Grit力の高い日本人
海外で成功したGritを持つ人物を挙げるなら、アップル創業者のスティーブ・ジョブズやプロバスケットボール選手のマイケルジョーダンなどでしょう。彼らは今日、世界中で名前を知られるほど有名になっていますが、学校の成績は平均並みで、さほど有名ではありませんでした。
しかし、Gritを持っていたことで、周知のようにこれまでの成功を収めてきたのです。では、私たち日本人でGritを持ち、成功した人物にはどんな方がいるのでしょうか。
イチロー
プロ野球選手のイチローは、努力の天才です。何度も、野球界の歴史的記録を塗り替えてきました。メジャーリーグにデビューした2001年から10年連続200本安打を達成。ジョージ・シスラーが1920年に立てた「シーズン257本安打」という記録を、イチローは2004年に「シーズン262本安打」という記録で打ち破りました。さらに、2016年6月には、日米通算4257安打を達成して、プロ野球での通算最多安打の世界最高記録を樹立し、ギネスにも認定されました。
数々の偉業を成し遂げてきたイチローは、「特別なことをするために、特別なことをするのではなく、特別なことをするために、当たり前のことをする」と話しています。その偉業は、細部までこだわったルーティンワークを毎日続けた努力に裏打ちされています。1つ1つの小さな積み重ねをやり続ける努力は、Gritに通じるものがあります。
本田宗一郎
多くの経営者から尊敬を集める人物が、Hondaの創業者である本田宗一郎です。本田宗一郎は、42歳でHondaを創業しました。世界一のメーカーを本気で目指していたからこそ、自分に残された時間に対して厳しく、つまりそれはほかの従業員に対する厳しさにもつながっていました。
1日15時間、正月も関係なく35年間ひたすら働き続け、本田宗一郎は今や世界に名高いHondaを生み出していったのです。「私の最大の栄光は、一度も失敗しないことではなく、倒れるごとに起きるところにある」技術者として、パイオニア精神を持ち、高い目標を掲げ、その達成に常に邁進し続けた本田宗一郎は、間違いなくGritのある人物です。
上杉鷹山
上杉鷹山は、ケネディ元大統領が「最も尊敬する人物は誰ですか?」と日本人記者に聞かれ、その名を挙げた歴史上の偉人です。内村鑑三の『代表的日本人』の5名にも選ばれています。「為せば成る。為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」という言葉を残しています。
上杉鷹山は、若干にして17歳で米沢藩主に就きます。米沢藩は、当時30万両(今の貨幣価値で数十億円)の借金を抱えていました。そこで上杉鷹山は、質素倹約による財政改革、蚕を用いた産業改革、民の精神改革という3大改革を実施。民の猛反発を受けます。しかし、自ら誰よりも働き、質素倹約して、民の心をまとめ、50年以上という歳月をかけて借金を完済しました。まさにGritを持った上杉鷹山だからこそ、成し遂げられた偉業でしょう。
Grit力は子供の成績にも関係する
「第 10 章.グリット(やり抜く力)不平等|文部科学省」の調査によると、子供の学力(国語、算数・数学の正答率の平均)の良さは、Gritの高さに比例するということが分かっています。高いGrit力を持つ子供は、スマートフォンの使用時間が短いようです。一方で、通塾との関連性は見つかっていません。さらに調査では、親の遺伝子が子供のGrit力に対して大きく影響を与えるとも伝えています。このように、Grit力は子供の成績の良さにも関係しているようです。