです。
脱水症状
「扇風機をつけたままで寝ると脱水症状を引き起こす可能性がある」といった説もありますが、この説に関しては医学的根拠がありません。
人間は寝ている間でも汗をかきます。特に蒸し暑い夜などは汗をかくことが多くなります。汗をかいた状態で直接扇風機の風にあたり、盛んに蒸発が起きることで体内の水分が奪われます。皮膚からわずかに出ている汗が扇風機の風によって蒸発し、体内から水分が減ってしまうことが考えられるため、都市伝説の域を出ませんが、可能性として考えられるという意味で脱水症状も原因の1つとして考えられているようです。
寝ている間にも汗をかいており、一晩でコップ一杯分もの水分が身体から失われています。また、暑さのため眠れないと体力が奪われますし、睡眠不足自体も熱中症のリスクになります。
人間は発汗以外にも皮膚及び呼気から水分を失っています。これは不感蒸泄※と呼ばれ、意識しなくても起こることですので、汗をかいていなくても水分補給は必要となります。
※体重60kgの人が平熱、室温28℃の環境で1日に約900ml。体温が1度上昇すると約15%増加すると言われています。
(引用元:室内で起こる熱中症 対策と対処法|大塚製薬)
ただし、健康な状態の人であれば、寒ければ体に異変を感じる前に目が覚めますし、喉が渇けば自ら水分補給をします。その状態に気づかずに寝てしまう原因のある人、例えば以下のような場合には注意する必要があります。
- 泥酔している
- 既往症(きおうしょう)による体調不良がある
- 加齢に伴う身体機能の低下がみられる