医学部で留年が増えている現状と留年しないためにすべきこと

「勉強についていくのが大変……」と、せっかく大学の医学部に進学したにも関わらず、子供が大変そうにしている姿を目にする親もいるかもしれません。また、これから医学部を受験する子供のいる親には悪いニュースとなってしまうかもしれませんが、近年医学部学生の留年率が上がってきています。

なぜ医学部で留年してしまう学生が増えてきているのでしょうか? 当記事では、医学部生の留年の現状と留年が増えてきている理由についてご紹介します。また、医学部に進学後、留年しないために子供がすべきことも併せてご紹介します。

医学部生の留年の現状

必要な単位を履修できなかったなどの理由で大学生が留年してしまうこと自体は、どんな大学や学部にもあることです。しかし、近年の医学部においては少し様子が違ってきているようです。

医学部の留年者は増えてきている

文部科学省が毎年行っている学校基本調査において、大学を対象にした調査の1つに「最低在学年限超過学生数」というデータがあります。

これは本来卒業に必要な在学年数を超えて大学に在籍してしまっている学生がどのくらいいるかを調査したもので、医学部生であれば6年が最短在学年数となります。平成30年の調査によると、修業年限が6年である医学・薬学・歯学の学部において以下の人数が最低在学年限を超過、つまり留年してしまっています。

※単位(人) 合計
国立大学 1,038 262 1,300
公立大学 165 43 208
私立大学 3,356 2,364 5,720
合計 4,559 2,669 7,228

(参照元:最低在学年限超過学生数|e-Stat

全国の大学において、合計7,228人の医・歯・薬学部の学生が留年していることが分かっています。また、一般社団法人全国医学部長病院長会議が平成30年1月に集計し、公表している「医学生の学力に関するアンケート調査結果」においても、平成20年から平成28年までで留年している学生が年々増加傾向にあるというデータが発表されています。

各学年の留年率】

(参照元:医学生の学力に関するアン ケート調査結果|全国医学部長病院長会議)

1年生の留年率が増えている

また、「医学生の学力に関するアンケート調査結果」によると、中でも1年生の留年が増加している傾向にあるようです。募集定員の増加なども加味して算出された補正留年率を見てみると、平成25年度から平成28年度までのデータで下記のように推移しています。

平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度
1年生 133.5% 173.6% 163.6% 181.8%
2年生 131.8% 125.2% 127.9% 136.5%
3年生 92.0% 106.5% 103.0% 136.5%
4年生 112.6% 117.5% 135.6% 119.2%
5年生 105.6% 121.0% 124.4% 134.1%
6年生 73.6% 88.6% 103.6% 100.3%

(参照元:医学生の学力に関するアンケート調査結果|一般社団法人全国医学部長病院長会議

他学年と比較しても、1年生の留年率が上がっているのは明らかでしょう。特に平成28年度の1年生の補正留年率は181.8%と200%に迫る勢いです。

6年間で国家試験合格する医学部生が減少

上記のように留年する学生が増えていることが影響し、ストレートで医師の国家試験に合格する学生が減っています。

入学年度

  • 平成16年度: 87.0%
  • 平成17年度: 87.6%
  • 平成18年度: 86.9%
  • 平成19年度: 87.2%
  • 平成20年度: 85.4%(定員増開始年度)
  • 平成21年度: 84.2%(平成27年3月卒業者)

(引用元:医学生の学力に関するアンケート調査結果|一般社団法人全国医学部長病院長会議

80の医学部を対象にして行ったストレートでの卒業率調査で、平成16年度から平成21年度の入学者を対象にした調査においても「ストレート卒業率が漸減傾向にある」という調査結果が出ています。

医学部入試の偏差値は上がっている大学も多い中、6年間のストレートで医学部を卒業することができない学生が増えているという現実もあります。

医学部で留年する学生が増えている理由

医学部で留年してしまう学生が増えているのには、いったいどのような理由があるのでしょうか?

「1つでも単位を落としたら留年」の難しさ

他学部との比較の中で、医学部の特徴として挙げられるのが「教養の後の授業はすべて必修であり、1つでも落としてしまうと進級不可」という点です。言葉どおり、1つでも必要な単位を落としてしまうと、その瞬間留年が決まってしまいます。

例え、たくさんある科目のうち、1科目落としただけだとしても、留年となってしまいます。次の1年間はその落としてしまった1科目の授業を受けるためだけに学校へ通わなければならないという現実があります。

医学を修め、医師になる意欲の低い学生の増加

医師になるという意欲の弱い学生が増加していることも、留年する学生が増えている理由の1つです。東京慈恵会医科大学・教育センター長の福島統教授は以下のように述べています。

医者になるには本来強い目的意識や年々新しく出る症例などを生涯学ぼうという気概が必要。高い偏差値で手に職をつけようと入学した学生にはギャップが生じやすい

(引用元:高偏差値「医学生」の留年が急増している理由|東洋経済オンライン

偏差値や手に職という安定性だけで医学部を選んだ結果、「そもそも医師の仕事にはそんなに興味がない」「医学部合格が目的で燃え尽きて、大学に来なくなった」など、大学と学生のミスマッチが起こっているのです。

国家試験合格率を上げるため

私立大学の医学部は国公立大学の医学部と比較しても、同じ医学部とは思えないほど高額な学費が必要になります。高い学費を支払ってでも進学したいと受験生に思わせるために、私立大学では医師の国家試験合格率を上げて実績を残す必要があります。そのため、進級の基準を厳しくすることにより、試験合格の可能性の高い学生に絞って国家試験を受験させ、国家試験合格率を上げようとしているのです。

一見すれば「国家試験合格率の高い素晴らしい大学の医学部」に見えるかもしれませんが、その実は進級のハードルが極めて高いということもあり、留年している学生が多い可能性もあります。

医学部で留年しないためにすべきこと

医学部で留年している学生が増えている背景がお分りいただけたでしょうか。「うちの子供は留年させたくない」というのが親の本音でしょう。そこで最後に、医学部で留年しないために子供がすべきことを解説します。

友人や先生との交流を増やし、情報戦を制す

ほかの学部での定期試験でも言えることですが、大学の試験はある意味では「情報戦」です。科目によっては膨大な範囲の中から試験に出題される問題や過去の傾向などを知っておけば、効率的な勉強によって単位を取れる学生がいる一方、すべての授業に出席していたとしても、要領が悪く試験で出題されないところばかり勉強してしまって単位を落とす学生もいます。

医学部では特に解剖学や組織学などが内容量の多い科目なので、これらは友人との情報交換や先生から出題範囲を事前に聞いておくことで、単位取得の可能性を高めることができます。

国公立大学の医学部を目指す

前述のとおり、私立大学の医学部は国家試験合格率を上げるため、進級するためのハードルが高くなっている可能性があります。一方、国公立大学の医学部は、学費の安さから毎年志願者は一定数いるため、私立大学のように「国家試験合格率を上げるために進級するためのハードルも高くする」という必要はありません。

また、私立大学の医学部が出席を取るところも多いのに対し、国公立大学では少し緩い傾向があります。留年せずに進級していくことを考えるのであれば、国公立大学の医学部の方が進級はしやすいかもしれません。

本当に医学部で学びたいのかを考える

偏差値の高さや将来の安定性だけで医学部を選択してしまうと、「医師になる」「医学を修める」「医療の中で社会に貢献したい」などと言った意欲が湧かず、6年間大学で勉強し続けることが難しくなってしまいます。

自分が大学で何を学び、将来どんなことをしたいのか、どんな価値を社会に与えたいのか、自分が4〜6年間という期間で意欲を持って学業に取り組める分野を選択することが望ましいでしょう。

終わりに

医学は日々進化し続けている分野です。医学部の入学のみならず、在学中の6年間、また医師になってからも医学について勉強し続ける姿勢が求められます。留年をしないためだけでなく、医学の力で社会の役に立つために、諦めず主体的に学び続けられることが大切となります。

参考
最低在学年限超過学生数|e-Stat
医学生の学力に関するアンケート調査結果|一般社団法人全国医学部長病院長会議
高偏差値「医学生」の留年が急増している理由|東洋経済オンライン
もう既に30人留年決定!!医学部の授業の難易度と留年・退学事情|医学部予備校比較ランキング
これが医学部大量留年の驚くべき実態だ|文春オンライン

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