子供が偏食気味だったり、病気などによって食事ができなったりすると、健康面が心配になるものです。特にビタミンは体内でほとんど作ることができないため、食物からの摂取が必要となります。現代では、「ビタミン欠乏症」は少なくなっているとはいえ、無理なダイエットや不規則な生活などから、「潜在的なビタミン欠乏症」になるケースが増えているようです。
ビタミン不足の症状は、ビタミンの種類によってさまざま。当記事では、ビタミンAについて取り上げます。ビタミンAが不足するとどうなるのか、症状からおすすめの摂取方法までまとめましたので、参考にしてください。
もくじ
ビタミンAの基礎知識
ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。ビタミンAは多くの食品に含まれている「脂溶性(しようせい)ビタミン」です。レバーやウナギなどに多く含まれることで知られています。
ビタミンAの主な働きは次のとおりです。
- 皮膚や粘膜を健康に保つ
- 暗順応(暗い中で視力を保つ、暗い中で目が慣れる現象)
- 抵抗力を上げる
そのほか、ビタミンAには「がんの発症を抑える」「成長促進作用がある」とする研究結果もあります。ビタミンAについては、こちらの記事で詳しく解説されていますので、参考にしてください。
参考
ビタミンA欠乏症とは?
ビタミンA欠乏症とは、ビタミンA不足によって引き起こされる症状を指します。ビタミンAは食物によって摂取されるため、食事や栄養の水準が高い日本や先進国ではほとんど見られません。ビタミンA欠乏症が多く見られるのは、東南アジアなどの発展途上国です。
しかし、以下のような場合は、先進国においてもビタミンA欠乏症の発症が起こり得るとされています。
- クローン病
- 原発性胆汁硬化症
- そのほか、栄養吸収に障害を起こす病気
ビタミンA欠乏症の症状については、次の章で詳しく説明していきます。
重症化すると失明も!夜盲(やもう)症
夜盲症とは、暗いところで目が見えにくくなる症状です。夜盲症は放置すると、角膜が乾いて鱗(りん)状に変性し、潰瘍(かいよう)が作られます。夜盲症は重症化すると、失明に至る恐ろしい病気です。
ビタミンA欠乏症はアフリカや東南アジアを中心に世界118カ国において公衆衛生的問題とされており、特に発症のリスクが高いのは途上国の乳幼児と妊婦である。およそ1~1億4千万人の子どもがビタミンA欠乏状態にあり、うち例年25~50万人が視力を失い、更にその半数は失明後1年内に命を落としていると推定される。
(引用元:3. ビタミン A 欠乏症,P18|JICA)
生殖作用へ悪影響を及ぼす
ビタミンAは生殖機能に関与し、その維持に必要なものです。そのため、ビタミンA欠乏症になると、生殖作用の維持に悪影響が出るとされています。
<ビタミンA欠乏症による生殖作用への悪影響>
- 卵巣の成長や卵子の形成障害
- 精子の形成障害
- 生理不順
- 性腺(せいせん)萎縮
生殖作用への悪影響が不妊症につながるとする指摘もあります。
粘膜の角質化で免疫機能が低下
ビタミンA欠乏症になると、皮膚や粘膜の角質化(角化)が起こります。ビタミンAの働きとして挙げていた「皮膚や粘膜を健康に保つ」が、真逆に作用するのです。角質化とは、皮膚が乾いてうろこ状になったり、組織が硬くもろくなったりすることをいいます。体内には、のどや鼻、内臓など、たくさんの粘膜がありますから、粘膜が角質化する場所によって、かかりやすい病気は異なります。以下に一例を挙げますので、参考にしてください。
角質化する場所 | かかりやすい病気や症状 |
気道 | 細菌やウイルスの感染による気管支炎 |
泌尿器 | 膀胱炎・尿路感染症 |
胃腸 | 食欲不振・消化不良・栄養成分の吸収障害 |
また、ビタミンA欠乏症になると、免疫機能が低下し、感染に弱くなると考えられています。
参考
胎児や子供の発育へも影響する
妊娠中の場合、ビタミンA欠乏症は、胎児の発育にも影響を及ぼし、発育・形態異常が起こりやすくなるとされています。消化管の粘膜が角質化すると、栄養成分がうまく吸収できなくなるため、子供の発育障害を引き起こす可能性があります。