そもそもディベートって何?
ディスカッションとの違いとは
よくディベートと混同されるのが、ディスカッションです。ディベートとディスカッションの違いは、簡単に言えば、そもそも前提のテーマ設定が異なる点です。
ディスカッションは、テーマの「5W3H」を話し合います。5W3Hとは、「When(いつ)」「Why(なぜ)」「What(何を)」「Who(誰が)」「How(どのように)」「How many/How much(どのくらい、程度)」のことです。
例えば、「来年の家族旅行はどこにいくか?」「2020年にはどんな社会保障が必要なのか?」「AI時代に企業が生き残るためには?」といったテーマが挙げられます。ディスカッションのテーマは、なるべく参加者全員が意見を言いやすいものが望ましいでしょう。そのため、最初には抽象度の高いテーマを設定する場合が多いです。ただし、抽象度が高すぎると意見を具体的に掘り下げていくのが難しいかもしれません。
ディベートのテーマは、意見の対立が前提です。「外国人労働者を受け入れるべき」「原子力発電所を廃止すべき」「沖縄の基地を移転すべき」といったテーマに対して、賛成派と反対派に分かれて議論を進めます。
お題は簡単なものでOK
ディベートのテーマは、主に「価値論題」「政策論題」「推定論題」の3種類に分かれます。
「価値論題」は、価値観を対比させるテーマです。価値論題は、一見ディベートしやすいテーマのように思えますが、個人的な価値観ではなく、価値観の高低、善悪を議論します。そのため、議論の幅が広がりすぎて、答えも増え、結論をまとめられない可能性も。価値論題では、「ご飯とパン、日本の朝食ならどっち?」「ペットで飼うなら、犬と猫どっち?」「夏に遊びに行くなら、海と山どっち?」などのテーマが挙げられます。
「政策論題」では、国の政策となるさまざまな法案などについて、議論します。ディベートでは、最もポピュラーな論題です。「消費税増税すべきか?」「救急車の利用を有料化すべきか?」「道州制を導入すべきか?」などが挙げられます。政策のメリット、デメリットを議論します。
「推定論題」では、物事や是非や真偽を検証していくものです。自由に議論できる一方で、議論の内容が幅広くなり、結論を導き出すのが難しい側面があります。具体的には、「学校に制服が必要かどうか?」「AIやロボットが人類を攻撃するか?」「幽霊は存在するのかどうか?」などです。
3種類のテーマをお伝えしましたが、子供が実践するディベートでは、簡単なテーマが望ましいでしょう。政策議論は、人気のテーマですが、知識のない子供が最初から話すのにはハードルが高いと感じてしまうかもしれません。価値論題のように、身近なテーマから始めて、まずは話す練習からスタートしてもいいでしょう。
どのような能力が必要か
ディベートで求められる能力には次の4点があります。
まず、理解力です。議論する前提として、テーマの背景を理解すること、相手の発言内容や意図を理解する必要があります。自分の言いたいことだけを何度も主張するのは、議論といえません。理解力には、相手の主張を適切に理解して、必要に応じてメモを取ることもポイントになります。
次に、分析力です。批判的思考力ともいえます。相手の主張を理解した後に、そのまま鵜呑みにすれば、そこで議論は終わってしまいます。
ですが、相手の主張をよく吟味してみると、誤りや矛盾が見つかります。相手の主張を全面的に受け入れるのではなく、主張内容が十分に根拠を持っているかを客観的に分析する力が必要です。根拠を分析するだけでなく、相手の主張と自分の主張と共通点と相違点を明らかにして、なぜ相違点が起こるのか分析しながら、自分の主張を納得させられる能力が必要でしょう。
3点目は、構成力です。相手の主張の誤りや矛盾を指摘する際、自分の主張を伝える際には、分かりやすく、説得力を持つように構成する能力が必要です。構成力には、議論の組み立て方、表現の仕方などを適切に行う能力も含まれます。
最後に、伝達力です。論点や構成力がしっかりとしていても、早口や棒読みになってしまう、一方的に話してしまっても、相手や周りに内容を適切に伝えることはできないでしょう。「伝える」と「伝わる」は、違います。相手にしっかりと伝えられる伝達力もディベートに求められる能力です。
これらの能力は、ディベートに必要ではあるものの、最初から子供がすべて身につけておくのは難しいもの。実践を通して少しずつ身につけていくことが望ましいでしょう。