幼児教育無償化の懸念
保育士の負担が増える
保護者にとっては嬉しい無償化ですが、保育の現場では、ただでさえ人手不足で忙しいのに、保育士の負担がさらに増えるのではないかと危惧されています。
保育士の負担を軽減するには、保育士の増員が必要です。そこで、1番効果があると思われるのが潜在保育士の利用です。潜在保育士とは、保育士資格を持っているにも関わらず、保育現場で働いていない人のことで、約75万人いると推定されています。保育従事者が約45万人なので、潜在保育士が保育の現場に復帰できれば大きな力となるでしょう。
参考
保育所数と待機児童数、保育士数の推移|Agent Gate Glow Nursery Project
保育士の中には、出産を機に保育の仕事を辞める人が大勢います。それらの潜在保育士に現場へ復帰してもらうには、給与などの待遇改善だけでなく、小さな子がいても働きやすい柔軟な働き方を認めていくことが必要でしょう。
保育施設の質が低下する
幼児教育無償化にともない、保育所施設がさらに増設される見込みです。保育所が多数増設された場合、経験豊富なベテラン保育士は数少ないため、経験の浅い保育士が新しい施設に集まる可能性があります。経験の浅い保育士ばかりで運営される保育所の場合、保育の現場にありがちな予想外の出来事に対応しかねる可能性を指摘されています。保育士の数の確保だけでなく、質の確保も求められています。
待機児童が増える
大阪府守口市では、国に先駆け2017年より幼児教育無償化を実施しています。その結果、無償化前の1年で33人減った0~5歳の人口が、無償化後の1年で128人増えました。親世代となる20代は39人減から363人増となりました。市の少子化対策が功を奏したと言えますが、同時に待機児童数は、2016年4月の17人より2018年4月は48人に増えました。
幼児教育が無償化されると、保育需要が掘り起こされ、より多くの保護者が子供をより早く保育所に入れる動きが出ると考えられています。無償化の対象となるのは多くの場合3歳からですが、3歳になってから預け入れようと思っても、2歳から持ち上がる子供が多くて入れないからです。
政府は、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を整備するとしています。保育施設の拡充は待ったなしです。
まとめ
幼児教育の無償化は、家計の大きな助けとなることは間違いありません。しかし、保育の現場は無償化前の現在でもすでに大きな問題を抱えています。幼児教育無償化を政府の言う「人づくり革命」に結びつけるためには、まず保育士の処遇改善と待機児童の解消を行い、保育の質と量を確保しなくてはならないでしょう。
参考リンク
幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会報告書|内閣官房
未来を担う子供たちに、保育・教育の無償化を実現します。|自民党
保育無償化、入園待ち長くなる? (2019ニュース羅針盤) |日本経済新聞2019年1月1日朝刊
『<保存版>幼児教育・保育の無償化』を公開 2018年10月10日 調査レポート|WELKS
「幼児教育無償化」いつから?2019年10月開始予定!制度の所得制限や対象の年齢について【ママの口コミも】|HugKum【小学館公式】
私立幼稚園の幼児教育無償化 いつから?対象者・内容|新児童手当まとめサイト
幼児教育無償化、いつから?対象は…自治体独自の取組みも|ReseMom
保育園の無償化はいつから?幼児教育・保育の無償化の対象年齢は?|パパ目線の育児ブログ はじめての妊活・出産・子育てのお話