アメリカにはさまざまな学校の在り方が存在し、日本とは異なる教育が行われています。マグネットスクールと呼ばれる形態もその1つ。言葉を聞いたことがないという方も多いでしょう。
この記事では、アメリカのマグネットスクールについてご紹介します。日本とアメリカの教育の違いもまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
マグネットスクールとは?
日本の公立学校は、一般的に住んでいる地域ごとに通う学校が決められています。学区という言葉があるように、よほどの理由がなければ決められた学校へ入学しますが、アメリカでは、学区を超えて広範囲に住む子供たちが入学可能なマグネットスクールというものがあります。ここでは、マグネットスクールとはどのようなものか、その内容をご紹介します。
マグネットスクールの概要
日本のように決められた学校へ通うことを、アメリカではネイバーフッドスクール(近隣学校)といいます。それに対してマグネットスクールとは、教育方針や内容に特化したものがあり、その教育を受けるために広範囲の学区の子供たちが入学できる学校のことをいいます。学校全体がマグネットスクールである場合と、ネイバーフッドスクールの中でマグネットプログラムを採用している学校と2つの種類があります。
マグネットスクールの歴史
マグネットスクールが誕生した背景には、人種差別・格差社会など、アメリカの抱える社会問題が大きく影響しているといいます。特定の人種にこだわらず、人種分離をなくそうという考えのもとに生まれたのがマグネットスクールです。
アメリカでは、20世紀半ばまで白人と黒人の通う学校が分けられていました。裕福な白人の保護者だと他人種の少ないほかの地域に移る傾向があり、これはホワイト・フライト現象と呼ばれ、格差が浮き彫りとなっていました。
そこで、さまざまな特殊技能を持つ子供たちを対象とした特別なプログラム(後のマグネットプログラム)を導入したところ、子供たちが「通いたい」と思える学校が誕生しました。これがマグネットスクールの発祥といわれています。
マグネットスクールの抱える問題点
アメリカの公立校は、ほとんどの州で学区ごとに独立し、予算やカリキュラムなどの運営を行っています。裕福な家庭の多い地域では、親が積極的に学校運営に関わり、予算も潤沢にあります。
しかし所得の少ない人々が住む地域では、保護者が学校に関わる比率も低く、予算を確保することが厳しい状況にあります。そのため、裕福な家庭の多い地域と所得の少ない人々が住む地域との経済格差が浮き彫りとなっており、マグネットスクールが抱える最大の問題点として対策が待たれています。