2005年の制定以来、保育園や幼稚園、小学校などでも食育活動が取り組まれています。今回は、食育基本法の背景や、食育基本法の主な内容、家庭でもできる食育の取り組み方について紹介します。
もくじ
食育基本法制定の背景
食育基本法とは、私たち1人1人が「食」についての知識を持ち、栄養バランスの良い食生活を選択することができるよう、食育教育を推進するために制定された法律です。
そんな食育基本法制定の背景には、食文化の多様化によるさまざまな課題が関係しています。今回は、食育基本法の背景にあるさまざまな問題や、食育基本法の主な内容、家庭でもできる食育の取り組み方について紹介します。
「食育」の推進として制定された
食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。
(引用元:食育の推進|農林水産省)
食は私たちが生きていく上で大切な要素です。栄養バランスの整った食事を心がけ、食に対する知識や農作物を栽培している農家の方への感謝の気持ちを持つことで、食の大切さを実感することができます。近年では、朝食を食べない子供が増え、肥満などの生活習慣病の発生など、食と健康の問題が課題となっています。
ファーストフードの普及や農薬残留問題など、食に対するさまざまな問題を解消するべく、食育の推進として食育基本法が制定されました。
食料ロスの問題
食べることに問題のない食材を破棄する「食品ロス」は、日本において深刻な問題とされています。海外から多くの食べ物を輸入しているのに捨ててしまうのは、日本の経済にとってもあまり良いことではありません。また、このような食品ロスは、食品メーカーや飲食店だけでなく、家庭でも発生していると言います。
家庭においても食品ロス全体の約半数にあたる年間約302万トンが発生しています。食材別にみると最も多いのは野菜、次いで調理加工品、果実類、魚介類です。
(中略)
家庭から出される生ごみの中には、手つかずの食品が2割もあり、さらにそのうちの4分の1は賞味期限前にもかかわらず捨てられているものです。
(引用元:もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう|政府広報オンライン)
カビが生えてしまったり、鮮度が低下してしまったりといった原因から、まだ食べることができる食材でも破棄してしまうケースが多く発生しているようです。
ジャンクフードの普及
親が共働きで忙しい家庭では、夕食をコンビニやファミレスなどで済ませるケースも少なくありません。外食が続いてしまうと、栄養バランスの偏った食生活になってしまうだけでなく、食べることに楽しさを感じる機会も減ってしまいます。
栄養バランスの良い食生活を送ることは、健康を考える上でも大切なことです。ジャンクフードばかりの食生活になってしまうと、生活習慣病などの発生につながってしまいます。
和食の衰退
「和食」は世界無形文化遺産に登録されています。しかし、家庭の食卓において、和食を選択する機会が減少傾向にあると言います。和食というと、米を中心とした野菜や魚などのたんぱく質が主とされているほか、味噌や醤油などの日本独自の調味料を使用していますが、海外からの輸入品や、アジア料理、ファーストフードなど、食の多様化により味覚が変化し、偏食や栄養バランスの変化といった問題が新たに発生しています。
和食を食べることで地産地消につながり、地元食材への感謝の気持ちを持つことにつながります。食文化の多様化による和食の衰退は、食育を考える上でも重要な課題の1つです。
こ食の問題
「こ食」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。こ食とは、1人で食事をする「孤食」、家族がいてもそれぞれが好きなものを食べる「個食」、好きな食材のみを食べる「固食」、パンやパスタなどの粉製品を主食とする「粉食」、少量しか食べない「小食」、加工食品などの味付けの濃いものを食べる「濃食」の意味を含んでいます。
このような食生活が続くことで、食材の好き嫌いが増えてしまったり、栄養バランスが偏ってしまったり、発育に必要な栄養が取れずに生活に支障をきたしてしまうなど、生活習慣病の増加へとつながってしまいます。特に問題視されているのが、「個食」といわれており、いつも自分の好きな食事ができる環境に慣れてしまうことで、協調性がない性格になってしまうことが懸念されています。
食育基本法の背景にはこうしたさまざまな食に対する問題があり、私たちは改めて食に対する意識を変える必要があることが分かります。