賛否両論!青少年健全育成基本法の問題点と影響とは? - cocoiro(ココイロ)

2018年に法案が出され、今後も成立する可能性がある「青少年健全育成基本法(青健法)」は、いったい何が問題なのでしょうか。当記事ではこの法案の内容や問題点、法案が成立した場合に考えられる影響について解説していきます。

青少年健全育成基本法とは?

青少年健全育成基本法を4つのポイントに分けて解説していきます。

有害情報から子供を守る

私たちを取り巻く環境には、有益・無益、有害・無害に関わらず、さまざまな情報があふれています。青少年健全育成基本法は、「有害情報が子供に与える影響」を非常に問題視しています。それでは、「有害情報」とはどのようなものなのでしょうか。2018年に提出された「青少年健全育成基本法の制定に関する請願」から読み解きます。

十代の少女四人を含む九人が犠牲になった神奈川県座間市における連続殺人事件は、青少年を取り巻く社会の病理があらわになった戦後史最悪の猟奇事件である。背景としてあったインターネット・スマートフォン等のネット社会がもたらす新しい有害情報・有害環境の出現に対し、厳しく対応が求められなければならない。また、地域社会においては、露骨な性描写や残虐シーンを売り物にする雑誌、ビデオ、コミック誌等を始めとする性産業の氾濫、テレビの有害番組の問題等も言うに及ばない。

(引用元:請願 第196回国会 請願の趣旨|参議院

露骨な性描写や残虐シーンがある雑誌、マンガ、ビデオなどについて言及している一方、テレビについては「有害番組の問題など」とするにとどまっており、さまざまな解釈ができる表現になっています。

現行法「子ども・若者育成支援推進法」の一部を改正

青少年健全育成基本法は「子ども・若者育成支援推進法の改正案」として、名前や条文を大幅に書き換えたものということをご存じでしょうか。「表現の自由を守る会」代表で前衆議院議員の山田太郎氏によると、青少年健全育成基本法は「子ども・若者育成支援推進法」のほとんどの条文が変更になっていると言います。その割合はなんと8割だそう。改正理由は以下の通りです。

次代を担う青少年を健全に育成していくことが我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎であることに鑑み、青少年の健全な育成という観点から、子ども・若者育成支援推進法について、題名の改正、基本理念の見直し、保護者、国民及び事業者の責務の追加、施策の拡充等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(引用元:子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案|衆議院

参考

【第293回】マンガ・アニメ・ゲームを規制する青健法が今国会に提出!?【前参議院議員山田太郎のさんちゃんねる】|YouTube

5度目の正直?再び国会提出へ

青少年健全育成基本法は、これまで4度作成されています。流れを簡単にまとめました。

年度 法案名 結果
1999年 青少年社会環境対策基本法案 国会提出断念
2004年 青少年健全育成基本法案 審議未了で廃案
2009年 青少年総合対策推進法案 別法案として成立※1
2014年 青少年健全育成基本法 審議未了で廃案

※1 ニートや引きこもりの若者らの自立支援を柱とした「子ども・若者育成支援推進法」として成立

青少年有害社会環境対策基本法案|Wikipediaをもとに筆者作成)

2014年に廃案となった法案は、2009年に成立した「子ども・若者育成支援推進法」の改正案として提出されました。基本理念を含めて全面的に書き換えた「まったく別の法律」でしたが、廃案となっています。今後法案が可決され成立するとなれば、まさに「5度目の正直」になります。

参考

『青少年健全育成基本法とは』(平成30年3月9日朝刊)東京新聞

青少年有害社会環境対策基本法案|Wikipedia

まだどのような法案になるかは分からない

現段階では、「あくまで提出する見通し」というあいまいな状態です。提出される法案の内容が、どのようなものになるかは分かっていません。しかし、2014年の改正案では、自立支援にあたる条文が大幅に削除される一方で、以下のような条文が追加されました。

第二条 青少年の健全な育成については、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員がそれぞれの役割及び責任を担いつつ、相互に協力しながら一体的に取り組まなければならない。

(引用元:子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案|衆議院

この条文はもちろん、そのほかの追加条文も国民や学校、地域社会や企業への「青少年の健全な育成を行う義務」の色が目立ちます。現行の「子ども・若者育成支援推進法」とは、ほぼ別の内容の法案と言えるでしょう。