ピアジェが唱えた認知発達理論について
ピアジェが提唱した「認知発達理論」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。ピアジェは、知的能力の発達は「認知構造」と「認知操作」に違いがあるとして、年齢ごとに4つの発達段階に分けています。この4つの発達段階には個人差があるため、年齢の差が生じる可能性はありますが、発達の順番に関しては普遍的かつ絶対的であるとピアジェは唱えています。
子供には4つの発達段階がある
例えば、生まれたばかりの乳児は自我の意識を持っていないため、主体と客体を区別することが出来ない状態にあると言えます。ピアジェは、乳児期には乳児期の発達段階が、幼児期には幼児期の発達段階がそれぞれ存在し、認知発達にも段階があることを提唱しています。それでは子供の4つの発達段階について具体的に見ていきましょう。
感覚運動期(0~2歳)
生まれてから2歳ごろまでの子供は、物事を認識する方法として、物を見たり、触ったりするなど、自分の感覚をとおして受け止め、認識していきます。手を広げてみたり、体を動かすなどの動作を行い、「自分と物」、「自分と他者」に対する区別が不十分な状態からスタートしていくものの、感覚と体の動きをとおして次第に対象物を認識するようになります。
ピアジェはあるシンポジウムで感覚運動期の子供について以下のように述べています。
さて、幼児においては、明らかに言語の出現以前から知能的な行為が存在するが、本来の意味でのことばとか思考といったものはまだ存在しない。それゆえ,こうした知能は本質的には運動によって働く、ということを認めなければならない。このような意味で、私たちは運動的知能と呼んでいるのである。このような知能の形態は、幼児の思考の発達にとってかなり重要な意味をもっている。
(引用元:ピアジェを読み直す:知能の誕生|大浜 幾久子)
前操作期(2~7歳)
2歳を過ぎると子供は急速に言葉を話すようになります。言葉を話すことで、自分で考えたり行動することができるようになります。しかし、論理的な思考が不十分であるため、自己中心的になったり、アニミズム的思考、すなわち、生命のない対象物に対し、「それらはすべて生きていて意識のある存在である」という考えを持つ傾向にあります。
ほかにも、ままごと遊びなどの象徴活動や、見かけに惑わされやすいといった特徴もこの時期特有のものと言えます。
具体的操作期(7~12歳)
前操作期の子供は直観的思考が働くため、例えば10個のコインの並び方などの見た目によって、数が多いと思ったり少ないと思ったりします。しかし、具体的操作期の子供は、コインの並び方に関わらず、コインが10個であると理解できるようになります。
見かけに左右されない論理的な思考が可能になる、いわゆる「保存性」の概念を持ち、論理的な思考ができるようになることが、具体的操作期の大きな特徴といえます。
形式的操作期(12歳~)
ピアジェが提唱した子供の認知発達における、4番目の「形式的操作期」では、抽象的かつ形式的に物事を考えることが可能になり、抽象的な問題解決や推論も行うことができるようになります。例えば、テスト問題などで、「神が~した」という例題が出てきたとしても、内容が現実かどうかに関わらず、物事を論理的に考えることができるようになります。
ピアジェの認知発達理論は教育法にも活用
これまで述べてきたピアジェの認知発達理論ですが、子供の教育法にも活用することができます。ピアジェは知識を詰め込む教育ではなく、子供自ら体を使ったり、周りと関わっていくことで生まれる「相互作用」こそが、子供の自立性や積極性を生み出すと考えていました。では、実際に家庭で実践できるピアジェ教育について見ていきましょう。