虐待の加害者の半数近くは実母であることが分かっています。実の子供にネグレクトしてしまう母親は一体どのような特徴をもっているのでしょうか? 2017年に13万件を超え、過去最多を記録した虐待件数。心理的特徴と社会環境から、母親が育児放棄に至る原因を探ります。
もくじ
ネグレクトをする母親の特徴
人の痛みを感じにくく、感情を抑えられない
子供のうちは、怒りや悲しみといったネガティブな感情が、ケンカや泣きわめくなどの行動に直結します。ネガティブな感情を家庭で安心して出させることにより、少しずつ感情をコントロールする方法を学んでいきます。
しかし、虐待を受けて育った親は、自分の感情をひたすら押し殺し、親の気分に寄り添うことで生き抜いてきました。感情のコントロール法を学ぶ機会がなく、感情が衝動的に暴発して制御できなくなります。または逆に、物事を感じる能力が失われ、他人に対して無関心になってしまうのです。
受け入れたくない現実から目をそらす
人間には、いい気分を保つために嫌なことを考えない「防衛機制」があります。虐待など強いトラウマを経験すると、つらい記憶を自分から切り離し、「それを体験したのでは自分ではない」と思いこむくせが身についてしまいます。
このような思考のくせを放置したまま親となった場合、気分のいいときは子供をかわいがる一方で、子供が思い通りにならないとネグレクトや虐待をし、二面的な行動を取ります。そして、自分にとって都合の悪い出来事は「なかったこと」にしてしまい、表面は取りつくろいます。
社会の規範に過剰なまでに従う
親から「お前なんか生まれなきゃよかった」「おまえのせいで台なしだ」などの言葉を浴びせられ、虐待を受けるのは自分が悪いからなのだと思っている子供がいます。大人になってからもそのトラウマは抜けず、常に誰かに拒否・批判されるのではないかと、びくびくしています。
自分に自信がなく、周囲の人に自分が物を言っていいということを知りません。そのため、いくら自分を取り巻く環境が理不尽なものでも、社会の規範に異常なまでに従おうとし、あげくの果てに力尽きてしまいます。
依存心が強い
人は「家庭」という安心できるベースがあるからこそ、社会に出て数多くの人と接して経験を積み、自立した大人へと育ちます。しかし、子供時代に「愛情飢餓状態」で育つと、自立した大人として人と接することができず、自分に少しでも好意を見せてくれた相手に全面的に頼るようになってしまいます。特定の相手にしか心を許すことができないため、その相手に拒否されることを異常に恐れ、無理をしてでも相手に合わせようとします。
子供を思い通りにしようとする
自分自身が親に服従する子供時代を過ごしていたため、子供は親の言う通りにするものという固定観念を持ちがちです。社会の規範に過剰なまでに従い、特定の相手に無理して合わせたしわ寄せは、唯一自分の支配下にある子供に向かいます。「思い通りにならないのは子供のせい」と思い、ネグレクトや虐待に至ります。