文部科学省掲げる「生きる力」の一つ、「豊かな人間性」は、子供が成長していく中で勉強ができるかどうかよりも大切な項目です。文部科学省がどういった定義づけをしているのか、どのように取り組んでいるのか、家庭教育で求められていることは何かについてお伝えしていきます。
もくじ
「豊かな人間性」とは
文部科学省の掲げる「生きる力」の3本柱の1つ
「豊かな人間性」とは、文部科学省の掲げる「生きる力」の1つです。相手や周りを思いやる心、心の琴線に触れて感動する体験などを「豊かな人間性」としています。そのほか、知識やスキルだけでなく、主体性を持って学び、考え、判断、行動する問題解決能力を「確かな学力」、たくましく生きるための「健康・体力」などと同時に、「生きる力」を身につけることが子供の育成に求められることだとしています。
なぜ「豊かな人間性」が必要なの?
近年、生命の大切さ、周りへの心配り、善悪の判断、公共心の低下を指摘されています。子供たちの放課後の遊び場は公園や家ではなく、「ネットゲームの中」というのも当たり前になりつつあるようです。
バーチャルな世界で友達とゲームを楽しむのは現代の遊び方の1つですが、生身の人間とふれあわず、相手の気持ちの機敏な変化を感じる機会なくして相手を思いやる心を育んでいくことはできるのでしょうか。勉強や課題解決はできても、コミュニケーションを取れない人間が社会で活躍していくのは難しいでしょう。コミュニケーション能力を磨くためにも、子供たちにそのベースとなる心を磨いてもらうことが大切です。
具体的な「豊かな人間性」とは
豊かな人間性を身につけてもらうために、どういった教育が取り組まれているのでしょうか。文部科学省では、豊かな人間性を育成するため「道徳教育」を実施しています。幼稚園では、各分野で総合的に教育を行い、まず道徳性が生まれるようにしています。小・中学校では、週に1時間ある道徳の授業をはじめ、ほかの教科や特別活動、総合学習の時間を活用して、学校教育活動全体で培っていきます。文部科学省では道徳教育の充実のため、具体的に5つのことに取り組んでいます。
- 「心のノート」の作成・配付
全国の小中学校に配布している「心のノート」は、道徳的価値を自分で考えるきっかけに、そもそも道徳の内容とは何か、を伝えるために作られた教材です。「心のノート」は、道徳の時間、学校教育活動、家庭など、さまざまなシーンで活用できます。 - 生徒の心に響く道徳教育推進事業
特に「生命を大切にする」ことを深め、道徳性を育成するため、現場を活かした指導内容や指導方法、教材開発に関する研究を進めています。道徳面で教員の指導力を高めるため「道徳教育を推進するための中核となる指導者の養成を目的とした研修」などを開催しています。 - 豊かな心を育てる地域推進事業
地域団体や機関と連携を取りながら、学校教育を中心として、全国の手本となる教育活動づくりと、その普及を行っています。 - 伝え合う力を養う調査研究事業
コミュニケーションや人間関係を円滑にするため教育カリキュラムの研究を行っています。 - 高等学校・中学校「人間としての在り方生き方を考える教育」実践研究事業
心の変化を感じる青年期に、生徒が社会や周りの人に注目し、人間のあり方、生き方を考える教育を進めるための実践研究をしています。
参考:第1節 「確かな学力」と「豊かな心」を育成し,「生きる力」をはぐくむ学校教育を目指して|文部科学省
文部科学省では、これらに加えてさまざまな取り組みを実施しています。