子供の記憶力を最も効率的に伸ばすためには、記憶の種類を理解しておく必要があります。学習面に不安のある子供に対してつい、なぜ簡単なことも覚えられないのかと悲観的に見てしまいがちですが、記憶する方法そのものが間違っていることも珍しくありません。
この記事では、長期的に記憶する方法と記憶力を伸ばす方法を分かりやすく解説します。記憶にもいくつかの種類があることを知るだけで、子供の記憶力を伸ばすためのアプローチにも違いが生まれるはずです。
もくじ
2種類ある長期記憶
子供の記憶力を伸ばすための第一歩として、学習に関する長期記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」の2種類があることを理解することをおすすめします。この2種類の記憶の違いを知り、うまく使い分けることで子供の記憶力を効果的に伸ばしてあげることができるでしょう。
意味記憶とは?
意味記憶とは言葉の意味や数式といった言語で処理された記憶を指します。暗記することが苦手だったという親御さんであれば、歴史に関する重要用語やその書き方を記憶するのに苦労した経験があるという方も多いのではないでしょうか?
そのほか、漢字の読み書きや方程式なども意味記憶に分類されます。言語によって処理されるため、学校で学ぶなどの方法で身につけることが多く、繰り返し目にする、書く、といった行動によって覚えようとしなければ覚えられないのが大きな特徴です。
エピソード記憶とは?
エピソード記憶は自分自身の経験によって定着する記憶を指します。そのため、言語として処理されるのではなく、いつ起こったのか、どこで起こったのかといった映像として処理されるという特徴があります。情報量が多く、長期的な記憶として残りやすいとされているのがエピソード記憶です。
意味記憶とエピソード記憶の違い
意味記憶とエピソード記憶は客観的な記憶として保存されるか、主観的な記憶として保存されるか、という点に大きな違いがあります。意味記憶はあくまでも自分が経験した記憶ではないため、情報量が少なく比較的短期間で忘れ去られる傾向にあります。
また、意味記憶とエピソード記憶には、記憶として定着しやすい年齢にも大きな違いがあります。幼稚園から小学校低学年くらいの物心がつく前くらいの年齢では、自分自身が経験しているという自覚がなく、与えられた情報をそのまま保存することができるため漢字の読み書きやかけ算九九などの膨大な情報量でも長期記憶として保存することができます。
反対に小学校高学年以降は、自分が経験しているという自覚が芽生えるためエピソード記憶が優先して記憶されていきます。そのため、主観的に経験していないことは記憶が定着しにくく、よほど繰り返して学習しなければ意味記憶が長期的な記憶として保存されず、学校の成績に差が生まれやすくなります。
記憶したことを忘れる理由
記憶したことを忘れるのは、人間が意味記憶とエピソード記憶のどちらかを優先しなければ、脳のキャパシティを使い果たしてしまうことが理由です。例えば、脳のキャパシティが記憶100分だとすると、保存しておかなければならない意味記憶が100個、エピソード記憶が50個だった場合は50個の記憶がキャパシティを超過していることになり、強制的に削除されます。
また、実は人間は思い出せるすべてのことを頭の中に保存しているわけではありません。連想して紐付けるという作業で脳のキャパシティを大きくしているため、情報量が多いエピソード記憶が優先される傾向にあります。
大人になってからも記憶に焼き付いているような思い出は、そのすべてが頭の中に保存されているわけではなく、誰との体験か、どんな感情が芽生えたか、といった情報がつなぎ合わされる形で記憶されているのです。