絶対音感がある子供の割合はどのくらい?メリット・デメリットとは ( 2 )

絶対音感を持つ割合はどのくらい?

絶対音感はとても珍しい能力だという印象を持っている人は少なくありません。特に日本では、絶対音感は音楽のプロになるのにとても重要な能力だと考えられています。その前提が正しいのかを確認するための調査をもとに、そちらから絶対音感を持つ人の割合をご紹介します。

現在の通説

現在の通説では、絶対音感の割合は1万人に1人程度と言われているそうです。これを聞くと非常に珍しいように感じますが、このデータはあまり正しいものではないそうです。この通説を再検証した論文「絶対音感を巡る誤解 | 日本音響学会誌 」の要約を紹介します。

1940年に絶対音感保有者に関する調査が行われ、シカゴ地域で123人の絶対音感保有者が見つかりました。このとき何人の中から123人が見つかったのかは分かっていません。

それをざっくり、そのエリアの人口(400万人)で割った数が報告されました。これをパーセントにすると0.003%(10万人中3人)となります。

この数値もとに、もう少し絶対音感保有者が多い可能性を考慮して数値を修正した結果、現在の「1万人に1人」という通説が出来上がったということになります。これは科学的な調査としては信頼できる手法とは言えないでしょう。

日本の調査

2012〜16年度にかけて、科研費で「音楽学生における絶対音感と相対音感の国際比較」という課題が研究されていました。こちらの調査結果を見てみましょう。

絶対音感テスト 正答率の中央値 90%以上の正答率があった人の割合
新潟大学教育学部音楽専攻 143人 0.75 35.00%
京都市立芸術大学音楽学部 175人 0.95 60.00%

(参照元:音楽学生における絶対音感と相対音感の国際比較 研究成果報告書 | 科研費

日本では、正答率の中央値が比較的高くなっています。90%以上を正しく回答した人を絶対音感とするなら、「絶対音感とまでは言えなくても音高をかなり正しく捉えられる人が多い」ということでしょう。

海外の調査

「音楽学生における絶対音感と相対音感の国際比較」では、海外での調査も行っています。こちらの結果も見てみましょう。

絶対音感テスト 正答率の中央値 90%以上の正答率があった人の割合 大学のある国
首都師範大学音楽学部 94人 0.367 6.00% 中国
中央音楽学院 63人 0.667 25.40% 中国
上海音楽学院 103人 0.553 27.70% 中国
ショパン音楽大学 127人 0.15 11.00% ポーランド
マルチン・ルター大学音楽学インスティテュート 61人 0.075 0% ドイツ
ミネソタ大学音楽学部 100人 0.083 0% アメリカ

(参照元:音楽学生における絶対音感と相対音感の国際比較 研究成果報告書 | 科研費

日本と比較すると、正答率の中央値も90%以上正答した人の割合も、圧倒的に少ないのが分かります。特に、マルチン・ルター大学とミネソタ大学では「絶対音感を持つ人がいない」と言える結果が出ています。いずれも音楽を専門とする学生であり、評価の高い音楽大学に所属していますので、音楽的な能力が低いからとは考えにくい結果です。

本調査では、このような結果の違いは主に日本で絶対音感を獲得する教育が非常に重視されているためではないかと結論しています。つまり、絶対音感を持つ人の割合は、その社会で絶対音感を伸ばす教育をどのくらい施しているかによって大きく変わる可能性があると言えるでしょう。

興味深いことに、同じ大学で相対音感をテストしたところ、日本の学生はとても成績が悪く、海外では良好な成績の大学が出るという逆の結果となったそうです。音楽家としては絶対音感と相対音感のどちらを伸ばしたほうがいいのかという問題については、これからの研究に期待したいところです。