なぜ大学入学前に教育費を消耗してしまうのか
なぜ大学入学の前に大きな教育費を費やしてしまうのでしょう。その理由を考える手掛かりが、こちらの調査から掴めそうです。
親の期待と子供への先行投資
ソニー生命保険株式会社が行った『子どもの教育資金に関する調査2019』から、教育費に関する親の意識を探ってみましょう。
(参照元:子どもの教育資金に関する調査2019|ソニー生命保険株式会社)
親の6割半が「子どもの学力や学歴は教育費次第」、7割弱が「早期の知育や英才教育は子どもの将来のために重要だ」と答えています。また、スポーツや芸術の習い事にも力を入れたい親が過半数いることが分かります。
(参照元:子どもの教育資金に関する調査2019|ソニー生命保険株式会社)
また、親の8割半が「多少費用がかさんでも大学等へ進学させたい」、6割が「多少費用がかさんでも海外留学や海外研修を経験させたい」と、高等教育やグローバル教育への意欲が高いことも分かりました。
総じて、親の教育への意識は「早期教育で将来の可能性を確保したい」「そのうえで、将来は高等教育や海外での経験に花開かせたい」というものだと言えるでしょう。
子供は結局安定志向に落ち着く?
子供の方の意識はどうなのでしょうか。内閣府による『平成29年度子供・若者の現状と意識に関する調査』という調査があります。
これは、16歳から29歳までの男女10,000人をサンプルにとって、仕事や結婚、将来像などについて調査したものなのですが、その中に「40歳くらいになった時の自分の将来像」を尋ねた項目があります。その結果は、次のようなものでした。
1位:親を大切にしている(そう思う:75.8%)
2位:幸せになっている(そう思う:73.0%)
3位:子供を育てている(そう思う:67.8%)
一方、「そう思わない」率が高いのは、次のような将来像です。
1位:有名になっている(そう思わない:83.6%)
2位:世界で活躍している(そう思わない:81.0%)
3位:海外での勤務経験を積んでいる(そう思わない:80.6%)
(引用元:内閣府『平成29年度子供・若者の現状と意識に関する調査』)
教育費は「親が子供に見る夢」?
一見、親のグローバル志向に反するような「親元で子供を育てながら幸せになっている」自分の将来像。驚きの結果に思えますが、ソニー生命保険株式会社『子どもの教育資金に関する調査2019』に戻り「将来子どもに就いて欲しい職業」への回答を見ると、納得できるかもしれません。親も本音は安定志向だからです。
(参照元:子どもの教育資金に関する調査2019|ソニー生命保険株式会社)
もちろん、『子どもの教育資金に関する調査2019』と『平成29年度子供・若者の現状と意識に関する調査』は、まったく別の調査です。ですが、親が子供にかける理想と期待、そして落ち着く先としての本音の安定志向、そのギャップを省みると、「自分が何を求めて子供に教育費をかけているのか」を、もう一度考え直すことができるのではないでしょうか。