なぜ既卒受験生を浪人と呼ぶの?歴史的な意味や英語での言い方は? - cocoiro career (ココイロ・キャリア)

「どうしても志望校に入りたいから浪人する」「浪人は辛そうだから第2志望でいいかな」など、受験の場面では一般的に使われている「浪人」という言葉。高校を卒業した後、大学受験に再度挑戦する人のことを「浪人」と呼ぶことが多いですが、どうしてこのような名称になったかご存じでしょうか。

どうして卒業後に再受験する人を「浪人」と呼ぶの?

既卒受験生が浪人と呼ばれるようになった経緯を解説します。浪人という古くからある言葉が受験で使われるようになったのは、ここ100年ほどのことのようです。

受験生の浪人は大正時代の「白線浪人」が起源

浪人の起源は1920年代にさかのぼります。当時は大学自体の数が少なかったため、大学に進学できる人も限られていました。大学に進学できる資格を得られたのは旧制高等学校卒業者でしたが、旧制高校の数も全国で12校しかなかったそうです。

旧制高校卒業者(大学入学希望者)と大学の定員が釣り合っていたため、1910年代の後半までは、旧制高校卒業者であれば無試験で大学に入学できました。

しかし、1925年には、旧制高校の数が25校と倍以上に増加しています。この間大学の定員数はほとんど変わらなかったため、旧制高校を卒業しても大学に入学できない人が急増しました。彼らのことを「白線浪人(はくせんろうにん)」と呼んだのが、受験界における「浪人」という言葉のもとのようです。

なぜ浪人に「白線」という言葉がついたかというと、当時の旧制高校の制服が関係しています。旧制高校には制帽があり、白いテープが巻きついていました。ただの浪人ではなく、旧制高校を卒業して大学に入れなかった浪人という意味で「白線浪人」という言葉が生まれたと考えられています。

白線浪人が増加してくると、その存在が議論されるようになります。といっても、白線浪人生に落ち度があったというわけではなく、大学進学に際して制度上の問題があるのではないかというところが論点だったようです。

 昭和期に入って白線浪人が急増してくると、その対策が種々議論されるようになった。
白線浪人の存在が文京当局者をはじめとする関係者の間で先鋭な問題となったのは、主要には、高等学校高等科の法令上の位置づけがどうあろうと、実質的には生徒をエリート候補として扱い、大学進学のための予備教育しかしていなかったから、その卒業者が大学に進学し得ないのは不合理であるだけでなく、社会的にも不経済であるということであった。

(引用元:大学入試の歴史第6回 : 白線浪人問題の結末 | 名古屋大学学術機関リポジトリ 76ページ

白線浪人という言葉が出現したタイミングで、すでに卒業したらすぐに進学すべきであって、進学できないのは問題であるというように考えられていたこと分わかります。この発想は、現代でも現役合格という考え方に残っているといえるでしょう。

参考
大学入試の歴史第5回 : 白線浪人の発生 | 名古屋大学学術機関リポジトリ

学制が変わっても浪人という言葉が残った

その後第2次世界大戦の敗戦とアメリカによる支配を経て、日本の学制は大幅に変わりました。1920年代と現代を比べると、高校・大学の数は非常に増えていますが、浪人という言葉だけは残り、現代でも使われ続けています。