プール使用に適した水温は?子供が事故なく楽しく夏を過ごすために - cocoiro(ココイロ) - Page 3

暑い時のプール使用にはどんなリスクがあるの?

プール使用時のリスクは、寒いときだけとは限りません。暑いときには暑いときの、別のリスクがあります。

プールに入っていても熱中症は起こる

近年夏のスポーツで大きな問題となっているのが、温暖化による酷暑と熱中症です。環境省が刊行している『熱中症環境保健マニュアル2018』によると、スポーツ活動下の熱中症は、7月下旬と8月上旬に多く発生しているとのことです。学校ではラグビーやサッカーなど走ることの多い屋外競技、剣道や柔道などの屋内競技、ランニングや体力づくりの最中などに多く発生しますが、水泳も例外ではありません。

冷たい水の中にいるので熱中症とは無縁のように思われますが、水中でも発汗や脱水は起こります。さらにプールサイドは、コンクリートの照り返しが起こることや日よけがないことなど、高温になりやすく日光を受けやすい環境です。またプール活動中は飲食禁止であることが多いため、水分補給ができません。プールもまた、熱中症の起こりやすい場所なのです。

参考

熱中症環境保健マニュアル 2018|環境省

暑さ指数とスポーツ時の熱中症発生の関係

熱中症予防のための指標としては、暑さ指数(WBGT)というものが用いられます。これは、人体と外気との熱のやりとりに着目した指標で、次のような式で算出します。

WBGT(屋外)= 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

WBGT(屋内)= 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

※乾球温度:通常の温度計が示す温度。いわゆる気温。

※湿球温度:温度計の球部を湿らせたガーゼで覆い、常時湿らせた状態で測定する温度。

※黒球温度:黒色に塗装された薄い銅板の球の中心部の温度。周囲からの輻射熱の影響を示す。

参考

熱中症環境保健マニュアル 2018|環境省 p14

日本体育協会は、熱中症予防のための運動指針を次のように示しています。

(参照元:熱中症環境保健マニュアル 2018|環境省 p45)

どの段階でも水分補給を適切に行い、気温30℃、暑さ指数28℃を超えるような場合は、運動を見合わせるべきでしょう。

熱中症を防ぐ対策となった時の対処法

熱中症を防ぐためには、第一に気温などの状況を把握し危険の高い時は運動を避けること、水分補給をこまめに行うことです。また、吸汗性や通気性の良い衣類を着用し、決して無理をせず、体調がおかしいと思ったらすぐに運動を中止して、必要な対処を取りましょう。

熱中症になってしまったら、次のように対処します。

(参照元:熱中症環境保健マニュアル 2018|環境省 p18)

上の表は、熱中症の症状と重症度を分類した表です。

I度の症状が見られたら、すぐに涼しい場所へ移して衣服を脱がせたり緩めたりし、体を冷やします。首の下や腋の下、太ももの付け根などを冷やすのも効果的です。また、冷たい水やスポーツドリンク、経口補水液などを飲ませ、水分と塩分を補給しましょう。

様子がおかしい場合や自力で水を飲めない場合、応急処置をしても症状の改善が見られないような場合は、II度と判断して病院へ運びます。意識不明の状態は、重症のII度です。III度に至る場合は、入院しての治療が必要です。

プールを使う前に準備しておきたいこと

リスクを避けるため、プールを使用する前にできる対策はしておきましょう。

プールに入るかどうかの判断は子供の体調次第

ここまで見てきた水温や気温などの外的な条件は、あくまでも一般的な目安です。外的な気候条件がどのように影響するかは、子供の体調やその時の体力、睡眠や食事などのコンディションでも変化します。「この程度の水温、気温なら大丈夫」と思い込まず、子供の体調と相談して判断しましょう。

体を覆うタオルや衣類、水分を用意しておこう

寒さや暑さ、風や日光など、プールサイドの気候条件に対処するために、大判のバスタオルや羽織れる衣類などを用意しておきましょう。体を覆うものは、寒さから体温を守るためにも、直射日光を防ぐためにも、どちらにも役立ちます。また水分の用意は忘れずに、適宜補給できるようにしておきましょう。

まとめ

文部科学省『水泳指導の手引』は、水泳について次のように定義しています。

水泳は、水の中で全身を使い、水温、気温の影響を受けながら展開される運動

(引用元:文部科学省(平成26年3月)学校体育実技指導資料第4集『水泳指導の手引(三訂版)』)第4章 水泳指導と安全, P125

水温や気温などの外的条件、子供の健康状態などの内的条件で水泳のコンディションは大きく変わり、ときに事故も誘発します。楽しいプールも友達との夏の思い出も、安全で無理のない活動から。正しい知識と慎重な判断で、事故なく楽しく夏を終えましょう。

参考
文部科学省(平成26年3月)学校体育実技指導資料第4集『水泳指導の手引(三訂版)』

公益財団法人日本水泳連盟『プール公認規則』(2018.4.1施行)

偶発性低体温症|日本救急医学会

Hypothermia kills: These tips can save your life|OFFICIAL BLOG OF THE 9TH COAST GUARD DISTRICT

低体温症|MSDマニュアル家庭版

熱中症環境保健マニュアル 2018|環境省

この記事をかいた人

菊池とおこ

北海道大学文学部行動科学科卒。行政系広告代理店、医薬系広告代理店、地方自治体の結婚支援事業担当などを経て独立、ライターに。女性のライフイベントと生き方、働き方、ジェンダー教育などが主な関心分野。大学院進学を視野に入れて地元大学のゼミ(ジェンダー・スタディ)に参加中。趣味は音楽、中学より本格的に合唱を始め、現在も合唱団に所属。ネコのおかあさん。子供と接する時は、自由人の叔父ポジション。