ネグレクトをする親は、自身も虐待の被害者であることが多い
我が子をネグレクトする親は、自分自身も虐待されて育った事例が多く見られます。愛情の「栄養」が得られない環境で育つと、「責任ある大人としての社会性」や「他人を思いやる情緒性」をはぐくむ機会が得られません。社会性や情緒性が欠如したまま大人になり、自分が子育てをする番になると、我が子への虐待という「虐待の世代間連鎖」が起こりやすくなります。
理化学研究所は、人間を含む霊長類は、子育て能力を発達するために以下の3つの経験が必要であるとしています。
- 自らが社会的な環境の中で適切に育てられる経験
- 子育てをしている個体を見、そのまねごとをしてみる経験
- 実際に子育てのいろいろな要素を自分でやってみる、実地の経験
(引用元:子ども虐待はなぜ起こるのか―比較行動学および脳神経科学的考察|理化学研究所、5)
核家族化が進んだ現代社会では、2の「子育てのまねごとをしてみる」機会は少なくなり、1の「子育てされる」側から、直接3の「子育てする」側になることが多いでしょう。それでも、適切に育てられた経験があれば、2の練習段階を踏まなくても、子育てに関する知識を別の方法で得ることで、適切な子育てができるようになります。その一方で、まず1の「適切に育てられた経験」がないと、いきなり適切な子育てをすることは難しくなると言えます。
まとめ
子育てを「母性神話」に頼り、すべてを母親任せにするのは無理があります。母親が子供を大切に育てられるのは、「赤ちゃんのママ」として周囲に大切にされるからこそです。まず自分自身が愛に満ち足りていないと、子供を愛情で満たすことはできません。母親がネグレクトに追い込まない環境を作ることが求められます。
参考
平成 29 年度福祉行政報告例の概況|厚生労働省
平島奈津子先生に「解離性障害」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
日本の子どもの7人に1人が貧困という事実。いま「第三の居場所」がなぜ必要なのか?|日本財団
労働政策研究報告書No.189『子育て世帯のディストレス』|労働政策研究・研修機構(JILPT)、P122
子ども虐待はなぜ起こるのか―比較行動学および脳神経科学的考察|理化学研究所
我が子を虐待する親の「悲しい真実」~「バカな親がバカなことを…」で済ませてはいけない!|現代ビジネス
なぜ「虐待する親」「パートナーの虐待を止めない親」が生まれるのか、臨床心理士が心理状態を分析|Cyzo Woman