核家族化が家庭に与える3つの影響とは
一方で、両親の住居が車・電車で1時間以上離れている世帯も一定数います。親元を離れ、核家族として暮らすことにはどのような影響があるのでしょうか。今回は核家族が家庭に与える影響を3つご紹介します。
(1)祖父母からの援助が得られず親の負担が増える
前掲の同居・近居の割合のグラフからも分かるように、両親と離れて暮らしている世帯も各世代で20%以上います。その世帯に子供が生まれた場合は、祖父母が近くに住んでいないことになります。
子供が幼くても、親は家庭を支えるためにも働かなければなりません。育児や家事を怠ることもできず、親の負担は大きくなってしまいます。
祖父母と同居あるいは近居をしている場合は、家事を手伝ってもらったり、子供の面倒を見てもらったりなど援助してもらえることもあります。仕事が遅くなってしまう場合には祖父母に保育園や幼稚園のお迎えに行ってもらうなど、力を借りることで負担を分散することができるのです。
しかし、同居や近居をしていない場合は、そう簡単に両親の援助を受けることはできないでしょう。緊急の際に両親が駆けつけてくれるとしても、1時間以上はかかってしまうのです。同居・近居をしている世帯と比較すると、親への負担が大きくなることが考えられます。
(2)子供と近所の人との深い関わりが少なくなる
核家族化が家庭に与える影響の1つに、子供と近所の人との関わりが浅くなってしまう可能性が挙げられます。文部科学省が発表している「地域の教育力に関する実態調査」では、親世代が自分が子供のころと現代との地域の教育力の変化について、以下のように発表しています。
自身の子ども時代と比較した「地域の教育力」(N=2,888)
(引用元:「地域の教育力に関する実態調査」報告|文部科学省)
大都市・中都市では、町村と比較して子供に対する地域の教育力が「以前と比べて低下している」と回答した割合が高くなっています。大きな都市には、学校や企業も多くあります。そのため、進学や就職のために引っ越してくる人々も多いでしょう。親が地元ではない地域で家庭を築いたことで、近所の人々と深い関係を作ることができていない可能性が考えられます。
こうした実態から、内閣府は、課題特集「家庭,地域の変容と子どもへの影響」で以下のような考察をしています。
特に,都市化や核家族化などにより家族以外との接触が少なくなっている状態にあっては,困難な状況に置かれたときの解決を家庭内だけで抱え込むことにより,より困難な状況にとらわれていくことが再三指摘されており,家庭へのアプローチが大きな課題
(引用元:特集 「家庭,地域の変容と子どもへの影響」|内閣府)
地域の教育力の低下は、子供と地域の関わりが薄くなっていることを指していると言えるでしょう。付き合いが浅いことによって気軽に地域の人々を頼ることができず、困難が生じた際には子供も親も周囲をなかなか頼れない可能性があるのです。
(3)共働きで「家に子供だけ」の時間が増える
核家族の中には、夫婦が共働きの家庭もいるでしょう。両親が日中に働きに出ていることで、家に子供しかいない時間が増えることが考えられます。
子供の中には、大人のいない時間を楽しむ子もいるでしょう。しかし何かあった際には、子供だけで対応しなければなりません。家に子供だけの際に災害や事件が起こってしまっては、子供も大きな不安を背負うことになります。
また祖父母が同居している場合は、両親がいない間でも子供の様子を見ることができます。何時ころに帰宅しているのか、帰宅した後の過ごし方はどうか、帰宅時にどんな表情や態度を見せているのかなど、子供の変化に気付きやすい環境を作ることができます。
一方で核家族世帯の場合は、子供の変化に気づくタイミングが同居世帯と比較すると少なくなってしまうでしょう。核家族の家庭では、子供を見守る大人の数が少なくなってしまうのです。
核家族だからこそ、家族の絆を深くしよう
核家族世帯の中には、さまざまな事情から両親と同居ができない家庭もいるでしょう。しかし核家族であることが、家庭に影響を与えることもあります。核家族として我が子の成長を見守るためには、両親だけではなく地域との繋がりをより意識する必要があるでしょう。
核家族化が進んでいる一方で、両親との近居を選ぶ家庭もいることをご紹介しました。家族の付き合い方は家庭によって異なっているのです。各家庭がそれぞれに家族との関係を考えながら築いていることが分かります。
核家族だからと言って、家族の繋がりがないというわけではありません。家族の絆を家族に合った形で深めていくことが、子供の成長にとっても大切になるでしょう。
参考
核家族化は「家庭の教育機能」を低下させたか|明治安田生命福祉研究所
「核家族化が進んでいる」は本当か? データから徹底検証|現代ビジネス
人口動態・家族のあり方等社会構造の変化について|総務省
『日本の世帯数の将来推計(全国推計) 2015(平成27)年~2040(平成52)年 2018(平成30年)年推計』報告書|国立社会保障・人口問題研究所
【別添2】既婚者とその親との住まい方-「近居」を中心とした実態と将来意向-|国土交通省
特集 「家庭,地域の変容と子どもへの影響」|内閣府
「地域の教育力に関する実態調査」報告|文部科学省