幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題 - cocoiro(ココイロ) - Page 2

幼児教育無償化への期待

総務省統計局が1月21日に発表した最新の人口統計によると、2019年1月1日現在の人口は1億2,632万人で、10年連続の減少となりました。出生児数は2017年に初めて100万人を割り、夫婦1組あたりの平均出生児数は相変わらず2.0以下で、人口減少に歯止めがかかりません。

参考
人口推計-2019年(平成31年)1月報-|総務省統計局

昨年、安部総理大臣は少子高齢化を「我が国最大のピンチ」と呼びましたが、そもそもなぜ日本人は子供を産みたがらないのでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った結婚と出産に関する全国調査によると、夫婦が「理想の子ども数を持たない理由」で最も多かった回答は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56.3%)でした。

幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題

(参照元:第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)第Ⅲ部 独身者・夫婦調査共通項目の結果概要|国立社会保障・人口問題研究所,P74)

一方、2014年に内閣府が行った「結婚・家族形成に関する意識調査」で、「どのようなことがあれば、あなたは(もっと)子供が欲しいと思うと思いますか」という質問をしたところ、「将来の教育に対する補助」が68.6%、「幼稚園・保育所などの費用の補助」が59.4%で、教育費に関する補助がトップを占めました。

幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題

(参照元:平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)<子供・育児について(2)>|内閣府(P91より筆者作成)

つまり、夫婦が子供を産まない最大の要因は経済的な要因であり、経済的な補助があれば、もっと子供を持つ人が増えるはずです。これが、幼児教育無償化を「少子化対策」と呼ぶ理由です。

収入に関係なく幼児教育が受けられる

日本の義務教育は小学生から始まりますが、実は就学前の教育がその後の人生に大きな影響を与えることが、国内外の研究で発表されています。

たとえば、アメリカ NICHD(National Institute of Child Health and Human Development)が1991年生まれの子供を15歳まで追跡調査した結果によると、良質な幼児教育を受けた子供はそうでない子供に比べ、15歳の時点で学業成績や社会性により優れている傾向がありました。

また、1960年代にアメリカで行われた社会実験「ペリー就学前計画」によると、小学校就学前に幼児教育を受けた人は受けていない人に比べ、40歳時点での収入と持ち家率が高く、生活保護受給率が低いという結果が報告されています。

参考
教育の効果について~社会経済的効果を中心に~|国立教育政策研究所

これらの結果から推測されることは、人生における学業成績や経済的な成功などに役立つのは、小学校入学以降に得た学問的知識よりも、就学前に培った社会性や人生に対する積極的態度など人間性の要因の方が大きいと考えられます。

親の経済的理由で子供に幼児教育を受けさせられないと、社会性や人間性が作られる就学前の時期に、それらを発達させるのに十分な刺激が得られません。幼児教育の機会を逃したことにより、その子供の将来が左右されてしまうのは、個人にとっても社会にとっても大きな損失です。

幼児教育が無償となれば、親の経済力に関わらず、誰でも就学前に教育を受けることができるようになります。