道徳教科化の背景とは?!導入のメリットとデメリットについて

道徳の教科化については、これまでにさまざまな議論がされてきました。道徳科の目標は、道徳性を養うこと。これまで、道徳の時間は、道徳的実践力を養い、将来遭遇するであろう状況において道徳観を実現させる力を養うものであり、現在の生活に道徳観を実践しなくてもよい、という考え方もありました。しかし、深刻ないじめ問題はまさに現在の生活において道徳観を実践しなかった結果なのかもしれません。道徳教科化の背景や道徳に関する歴史、教科化によるメリットとデメリットについてご紹介します。

道徳の教科化とは

教科化導入までの背景

道徳は、1958年に特設され、週時程表の1つとして位置づけられました。当時、道徳の特設が第二次世界大戦以前の「修身」復活とも認知され、実質的には授業を行っていない状況がありました。こういった問題が長期間あったために、人間の生き方を考え、学ぶ道徳の大切さを認識しながらも、きちんと学ばれていなかった背景があります。

時代の流れとともにイデオロギーの観点から反対する学校現場は少なくなってきました。しかし、指導側の先生が道徳の授業を受けたことがなく、入試科目に関係なく通知票や要録に記入しなくていいために、ほかの学習活動に充てられることもありました。これまで道徳の授業浸透ために「心のノート」導入や道徳教育推進教師の校務分掌設置を実施しましたが、実質的な改善にはつながりませんでした。

そこで、今回の道徳教育化に踏み切ったのです。教科化では、道徳授業の確実な実施、「考え議論する」道徳を行う、などの取り組みがともないます。また、今回の教科化の背景には、いじめ問題も挙げられます。2013年の教育生成実行会議の第一次提言では、いじめ問題の対応策として道徳教育の重要性を説かれていました。道徳の教育化により、いじめ問題の解消や発生防止の効果発揮が期待されています。

日本における道徳教育の歴史

道徳教育は、日本の歴史を遡るといつからあったのでしょうか。実は、第二次世界大戦よりはるか昔、日本という国が作られた時代までさかのぼります。

聖徳太子による十七条の憲法

実は、道徳教育は、古く聖徳太子のいた時代にもありました。聖徳太子を知らない人はいないでしょう。604年に聖徳太子の制定した『十七条の憲法』は、その名の通り「法律」ではなく、国を治める役人の模範的なあり方、道徳的な生き方を示したものでした。その十七条の内容を一部紹介します。

一、 和をなによりも大切なものとし、いさかいをおこさぬことを根本としなさい。
二、 あつく三宝(仏教)を信奉しなさい。3つの宝とは仏・法理・僧侶のことである。
三、天皇から指示を受けたなら、必ずそれに従いなさい。
四、 政府高官や一般官吏たちは、礼の精神を根本にもちなさい。
五、 官吏たちは饗応や財物への欲望をすて、訴訟を厳正に審査しなさい。
六、 悪をこらしめて善をすすめるのは、古くからのよいしきたりである。
七、 人にはそれぞれの任務がある。それにあたっては職務内容を忠実に履行し、権限を乱用してはならない。
八、 官吏たちは、早くから出仕し、夕方おそくなってから退出しなさい。
九、 真心は人の道の根本である。何事にも真心がなければいけない。
十、 心の中の憤りをなくし、憤りを表情にださぬようにし、ほかの人が自分とことなったことをしても怒ってはならない。
十四、官吏たちは、嫉妬の気持ちをもってはならない。
十五、私心をすてて公務にむかうのは、臣たるものの道である。
十七、ものごとはひとりで判断してはいけない。かならずみんなで論議して判断しなさい。

(引用元:十七条の憲法|十七条の憲法

日本では、道徳上大切な生き方をすでにこの時代から説いていたのです。小学生でも理解できる内容です。『十七条の憲法』と名づけておきながら、法律よりも先に道徳観を示したのは、聖徳太子が道徳の重要性を理解していたからでしょう。

明治天皇による教育勅語

時代は流れ、明治時代においても、明治天皇から道徳観を示した『教育勅語』が示されました。教育勅語は、日本人にとって何が大切なのかを示した手本です。当時は、明治時代の文明開化により、洋学を重んじられ、日本古来の道徳観を軽視されていたのです。そこで明治天皇は、徳育の振興のために『教育勅語』を示したのです。

教育勅語にある十二の徳目は、以下の通りです。

・孝行 親に孝養をつくしましょう
・友愛 兄弟・姉妹は仲良くしましょう
・夫婦の和 夫婦はいつも仲むつまじくしましょう
・朋友の信 友だちはお互いに信じあって付き合いましょう
・謙遜 自分の言動をつつしみましょう
・博愛 広く全ての人に愛の手をさしのべましょう
・修学 習業 勉学に励み職業を身につけましょう
・知能 啓発 知識を養い才能を伸ばしましょう
・徳器 成就 人格の向上につとめましょう
・公益 世務 広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう
・遵法 法律や規則を守り社会の秩序に従いましょう
・義勇 正しい勇気をもって国のため真心を尽くしましょう

(引用元:明治天皇様について|明治神宮

十七条の憲法も、教育勅語も、今日言われている道徳観、人間としての理想的なあり方を説いています。明治天皇は、国の状況に危機を感じて教育勅語を出しました。内容は、小学生でも分かるだけでなく、大人もなかなか守ることができていない道徳観も多いのではないでしょうか。