体だけじゃない?! 子供の心の柔軟性を育てよう

体だけじゃない?! 子供の心の柔軟性を育てよう

「柔軟性」という言葉を目にしたとき、何を思い浮かべますか? 「柔軟体操」のように、身体能力としての柔軟性が、まず思い浮かぶでしょうか。では、「頭や心の柔軟性」はどうでしょうか? 柔軟性のある対応・柔軟性のある考え方と言われると、身につけておくと良さそうな能力な気がしませんか。今回は、そんな「柔軟性」について調べてみました。

柔軟性って何だろう

柔軟性ってなんだろう
体の機能にも、頭や心にも両方関係ありそうな「柔軟性」という言葉。最近では、体の機能についてのことが話題になっています。

体だけではない、心の柔軟性

子供たちの身体能力が落ちているそうです。本来、子供は大人より体が柔軟なもの。しかし、最近では、柔軟性がなく、体育の授業で骨折などの大ケガをしてしまう子供が増えています。

理由の1つとしては、運動不足が挙げられるそう。しかしスポーツをやっていればこの問題は解決するのかというと、そういうわけでもありません。サッカーのように下半身だけたくさん使うような競技だと、体全体のバランスの悪さ・使わないところの硬さは解消されないそうです。

さて、体の柔軟性がないせいでケガをしてしまうのも困りものですが、柔軟性には別の意味もあります。それは考え方・心の動きに関するものです。

辞書を引いてみると、「柔軟性」の項目には2つの説明がありました。

1 やわらかく、しなやかな性質。「関節の柔軟性を高める体操」
2 その場に応じた適切な判断ができること。さまざまな状況に対応できること。「柔軟性のある思考」「柔軟性を備えた組織」

(引用元:柔軟性|コトバンク

1つ目の定義が、物理的・身体的な意味。2つ目の定義が、考え方・心に関係のある意味になりそうです。この定義によると、考え方に柔軟性があるというのは、ないよりもメリットがあるように受け取れます。それでは、考え方に柔軟性があるというのは、具体的にはどんな能力なのでしょうか。詳しく見ていきたいと思います。

考え方に柔軟性のある人の特徴とは

臨機応変に対応できる
考え方に柔軟性のある人は、自分と話し相手との意見が対立したときなどに、相手に合わせながら会話を進めていくことができます。「結論ありき」で進めるのではなく、頭の中で何パターンも話の展開を予想し、上手にお互いの意見をまとめます。

イレギュラーな仕事にも対応できる
会話だけでなく、仕事の場面でも、臨機応変に対応できる力が発揮されます。普段のルーティンと違う初めての仕事を振られたり、トラブルが発生したりしても、落ち着いて対応できます。

視野が広い
さまざまな可能性を考慮して考えを組み立てるのは、視野が広くないとできません。柔軟性のある人は、常に広い視野を持って会話や仕事の内容を見渡しています。そのため、たくさんの可能性に気づくことができるのです。

創造的な解決をする
視野が広く、さまざまな可能性を検討している結果、柔軟性のある人は問題に対して新しい解決策を生み出すことができます。硬直化・マニュアル化した考え方では創造的な解決は難しくなってきます。

柔軟性は進路決定にも影響を及ぼす?

柔軟性の特徴を列挙してみると、ビジネスの現場で役に立ちそうな、大人にとっても参考になる内容でした。それでは、子供にとって柔軟性はどのような影響を持つのでしょうか。

大学生の就職活動と柔軟性

大学生の就職活動において、柔軟性について調査した研究があります。それによると、進路に対する「確信度」と「柔軟性」はある程度対立し、学生の進路決定に影響を与えていたそうです。

進路決定の際には、希望進路を明確に決めていることと、一方で就職活動などの状況に合わせて柔軟に対応していくことも必要とされる。そこで本研究では、自分の希望進路にどれくらい確信を持っているかという進路決定の確信度と、一度決めた進路に固執しすぎず状況に応じて柔軟に対応していくことができる進路決定の柔軟性をとりあげた。

(引用元:女子大学生の就職活動における進路決定の確信度と柔軟性に影響する要因―自己効力感とソーシャルサポートに着目して―|十文字学園女子大学機関リポジトリ

「確信度」とは、「将来やりたい仕事を はっきり決めている」、「『自分にはこの道がよいのだ』と確信を持てる進路がある」、「人から『つきたい職業、やりたい仕事』を尋ねられ たら迷わずに答えることができる」、「自分の職業選択には確信を持っている」など、進路決定に対する自信のことを指します。

逆に、「柔軟性」は、希望する職業や仕事に就くことが難しそうなときには、すぐに切り替えて別の進路を考えるつもりだ」、「就職活動中でも臨機応変に進路希望を変更することができると思う」、「希望する進路はあまり限定せず、幅を持たせておきたい」、などという、就職活動の可能性に幅を持たせる考え方を生みます。

進路を決める際には、この確信度と柔軟性のバランスが大切です。両方を併せ持つ人物に成長した子供は、結果的に将来の可能性が広がると言えそうです。

子育てと柔軟性

子供たちにはまだ先の話で、親にとってのほうがより身近かもしれない子育て。現代では、自分が育ってきた価値観と、これから自分が子供を持って育てていくときに持つべき価値観とのギャップに悩む若者もいます。たとえば、自分の母親が専業主婦だったとしても、将来自分や自分の配偶者が専業主婦になるとは限りません。これからは共働きの家庭がさらに増えていくことを前提にすると、自分が育ってきた環境を、自分の子供を育てるときには再現できないと考えた方が現実的です。

そこで、自分が育ってきた価値観に固執するのか、新しい方法を見つける柔軟性を持つのか。どちらを選ぶのかによって、人生の選択肢は大きく変わってきます。子供たちが大きくなるころには、このような変化はさらに大きくなっているかもしれません。予測できない未来に対応していくためにも、柔軟性を持つことは大切になってきます。

頭の柔軟性を高めるために、大人が気をつけたいこと

それでは、子供が柔軟性を持つために、大人はどのようなことに気をつければいいのでしょうか。

子供のうちから取り組むことが大切!

柔軟性のある・なしは、大学生から大人になっていくタイミングで、人生の進路に大きな影響を与えそうだということが分かりました。それでは、柔軟性はある程度大きくなってから身につけるようにトレーニングすればいいのでしょうか?

最近では、小学校などの早い段階から教育の中にディスカッションが取り入れられるようになっています。これも柔軟性を身につけるためのトレーニングの1つ。子供のうちから柔軟性のトレーニングをすることは教育上意味があると考えられています。

ディスカッションでは、たくさんの意見を聞くことになります。そのとき、心の中で「自分の意見が正しいと思っていたけれども、あの意見の言いたいことも分かる。どうしよう?」という葛藤が生まれます。他の人の意見によって、当然だと思っていた自分の意見が、たくさんある中の1つにしかすぎないことに気がつくのです。

このことが、心も体も発達段階にある子供たちにとって、大きな成長を促すと考えられています。こういった体験は子供の視野を広げ、さまざまな意見を調整して合意できるところを協力して探すという柔軟性を生みます。

ある研究では、小学校6年生のクラスで実際にグループディスカッションをしてもらいました。そうすると、他の人の意見を取り入れられたグループと、取り入れられずに平行線のまま終わったグループに別れたそうです。他の人の意見を取り入れてグループとしてまとまった議論をするためには、以下の2つのことが重要だと考えられます。

1 メンバー間に互いの意見を尊重し、協同的に取り組もうとする討論への構えがあること
2 討論の展開を意識し、協力して推進しようとする態度と技能を身に付けていること

(引用元:小学校段階における討論学習の必要性の再検討――認知面と心理面への影響の分析を通して――Re-thinking the Importance of Discussion for Learning in Primary School: Analyze the influence to cognitive and affective dimensions「国語科教育 83(0), 15-23, 2019」|CiNii

つまり、「とにかく自分の意見を聞いてほしい!」という強い自己主張や、「正しい結果になるなら、反対意見はどうでもいい」という硬直化した姿勢のままだと、柔軟性は身につかず、ディスカッションはうまくいきません。子供のうちから、他の人を尊重し、まわりと協力して結果を出そうというチームワーク思考が必要なようです。

きちんと話し合い、意見を聞く習慣をつけよう

成長途中の子供たちに、「人の意見を尊重しましょう」「周囲と協力して物事を進めましょう」とだけ言ってもなかなかうまくいかないものです。上記の研究では、クラスのディスカッションでは先生の役割がとても大切だと書かれていました。

ディスカッションが終わった後で、議論はどんなふうに進んでいったか? どういう発言が、みんなの考えを深めることができたか? などという振り返りをします。振り返ることで、ディスカッションの途中では議論に夢中になっていて気づかなかったことが分かります。

学校の授業としてやる分には、きちんとしたディスカッションを行うことはそこまで難しくありません。しかし、日常生活では「今からディスカッションを始めましょう」というふうに議論をすることはほとんどないと考えられます。普通は、ちょっとした命令口調や、意見の食い違いから言い合いになったりするものです。難しいのはこの「言い合い」という状態。子供にとっては、言い合いになってしまった場面で柔軟性を身につけるのは難しいそうです。

小学生の場合、相手との間に情意的・社会的な壁を築いてしまい、「攻撃的」や「心配」といった感情を高めることにつながる可能性がある。

(引用元:小学校段階における討論学習の必要性の再検討――認知面と心理面への影響の分析を通して――Re-thinking the Importance of Discussion for Learning in Primary School: Analyze the influence to cognitive and affective dimensions「国語科教育 83(0), 15-23, 2019」|CiNii

大切なのは、まず言い合いに発展させないこと。自分と違う意見に出会ったら、否定するのではなく「なぜそう考えるの?」と聞き、相手を理解しようという姿勢が必要です。子供が自発的にするのは難しそうですが、大人がまず実践してあげれば、子供もそのやり方を真似できます。日常生活の中から、お互いの意見を尊重するという姿勢を育てることが、柔軟性を高めることにつながります。

まとめ:しなやかに生きていくために

まとめ:しなやかに生きていくために
現代は変化が大きい時代です。「変化に対応するために、グローバルな人材に育てましょう」というキャッチフレーズを耳にすることもあります。ただ、グローバルな人材と言っても、英語が得意であればそれでいいわけではありません。多様性に富み、変化する社会の中で生きていくには、自分で自分の道を切り開くような確信・積極性のほかに、さまざまな価値観を尊重する柔軟性が必要です。

自分の意見をはっきり持つことだけでなく、他の人にも同じように譲れない考え方があるのだ、ということを理解し、お互いを尊重する柔軟性。生きていく中で、基本のスキルと言えそうです。まずはお互いの話をしっかり聞くところから。日常生活でも始められる柔軟性のトレーニング、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

参考
子どもの体に異変あり ~広がる“ロコモティブシンドローム”予備軍~|クローズアップ現代
「柔軟性がある人」と「柔軟性がない人」と、その他4つのパターン|Yohoo! ニュース個人
柔軟性の意味と柔軟性のある人・ない人の特徴 なるための方法|マナラボ
家庭と仕事の両立を模索する「Z世代」男子|毎日新聞
グローバル人材とは何か : 政府等による定義と新聞報道にみる功罪「千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of Studies on Humanities and Public Affairs of Chiba University 36巻」|千葉大学学術成果リポジトリ

この記事をかいた人

akahoshitomoka

piggiesagogoクロシェター・ライター。 オリジナルの編み物作品の作り方を販売しながらライターもしています。守備範囲はハンドメイドから不動産まで。三浦半島が好きです。