快適な服装は気温だけでなく「衣服内気候」がポイント
衣替えを区切りに、それぞれの季節の気温に適する衣類に変わっていることが分かりましたが、人間の感じる快適さを左右するのは、気温だけではありません。「衣服内気候」と言われるものが大きく影響します。
快適さを左右する「衣服内気候」とは?
「衣服内気候」とは衣服着用時の快適さを決定する3要素のことで、衣服と皮膚の間の「温度」「湿度」「気流」の総称です。1980年代の初めに、繊維メーカーの東洋紡が提唱しました。学術用語としては「被服内気候」という言葉が使われます。
人間が裸でいる時に快適な気温は29~31度。衣服内気候においては、快適な温度域は32度プラスマイナス1度と言われています。
参考
衣服内気候|TOYOBO
ニッセンケンコラム『快適性というけど快適性の定義は…』
夏と冬、快適な気温と服装の関係
被服内気候について詳しく調べた論文をご紹介しましょう。
『快適時の平均被服内気候』(前田亜紀子ら、日本生気象学会雑誌Vol.40,No.1、2003年)では、体の深部体温や皮膚温、被服内気候、室内気候がお互いにどのような関係にあるのか、また室内気候が変化したり運動で体温が上昇したりすることによって被服内気候はどう変化するのか、冬服の場合と夏服の場合の2つの条件下で実験しました。
その結果、被服内気候は皮膚温より外部環境の影響を受けやすく、人間が体温調節する際、真っ先に敏感に感じ取る変化であること、快適な被服内の温度は、夏服と冬服など体を覆う範囲の広さの違いによっても変化することが分かりました。
この実験で分かった快適な被服内の温度は、夏服の場合は33度プラスマイナス0.7度、冬服の場合は29.7度プラスマイナス1.4度です。衣替えは、気温の変化に対応して身につける衣服を変えることで、快適な被服内気候を調整するものだと言うことができるでしょう。
ウェザーニュースでは、気温別のおすすめの服装を以下のように提案しています。
- 25度以上(日向では暑く、少し歩くと汗ばむこともある気温):半袖シャツ
- 25度未満(風が涼しく感じられる気温):長袖シャツ
- 20度未満(長袖シャツの上に羽織るものが活躍する気温):カーディガン
- 16度未満(日向では暖かさを感じられる程度の気温):セーター
- 12度未満(風が吹くと体が冷たく感じる気温):トレンチコート
- 8度未満(冬を感じる冷たい気温):冬物コート
- 5度未満(最大級の防寒対策がほしくなる気温):ダウンコート
参考
『快適時の平均被服内気候』前田亜紀子ら、日本生気象学会雑誌Vol.40,No.1、2003年
夏物しまってOK 衣替え時期をエリア別に解説|weathernews