「子供に小さいころから楽器を習わせているのに、歌わせてみたら音痴だった」という体験をしたことはあるでしょうか。楽器のレッスンは問題なく進んでいるのになぜ? と疑問を持つかもしれません。特に、絶対音感のトレーニングをしている家庭はショックを受けるかもしれません。絶対音感と「音痴」との関係について解説します。
絶対音感でも音痴になることがある?
「絶対音感」という言葉には音楽的に優れた能力が持つという印象があるように感じられます。ですから「絶対音感」と「音痴」は関連しないと思うのではないでしょうか。実際に絶対音感で、かつ音痴ということはあり得るのでしょうか。
絶対音感の音痴とは
絶対音感の「音痴」について考えるために、まず絶対音感の定義を確認しておきましょう。絶対音感とは、簡単に言えば「鳴っている音の音高を、ヒントなしに正しく答えることができる能力」ということ。音高とは音の名前であり、「ドレミファソラシド」などの名前が付いているものだと考えてください。
これを狭義の絶対音感とすると、一般的に使われている広義の「絶対音感」は、かなり幅広い範囲をカバーしている、と指摘している研究者もいます。
絶対音感 | 音楽的音高を答える | 同定課題 | 音名による命名 |
弁別課題 | 音高を調節 | ||
音高を発声 | |||
音楽的音高を答えない | 同定課題 | 既知の旋律の同異判断 | |
弁別課題 | 歌声の一貫性 | ||
音高の再現 | |||
単語発声の一貫性 |
(参照元:絶対音感の定義・形成・符号化をめぐる問題 | 心理学評論 512ページ)
上記の表では、「音楽的音高を答える」の中の「同定課題」にある「音名による命名」が、狭義の絶対音感です。この論文では、「音高を発声」「歌声の一貫性」「音高の再現」なども広い意味で絶対音感に含まれることがある、としています。
これらの能力は、歌を歌うときにも発揮されます。狭義の絶対音感があっても、広義の絶対音感がない場合は「絶対音感なのに音痴」だとみなされると考えられます。
その他の音痴との違い
「絶対音感がない音痴」である場合、自分が音痴だということに気づいていない可能性もあります。一方、絶対音感のある人は音程、リズムなどが正しくないことを認識しつつも、理解していることを上手に歌に反映できていません。
絶対音感がない人の音痴を直すなら、正しい音程を聴いて理解するところから始めなくてはいけませんが、絶対音感のある人はその先の段階からトレーニングをすればいいということになります。