授業に時間がかかる
文教大学教育学部の教育実習生が実施したアクティブ・ラーニングについて、上記でご紹介しました。沖縄県の文化を知り、まとめるという内容に1時間の授業時間を費やすのは、効率としてはあまり良くないように感じられるかもしれません。
アクティブ・ラーニングは、その性質から教科を横断して学びが進む可能性があります。中央教育審議会の議論でも、各学校が実態に合わせて柔軟に対応していく「カリキュラム・マネジメント」を行うことが期待されています。
そのための根拠となるデータは「国、教育委員会等及び学校それぞれにおいて、学習指導要領等に基づく教育課程の実施状況を定期的に把握していくことが求められる」とされており、国としては実施しながら改善していきましょう、という方針のようです(教育課程企画特別部会 論点整理教育課程企画特別部会における論点整理について(報告) | 文部科学省 23ページ)。
ある程度のノウハウが学校の現場や文部科学省の中にたまっていくまでは、やや効率の良くない部分も残りつつ、アクティブ・ラーニングをどう実践すると良いのかが模索されることになりそうです。
日本の教育環境に向いていない
欧米の学校と比較して、日本の学級は人数が多すぎるため、そもそもアクティブ・ラーニングを実施するのに向いていないという指摘もあります。
欧米で見てきた学校と日本の学校の違いは何かというと,欧米は1クラス15人から25人でやっておりますが,日本は御承知おきのとおり,うちも610人生徒がおりますけれども,40人学級です。その中で1人でも2人でも大変な子がいますと,結局,そこに大変なパワーと時間が費やされてしまって,とにかく授業は大変です。個々の対応ということで言うと,そんな時間も実は先生方はないというのが現状です。
平川理恵委員(横浜市立中川西中学校民間人校長)
(引用元:小学校社会科におけるアクティブ・ラーニングの問題点 -中央教育審議会での議論から- | 早稲田大学リポジトリ 29ページ)
また、現状よりも教員の数を増やさないと、アクティブ・ラーニングを実施しても子供たちのサポートが不十分なまま終わるのではないかという指摘もありました。
受験へ活かすことが難しい
評価の問題とも関係がありますが、日本の受験制度のうち、ペーパーテストが占める割合はかなり大きいと言えます。子供がアクティブ・ラーニングでえた成果が受験で有利に働かない場合、学校の授業よりも受験対策の勉強を重視する家庭が出てきてしまうことも考えられます。
大学の推薦入試などではグループディスカッションや小論文なども取り入れられていますが、合格者全体に対する割合としてはまだ大きくありません。入試制度がどう変化していくかによって、学校でのアクティブ・ラーニングの実践にも影響が出てきそうです。
まとめ
文部科学省は幼児教育から大学まで、さまざまな教育機関でアクティブ・ラーニングを実施することを推進しています。デメリットや問題点はありつつも、自発性や問題解決能力、チームワークはこれからの時代あって困らない能力です。子供の可能性をより伸ばせる教育方法が発展していくことを期待します。
参考
新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申) | 文部科学省
大人数授業におけるアクティブ・ラーニングの実践開発とその教育効果に関する検討(その2) ―1 年目の研究結果をふまえた2 年目の実践とその成果の検証― | 名古屋学院大学学術リポジトリ
アクティブラーニングのデメリットとその課題とは? | キャリア教育ラボ
アクティブラーニングとは 基礎・基本を事例含めご紹介! | ウェブで授業研究 Find!アクティブラーナー