記憶を司る脳の部位!子供の海馬を鍛えるためにできること - cocoiro(ココイロ) - Page 3

子供の海馬を鍛えるためにできること

子供の海馬を鍛えるためにできること
では記憶を司っている海馬を大きくするために、子供が小さなころにはどんなことができるのでしょうか?

楽器を演奏する

学校の音楽の授業でも鍵盤ハーモニカやリコーダーなど楽器演奏を行います。また子供の習い事として人気のあるピアノやエレクトーン、バイオリンなどは人気が高いです。実はこれらの楽器の演奏は海馬にとって良い影響をもたらします。

高次脳機能研究に2006年に掲載された佐藤正之准教授の「音楽の脳内処理」によると、音楽の音色に注目して聴いたときの脳血流量が、海馬などの部位で有意に活性化したとされています。

また、音楽による脳への好影響は海外でも研究されており、アメリカのバーモント大学医学部が2015年に発表した研究では、6〜18歳までの232人の健康な子供を対象に実施した調査において、楽器演奏により運動機能を司る運動野が活性化することが分かっています。

楽器などを習わせることは海馬のみならず、子供の脳の成長に良い影響があるようです。

運動をする

「スポーツの習い事をさせようかな?」と考える方もいるでしょう。子供が運動をすることも、実は海馬に良い影響を及ぼします。2011年にアメリカのProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaという学術誌に掲載された「Exercise training increases size of hippocampus and improves memory」という研究によると、高齢者を対象にして1年間ウォーキングしてもらったところ、高齢者の海馬の体積が増大し、海馬の増大によって記憶力を確認する課題のパフォーマンスが改善されていたことが報告されています。

また2010年に「Brain Research」という学術誌に掲載された「A neuroimaging investigation of the association between aerobic fitness, hippocampal volume, and memory performance in preadolescent children」という論文の中で、9~10歳の子供を対象にして体力の高い子供と低い子供のチームを比べた結果、体力の高い子供のチームのほうが海馬の体積が大きかったことを示しています。この研究では記憶に関する課題も実施し、こちらもやはり体力があって海馬が大きい子供の方が課題の成績が良かったそうです。

子供の海馬を育てるのであれば、何かしらの運動をして体力をつけることも効果があるようです。

自然体験をする

最近では外遊びをする子供が減ってしまったというデータもありますが、海馬の発達にとって外遊びをはじめとする自然体験をすることは有用なことだと言われています。

なぜ自然体験をすることが子供の海馬の発達にとって有用なのかと言うと、多様な状況や環境を経験させることが海馬にとって良いからです。例えば、森や川、海などの自然環境で積極的に遊ばせ、さらに子供が興味を持った昆虫や星座などの好奇心を大切にしてあげてください。海馬は感情をともなう行動を記憶として蓄えやすいため、自然の中で体験できる非日常でワクワクしたり楽しんだりすることが海馬にとって良いのです。

ご飯をよく噛んで食べる

昔から親のしつけの1つに「ご飯はよく噛んで食べる」というものがあります。これは食事の吸収を良くしたり、顎の噛む力を鍛えるなどさまざまな効果がありますが、実は海馬にとっても良い影響があります。

よく噛むことにより、海馬が刺激されて、その活性が高まるという研究結果が動物実験などで出ており、注目されています。また高齢化が進む日本社会の中で認知症を予防する観点から咀嚼と脳機能の研究が多数されています。

ご飯をよく噛んで食べることは体にも脳にとっても良い影響のあるしつけだと言えるでしょう。

子供の海馬の成長には「親の愛情」が何より大事

子供の海馬の発達にとって良いこととして、さまざまな方法をご紹介してきました。しかし、子供の海馬の成長にはどんな方法よりも「親の愛情」が大切です。ワシントン医科大学のJoan Luby博士らの研究内容が掲載された「How a Mother’s Love Changes a Child’s Brain」という記事によると、親からの愛情を十分に受けて育った子供は、そうでない子供と比べて、海馬の大きさが10%近くも大きかったという結果が出ています。

海馬は環境の変化や、その中で感じられる気持ちによって成長していきます。子供にとって親の愛情は不可欠です。さまざまな体験をさせることと共に、子供の話をきちんと聞いてあげたり、子供と向き合う時間を親が増やして愛情を注いであげることが、子供の心や脳にとって何より大事なことです。

子供を育てて教育する上で、親がきちんと「愛情」を注いであげることを意識してください。

参考
海馬から大脳皮質への記憶の転送の新しい仕組みの発見|理化学研究所
音楽の脳内処理|高次脳機能研究
Exercise training increases size of hippocampus and improves memory|Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
A neuroimaging investigation of the association between aerobic fitness, hippocampal volume, and memory performance in preadolescent children|Brain Research
高次機能-知能の発達|バイオメカニズム学会誌
脳と記憶のメカニズム| 教えて!認知症予防
虐待で子供の脳にダメージ 3才は海馬、10才は脳梁に|まなナビ
Music lessons spur emotional and behavioral growth in children, new study says|The Washington Post

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