なぜアンパンマンは子供に人気なのか
アンパンマンは小児科の先生や保育園の先生たちにも重宝されるほど、乳幼児に絶大な人気があります。しかし5歳ごろになると急に興味を失ってしまうという不思議な法則があります。なぜこれほどまでに乳幼児に人気が高いのでしょうか。それは0~3歳ごろの発達に関係がありました。
アンパンマン人気の科学的根拠
アンパンマンがとりわけ乳幼児に人気が高いのは、単純にストーリーが分かりやすくおもしろいからというだけではありません。ストーリーがまだ理解できない0歳児も夢中になってアンパンマンを見ます。どうやらそれは、アンパンマンというキャラクターそのものに魅力があるようだと保育関係者はいいます。アンパンマン人気と乳幼児の発達の科学的根拠を解説します。
乳幼児は「人の顔」を認識する
産まれたばかりの赤ちゃんの視覚は0.01ほどで、20~30cmほど先にあるものがぼんやりと認識できる程度です。しかし生後5~6ヶ月にもなると特に「顔」を認識する能力が高まります。この事実は1960年代の発達心理学者ロバート・L・ファンツの実験で判明しました。乳児が好む図形をいくつか用意し、何をより好むかを調べたのです。結果、人の顔をした図形を好むことが分かりました。
アンパンマンは作中、必ず正面を向いて登場するので、アンパンマンの「顔」をより注視してしまうのです。また笑っている表情が多いという点でも子供が安心して見ることができます。
シンプルな色・形が好ましい
「顔」を好む乳幼児ですが、特にハッキリとした色や形を強く認識することができます。0歳児は強いコントラストの色を認識することができ、反面グラデーションや淡い色彩を認識することは難しいです。成長して1歳になるころには、シンプルな丸や三角といった形を理解することができるようになり、2歳になるとシンプルな図形を描くことができるようになります。
アンパンマンは赤、黄色、黒というハッキリとした色で描かれており、顔は単純な丸の形でできています。つまり乳幼児にとって認識しやすい・真似して描きやすいのです。そのため子供の興味を強く引くのです。
発音がしやすい
NTT関連会社が運営していたgooベビー(現在はサービスを終了)の会員アンケートで、子供がいつ、どんな単語を話したか調査した結果によると、キャラクター部門ではアンパンマンが圧倒的1位でした。
参考
実は文化や歴史が全く違う世界各国で、乳幼児が発音しやすい言葉というものには共通点があるのです。それは「m」と「n」の音、「アイウエオ」という母音です。子供が最初に発した言葉は「マンマ」だったという親御さんも多いのですが、それは「m」と「n」の音でできているからなのです。そしてアンパンマンという語も「m」と「n」の音、「ア」の母音の組み合わせでできており、子供にとって非常に発音しやすい言葉といえます。
参考
わが子が初めて話した言葉は何?一番多かったのは「●●●」に|マイナビニュース
最初の一語-なぜ母親は「ママ」、父親は「パパ」なのか-|Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
まとめ
乳幼児期に突然やってくるアンパンマン・ブーム。イラストやテレビの「アンパンマン」に夢中になるのは、色や形、言葉の発達が著しく高まる時期です。アンパンマンの世界を作る声優たちもアンパンマンのキャラクターを愛し、大切に演じています。ぜひ子供の成長を喜び、一緒にブームを楽しんではいかがでしょうか。
参考
乳幼児のキャラクター志向に関する研究|西川ひろ子|安田女子大学
赤ちゃんは顔を読む|山口真美|中央大学文学部