教育費貧乏にならないために
教育費貧乏にならないために、子供の教育費について、親が本来果たすべきことは何なのか、再度考えてみましょう。
教育費不足で影響を受けるのは?
親がどの程度教育費を負担できるのかという見通しと、子供の進路に対する希望の関係を研究した論文に、小林雅之(2007年)『親の子どもの進路に対する希望を規定する要因』(東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series)があります。親の進路希望に影響を与える要因を解析したところ、次のようなことが分かりました。
・親の第一希望進路教育費負担可能性は親の第一希望進路に直接関連していない。
・予想家計負担度は、親の第一希望負担度や親の第一希望進路に直接関連している。
・長子は負担可能性に関連していないが、第一希望に関連している。
・兄弟数は負担可能性と第一希望の両者に影響している。
(引用元:小林雅之(2007年)『親の子どもの進路に対する希望を規定する要因』東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series)
また、同じく小林雅之(2007年)『高校生の進路選択の要因分析』(東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series)は、低所得層の家庭では、学費のかかる私立大学進学において女子の進学に影響が出ることを指摘しています。
参考
小林雅之(2007年)『高校生の進路選択の要因分析』東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series
「先行投資で資金不足」では本末転倒
これらの研究から、教育費が不足した状況では、費用のかかる大学が第一希望だった場合、子供が進路変更せざるを得ない可能性があること、特にきょうだいの数が多い家庭や女の子に影響が出がちであること、が分かります。
子供の将来可能性を増やそうと教育投資して大学入学時に資金不足が生じ、結果的に子供が進路変更を余儀なくされるとしたら、それは本末転倒なことではないでしょうか。
子供にやりたいことができた時に諦めなくてもいい支えを
子供が幼い頃に早期教育やたくさんの習い事をさせ、将来の可能性や選択肢を増やしたとしても、大学に進学し将来の道へ進む過程で、やりたいことを絞り、フォーカスしていく筈です。子供が本当にやりたいことが見えてきた時に、資金面で諦めなくてもいい支えを作ってあげること。それが教育費に関して親の果たせる本当の役目ではないでしょうか。
まとめ
教育費貧乏は、子供が巣立った後の親の貧困の問題として語られがちです。しかし一歩間違えば、子供に最も教育費がかかるフェーズになって、進路を諦めさせる結果も生みます。将来の教育費を予測しておくこと、何が必要なのかを見極めて、大きな支出が生じるタイミングに準備しておくこと。そのことが教育費貧乏を防ぎ、親も子供も幸せな将来を迎えることに繋がるのではないでしょうか。
参考
文部科学省『平成28年度子供の学習費調査』
子どもの教育資金に関する調査2019|ソニー生命保険株式会社
内閣府『平成29年度子供・若者の現状と意識に関する調査』
小林雅之(2007年)『親の子どもの進路に対する希望を規定する要因』東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series
小林雅之(2007年)『高校生の進路選択の要因分析』東京大学大学経営・政策研究センターCrump Working Paper Series
年収1000万家庭が夢見る「私立小進学」に教育費貧乏の落とし穴|ダイヤモンドオンライン
“教育費破産”って何? 教育費貧乏な家庭の末路|日経DUAL