幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題

「幼児教育無償化とよく聞くけど、いったいいつから始まるの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。当初の計画では2020年4月から始まる予定でしたが、その予定は半年前倒しされ、2019年10月から導入されることになりました。どうして開始時期が変わったのでしょうか? 今後の課題と合わせて解説します。

幼児教育無償化はいつから始まるか

幼児教育無償化は自民党の選挙公約

2017年の衆議院選挙で、自民党は幼児教育の無償化を公約として打ち出しました。「人生100年時代」を迎え、国民が最も不安を感じているのが子育てと介護です。自民党はその2分野に集中投資し、「人づくり革命」を行うことを公約としました。

自民党は、この公約を掲げた選挙で圧勝し、幼児教育の無償化が実現する運びとなりました。

2019年10月に前倒し実施

当初、幼児教育無償化は2020年4月より実施する計画でしたが、その後政府の意向により、2019年10月からの開始に変更されました。なぜ、計画が半年も前倒しされたのでしょう。それは、2019年10月より実施される消費税10%への引き上げに関係があります。

安倍内閣は、2014年に消費税を5%から8%へ引き上げました。前回のこの増税時に、一時的に物価が上昇し、買い控えが起こり消費が低迷しました。今回の増税では同じ轍を踏まぬよう、政府はさまざまな痛み緩和策を検討しています。その中で、幼児教育無償化は少子化対策と景気対策の二兎を追う政策として、消費増税と同時に導入されることになりました。

幼児教育無償化の内容

今秋から実施される幼児教育無償化の内容は以下のとおりです。

3~5歳の子供

3~5歳児の幼稚園・保育所・認定こども園の利用料は、世帯の収入に関わらずすべて無償となります。ただし、幼稚園の無償範囲には上限があり、最大月25,700円までとされています。

認可外保育施設の利用料については、保育の必要ありと認定された子供に限り、最大月額37,000円まで無償とされます。認可外保育施設とは、一般的な認可外保育施設のほかに、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーホテル、ベビーシッター、認可外の事業所内保育施設、子ども・子育て支援法に基づく一時預かり事業、病児保育事業及びファミリー・サポート・センター事業が含まれます。無償化対象として認められるのは、国が定める認可外保育施設の指導監督基準を満たしている施設のみです。

0~2歳の子供

0~2歳児の幼稚園・保育所・認定こども園の利用料は、住民税非課税世帯のみ無償化の対象となります。

認可外保育施設の利用料も同じく住民税非課税世帯のみが対象で、最大月額42,000円まで無償となります。

預かり保育を利用する子供

3~5歳の子供で保育認定がある場合、幼稚園の預かり保育の利用料も、最大月額11,300円まで無償になります。

幼児教育無償化への期待

総務省統計局が1月21日に発表した最新の人口統計によると、2019年1月1日現在の人口は1億2,632万人で、10年連続の減少となりました。出生児数は2017年に初めて100万人を割り、夫婦1組あたりの平均出生児数は相変わらず2.0以下で、人口減少に歯止めがかかりません。

参考
人口推計-2019年(平成31年)1月報-|総務省統計局

昨年、安部総理大臣は少子高齢化を「我が国最大のピンチ」と呼びましたが、そもそもなぜ日本人は子供を産みたがらないのでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った結婚と出産に関する全国調査によると、夫婦が「理想の子ども数を持たない理由」で最も多かった回答は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56.3%)でした。

幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題

(参照元:第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)第Ⅲ部 独身者・夫婦調査共通項目の結果概要|国立社会保障・人口問題研究所,P74)

一方、2014年に内閣府が行った「結婚・家族形成に関する意識調査」で、「どのようなことがあれば、あなたは(もっと)子供が欲しいと思うと思いますか」という質問をしたところ、「将来の教育に対する補助」が68.6%、「幼稚園・保育所などの費用の補助」が59.4%で、教育費に関する補助がトップを占めました。

幼児教育無償化はいつから始まる?開始時期と今後の課題

(参照元:平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)<子供・育児について(2)>|内閣府(P91より筆者作成)

つまり、夫婦が子供を産まない最大の要因は経済的な要因であり、経済的な補助があれば、もっと子供を持つ人が増えるはずです。これが、幼児教育無償化を「少子化対策」と呼ぶ理由です。

収入に関係なく幼児教育が受けられる

日本の義務教育は小学生から始まりますが、実は就学前の教育がその後の人生に大きな影響を与えることが、国内外の研究で発表されています。

たとえば、アメリカ NICHD(National Institute of Child Health and Human Development)が1991年生まれの子供を15歳まで追跡調査した結果によると、良質な幼児教育を受けた子供はそうでない子供に比べ、15歳の時点で学業成績や社会性により優れている傾向がありました。

また、1960年代にアメリカで行われた社会実験「ペリー就学前計画」によると、小学校就学前に幼児教育を受けた人は受けていない人に比べ、40歳時点での収入と持ち家率が高く、生活保護受給率が低いという結果が報告されています。

参考
教育の効果について~社会経済的効果を中心に~|国立教育政策研究所

これらの結果から推測されることは、人生における学業成績や経済的な成功などに役立つのは、小学校入学以降に得た学問的知識よりも、就学前に培った社会性や人生に対する積極的態度など人間性の要因の方が大きいと考えられます。

親の経済的理由で子供に幼児教育を受けさせられないと、社会性や人間性が作られる就学前の時期に、それらを発達させるのに十分な刺激が得られません。幼児教育の機会を逃したことにより、その子供の将来が左右されてしまうのは、個人にとっても社会にとっても大きな損失です。

幼児教育が無償となれば、親の経済力に関わらず、誰でも就学前に教育を受けることができるようになります。

幼児教育無償化の懸念

保育士の負担が増える

保護者にとっては嬉しい無償化ですが、保育の現場では、ただでさえ人手不足で忙しいのに、保育士の負担がさらに増えるのではないかと危惧されています。

保育士の負担を軽減するには、保育士の増員が必要です。そこで、1番効果があると思われるのが潜在保育士の利用です。潜在保育士とは、保育士資格を持っているにも関わらず、保育現場で働いていない人のことで、約75万人いると推定されています。保育従事者が約45万人なので、潜在保育士が保育の現場に復帰できれば大きな力となるでしょう。
参考
保育所数と待機児童数、保育士数の推移|Agent Gate Glow Nursery Project

保育士の中には、出産を機に保育の仕事を辞める人が大勢います。それらの潜在保育士に現場へ復帰してもらうには、給与などの待遇改善だけでなく、小さな子がいても働きやすい柔軟な働き方を認めていくことが必要でしょう。

保育施設の質が低下する

幼児教育無償化にともない、保育所施設がさらに増設される見込みです。保育所が多数増設された場合、経験豊富なベテラン保育士は数少ないため、経験の浅い保育士が新しい施設に集まる可能性があります。経験の浅い保育士ばかりで運営される保育所の場合、保育の現場にありがちな予想外の出来事に対応しかねる可能性を指摘されています。保育士の数の確保だけでなく、質の確保も求められています。

待機児童が増える

大阪府守口市では、国に先駆け2017年より幼児教育無償化を実施しています。その結果、無償化前の1年で33人減った0~5歳の人口が、無償化後の1年で128人増えました。親世代となる20代は39人減から363人増となりました。市の少子化対策が功を奏したと言えますが、同時に待機児童数は、2016年4月の17人より2018年4月は48人に増えました。

幼児教育が無償化されると、保育需要が掘り起こされ、より多くの保護者が子供をより早く保育所に入れる動きが出ると考えられています。無償化の対象となるのは多くの場合3歳からですが、3歳になってから預け入れようと思っても、2歳から持ち上がる子供が多くて入れないからです。

政府は、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を整備するとしています。保育施設の拡充は待ったなしです。

まとめ

幼児教育の無償化は、家計の大きな助けとなることは間違いありません。しかし、保育の現場は無償化前の現在でもすでに大きな問題を抱えています。幼児教育無償化を政府の言う「人づくり革命」に結びつけるためには、まず保育士の処遇改善と待機児童の解消を行い、保育の質と量を確保しなくてはならないでしょう。

参考リンク

幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会報告書|内閣官房
未来を担う子供たちに、保育・教育の無償化を実現します。|自民党
保育無償化、入園待ち長くなる? (2019ニュース羅針盤) |日本経済新聞2019年1月1日朝刊
『<保存版>幼児教育・保育の無償化』を公開 2018年10月10日 調査レポート|WELKS
「幼児教育無償化」いつから?2019年10月開始予定!制度の所得制限や対象の年齢について【ママの口コミも】|HugKum【小学館公式】
私立幼稚園の幼児教育無償化 いつから?対象者・内容|新児童手当まとめサイト
幼児教育無償化、いつから?対象は…自治体独自の取組みも|ReseMom
保育園の無償化はいつから?幼児教育・保育の無償化の対象年齢は?|パパ目線の育児ブログ はじめての妊活・出産・子育てのお話

この記事をかいた人

Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター 【職歴】 1998年~2003年 中国北京の日系広告会社勤務。日系クライアント営業マネージャー。 2014年~2018年 フィジーでアジアの女性のためのソーシャルグループ運営。文化交流イベントを行う。 2018年8月~ インド・デリー在住、ライターへ転身。 【資格】 中国語・新漢語水平考試(HSK)6級 中国語・漢語水平口語考試(HSKK)高級 TOEIC 915点 【私生活】 中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期に突入した1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。