高専柔道のルール
ここまでで説明してきたように、高専柔道は寝技が主な戦略となる柔道です。オリンピック競技などで見る一般的な柔道とは違うようですが、どのようなルールで実施されているのでしょうか。
15人の団体戦
高専柔道に個人戦はなく、団体戦で実施されます。1チーム20人で編成され、実際に試合をする選手は各試合ごとにチーム内から15人選び、残りの5人は補欠となります。通常の柔道の団体戦では1チーム選手5人で編成されることが一般的であるため、高専柔道がどれだけ多い人数で実施しているかが分かることでしょう。
選手が試合をする出場の順番についても、試合ごとに決定していいことになっています。試合は「勝ち抜き試合」のため、試合に勝った選手はそのまま次の対戦相手と戦い続けることになります。先に15人倒したチームが勝ちです。
寝技への引き込みが認められている
高専柔道の特徴として、通常の柔道では認められていない寝技への「引き込み」が認められています。
「引き込み」はこれを認める。なお、「引き込み」とは、それを施された相手が立てない状態、あるいは相当な努力をしてつり上げたり振り払ったりして立ち上がらなければ逃げられない状態に持ち込む行為を言う。
(引用元:七大学柔道審判規定|第67回全国七大学柔道優勝大会)
通常の柔道で寝技への引き込みを行うと、相手をよほど崩さない限り「引き込み注意(反則)」を受けます。基本的には認められていない行為なのですが、寝技中心の高専柔道だからこそのルールと言えるでしょう。
試合時間が長い
通常の柔道では1回の試合時間は5分間というのが、現行のルールで最もポピュラーなものですが、高専柔道の場合は6分間です。また、大将と副将の試合時間のみ8分間とさらに長く設定されています。
試合時間は6分間とする。但し、大将ならびに副将の試合時間は8分間とする。代表戦の試合時間は6分間とする。なお、試合が中断された時間は上記の試合時間から除外される。
(引用元:七大学柔道審判規定|第67回全国七大学柔道優勝大会)
ただ、これでも現代の高専柔道は試合時間がとても短くなったのです。1921年に実施された第8回大会に関する記述では、試合が大将同士の決戦に至った場合の試合時間はなんと無制限で、「勝負が決まるまで試合をする」と規定されていました。しかし当時の準決勝で大将決戦が延長に延長をを繰り返し、試合時間が1時間40分を越えても勝負が決することがなく、最終的に「引き分け」となったこともあったそうです。
(参照元:高専柔道の特長と意義について|富山県立大学紀要第28巻)