ネグレクトが子供に与える影響
体への影響
親が十分な食事を与えないことから栄養不良に陥るため、低身長・低体重になります。逆に、不適切な食生活で肥満になることもあります。乳幼児の場合、夏場には脱水症状や、おむつかぶれ・湿疹(しっしん)などになりやすい傾向があります。成長してからも、清潔にする習慣がないため、皮膚病や感染症にかかりやすくなります。不健康な食生活に加え、歯科検診も受けないため、虫歯だらけになることも。定期検診や予防接種を受けさせなかったり、病院へ連れていくことを怠り、持病の薬を飲ませないなどして、子供が重篤な症状に陥ることも考えられます。
発達への影響
幼児のころから十分に言葉をかけられていないことが言葉の遅れにつながることがあります。幼児はトライ&エラーを繰り返して、発達段階に応じて基礎的能力を身につけていきますが、親の愛情を感じられずに常に不安を感じている子供は、新しいことにチャレンジする気力がなく、発達段階に見合った必要な能力を身につけることができません。小学校入学後も、親が必要な登校サポートをせず子供が学校を休みがちになり、基礎的な学力を身につけることができないのです。
心への影響
つらい体験がふいにわき上がるフラッシュバックや夜驚(やきょう)症、記憶が欠落する解離状態、情緒不安定など、深刻な心理的影響が見られます。親から「産まなければよかった」などと心ない言葉を投げかけられ、自分は存在してはいけない子供だと考える傾向があります。自己肯定感が低く、自分を大切にしようという気持ちが生まれない傾向も。無気力で、依存する傾向があります。
行動への影響
愛着障害
慢性的な愛情飢餓の状態にあるため、優しく接してくれる大人に対して、距離感なく甘え、際限なく要求をエスカレートさせます。拒否されると、わざと相手が困ることをして、相手の出方を試します。猜疑(さいぎ)心が強く、相手にすべてを受け入れてもらえないと、全人格を否定されたかのように落胆します。そのため安定した人間関係を築くことができないのです。
暴力的な行動
家庭では親の感情を押し付けられ、自分の感情を受け入れてもらえません。それが災いし、常に怒りや悲しみなどの鬱屈した感情がくすぶっています。子供はネガティブな感情を親に受け止めてもらうことで、少しずつ感情をコントロールする方法を身につけていきます。放置子は感情コントロールを学ぶ機会がなく、怒りを制御できず暴力に訴えてしまいます。また、親が暴力的な場合は、怒りの表現方法として暴力しか知らないこともあります。
集団行動が苦手
集団の中では、自分のことだけでなく相手のことや全体をおもんばかって行動する必要があります。しかし、自分の感情を十分受け入れられてこなかった放置子は、他人の感情を推しはかることができません。したがって、全体のために努力や我慢を要する規範的な行動が苦手になってしまうのです。
衝動的な行動
常に自分の気持ちを抑え、親の顔色をうかがって行動しているため、自分の感情や意思をころころと変えます。そのうち、自分の本心が何なのか分からなくなり、大人になってから人格障害につながることもあります。
多動性・衝動性が高い
感情や衝動性をコントロールできないため、幼児期には多動的な行動を示し、発達障害と間違われることがあります。
自傷や自殺企図
自己肯定感の低さや衝動性を抑えられないことが影響し、自傷や自殺行為に及ぶこともあります。
次世代への虐待行為の連鎖
子供を虐待する親に目を向けてみると、自身も虐待されて育った場合が多くあります。親の養育態度は世代を越えて伝達される傾向があります。