精霊馬の違い
地域による精霊馬の違い
精霊馬は、地域によって異なる扱い方をしています。例えば、北海道や中部地方においては、迎え盆の13日には何もせず、送り盆の16日に精霊馬を作って、お供え物とともに川や海へ流しました。関東地方では、13日の迎え盆に精霊馬を作って、送り盆に海や川へ流していました。ただ、現代では海や川へ精霊馬を流せないため、塩で清めたり、土に埋めたりしているようです。精霊馬の持つ意味も、地域によって異なっています。通常では、迎え盆できゅうり(馬)、送り盆でナス(牛)という考え方ですが、逆にご先祖様をしっかりとお迎えするために迎え盆でナス(牛)、送り盆で浄土までスムーズに戻れるようきゅうり(馬)を使うとも考えられています。
宗派による精霊馬の違い
また、宗派によっても精霊馬の扱いが異なります。浄土真宗では、精霊馬を一切用いません。精霊馬というのは、ご先祖様の霊が浄土にあって、地上へ移動するための手段と考えられています。しかし、そもそも霊が浄土ですごしているという概念を持っていない宗派であれば、精霊馬を用意する必要はありません。ちなみに浄土真宗の考え方では、お盆になると地獄の釜が開くため、ご先祖様が戻ってくることはありません。つまり浄土真宗では、お盆をご先祖様のための日とするのではなく、自分自身を精進させるための日としているのです。
精霊馬の作り方
精霊馬を作る際には、まずナスときゅうり、割りばし(麻がらもしくは爪楊枝)を用意します。ナスやきゅうりは、まっすぐの物より、すこし曲がった物を選ぶといいでしょう。野菜のサイズに合わせて、馬や牛の形に見えるように、割りばしの長さを調整して4本ずつに切ります。馬の足はほっそり長く、牛の足は短く太くなるイメージです。4本で四角形を作り、やや開き気味でバランスよく割りばしを刺します。実際に自立できるかどうか、試しながら角度を決めていきましょう。ちなみに、ナスのへたを牛の頭部に見立てることが多いようです。迎え盆の際には盆棚に内向きに飾り、送り盆の際には外向きに飾るのが一般的です。13日から16日までの4日間、精霊馬を飾ります。
飾った後の処分方法
お盆をすぎれば、精霊馬を処分します。精霊馬で使った野菜が傷んでいなかったとしても、基本的に食べるのは良くありません。ご先祖様が乗り物として使った物だからです。基本的な処分方法は、川や海に流す、土に埋める、火で燃やすなど。ただ、環境保全の観点から川や海に流すのを禁止している地域もあるため、庭に埋めるか、お盆飾りと一緒に燃やすことが多いようです。燃やす場合には自宅で行うのではなく、お寺でお焚き上げとして処分してもらうこともできます。精霊馬を作る習慣のある地域では、お寺でまとめて処分してくれる場合もありますので、お寺へ問い合わせてみるといいでしょう。
お盆の意味
お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という名称を持っています。お正月と同等に重要な行事として考えられてきました。ご先祖様を浄土から地上に迎え入れ、供養、感謝して、また浄土へと見送る行事です。13日の夕方にご先祖様を迎え入れるために「迎え火」をたき、16日の夜に「送り火」をたきます。つまり、13日の夕方から16日の夜までご先祖様が浄土から地上に訪れる期間をお盆と呼んでいます。ちなみに、故人が亡くなって四十九日をすぎてから初めて迎えるお盆を「新盆」と呼びます。お盆を迎えるための準備としては、仏壇やお墓を掃除します。仏壇を掃除したら、先祖の霊を迎え、おもてなしをするために仏壇の前に祭壇を用意し、供物を並べます。その飾りの1つが精霊馬です。