受験・教育界での巧緻性
巧緻性の概念が応用でよく使われるのは受験・教育界です。特に小学校受験の場合は、巧緻性を見るための実技テストが行われることが多いようです。実技テストといっても、スポーツの実技テストではありません。科目でいうと「図画工作」に当たるものが多いようです。
単純に巧緻性というと、以下のような作業を含むものと考えます。
「切る」
「貼る」
「折る」
「塗る」
「結ぶ」
「巻く」
「通す」
「丸める」
「包む」
「ちぎる」
こうした作業は、手や指先を使うことによる巧緻性で、制作や絵画に始まり、しつけ面や共同で何かをする、というように、いろいろな形で含まれてきます。そして、これらの作業がスムーズにできないと、テストの課題をこなすには支障となってしまうわけです。
(引用元:【連載コラム】『ゼロからわかる「お受験」講座』第14回 合格するための「行動観察」トレーニング—その(2)「巧緻性」|学研出版サイト)
巧緻性テストの場合は、上で引用したような作業を複合して何かを作るという課題が出されます。「画用紙を丸く切ってクレヨンで絵を描き、台紙に糊を使って貼ってパンチで穴を開けて紐を通す」といった一連の作業をさせ、適切に道具が使えているかどうかを確かめるようです。
生活能力と巧緻性の関連が注目されている
もとは体全体の調整能力という意味合いが強かった巧緻性ですが、近年では生活能力と関連があるのではないかと注目されています。この場合は、特に手指の巧緻性が重視されているようです。「手先の器用さ」と言い換えることができるかもしれません。
手指の巧緻性低下の実態は,家庭科の実習においてはかなり以前から指摘されており,中でも被服製作学習においては,針に糸が通せない,玉結び ・ 玉どめができないことから始まり,以前に比べ授業進行が停滞しがちな状況である.
他教科においても,例えば数学教師からは,コンパス・定規で正確に作図ができなくなっている,理科教師からは,実験においてガラス器具が壊されることが多くなったなどの声を耳にする.これらも手指の巧緻性低下の現れと考えるが,改善にむけた対策が十分に図られていない.
(引用元:生活の自立,学力と児童の手指の巧緻性に関する研究 | 日本家政学会誌)
上記のような問題意識のもとに、手指の巧緻性と生活能力の相関が研究されています。「小学校児童における手指の巧緻性の学年差と男女差 | 東京学芸大学リポジトリ」では、折り紙・料理・編み物などの手指を使う遊びを好む子供は巧緻性が高い可能性が示唆されています。
生活能力だけでなく、学力と巧緻性も関連があるのではないかと考える研究者もいるようです。それらについても研究が進められているようですが、「巧緻性を高めれば必ず学力が伸びる」と言い切れるほどの結果は出ていないようです。
ただ、何かを自分の力で達成できると、子供の中で「やればできる」という自信が醸成されます。手指の巧緻性はそのような自己肯定感を支えてくれる可能性がありそうです。
参考
PB-012 児童における手指の巧緻性と計算能力の関係(発達,ポスター発表) | 日本教育心理学会総会発表論文集
手指の巧緻性に関わる生活動作について | 目白大学リポジトリ
巧緻性を高めたい!遊びながらできるトレーニング
手指の巧緻性が高いと、自分でできる作業の幅が広がります。小学校受験でも、まずは家庭でさまざまな遊びを通して巧緻性を高めることを推奨しているようです。遊びながらできるトレーニングをご紹介します。
ひも通し・ビーズ
年齢に合わせてさまざまな種類があるひも通しのおもちゃ。穴にひもを通すという、大人には難しくない作業も、低年齢の子供にとっては時間がかかるイライラする内容になるかもしれません。ひも通しのパーツが子供の好きな動物などのキャラクターになっていると、子供もより楽しんで取り組めるようになります。
アクセサリーに興味のある子供なら、子供用ビーズキットでも楽しめます。子供にとっては小さいパーツもあるので、誤飲には気をつけてください。心配な場合は、店頭でサイズや安全性を確認して購入するといいでしょう。
塗り絵
小さい子供に塗り絵を与えると、下絵の枠線からはみ出して色を塗ったり、塗り絵の上から絵を描いたりします。まずは自由に遊ばせながら、少しずつ「枠からはみ出さずに塗る」「色を均一にムラなく塗る」といったやり方を習得させていくといいでしょう。
子供が好きなキャラクターの塗り絵が無料でダウンロードできるサイトもあります。本を買い与えると「ちゃんとやらせよう」という気持ちになってしまう、という親は、そういった手軽なものから始めると気負いなく楽しめるかもしれません。
参考
ダウンロード|ディズニーキッズ公式
ぬりえダウンロード|ドラえもんチャンネル