怖がりで何をするにも消極的な子供や、他愛もないことで泣きだす子供がいます。そんな子供たちは何に怖がっているのでしょうか。大人になって忘れてしまった子供の恐怖対象と、その理由を解説します。そして、子供の怖がりを克服するために、親としてできる対処法をご紹介します。ぜひ、心の弱っている子供に寄り添って「恐怖」を受け止めてあげてください。
子供が怖がるものと怖い理由
「幼児期における恐怖対象の発達的変化」について検討した三重大学教育学部の論文では、子供が恐怖する対象物を一般的に次の5つに分けました。
【一般的な5つの恐怖対象】
- 注射
- お化け
- 動物・虫
- 暗闇
- 幽霊
その上で、怖いと回答した理由は大きく9つに分けられると説明しています。
【恐怖理由の9分類と具体的回答例】
- 身体的苦痛:「痛いから」「チクッとするから」など
- 感情:「怖いから」「ちょっと怖い」など
- 外見:「口が大きいから」「骨だから」「目が怖い」「歯が怖い」など
- 危害:「食べられそうだから」「噛むから」など
- 不意の出現:「突然出てくるから」「何かが出てきそうだから」など
- 不利益な状況:「暗いから」「見えないから」など
- 経験:「見たことあるから」「出てきたから」など
- その他:上記の 7つ以外
- 無回答:無回答または「わからない」
以下では、三重大学教育学部の富田昌平教授の行った「幼児期における恐怖対象の発達的変化」の研究論文をもとに恐怖対象を4パターンに分類し、恐怖を感じる理由の傾向を解説します。
参考
三重大学教育学部研究紀要 第68巻 教育科学(2017)129-136頁 幼児期における恐怖対象の発達的変化|三重大学学術機関リポジトリ 研究教育成果コレクション,P132
【生物系】ヘビや昆虫など
において、ヘビ・昆虫などの動物や虫を怖がる子供の多くが、怖いと感じる理由に外見と危害の可能性を挙げました。
子供は絵本やテレビ、親からのお話などで動物や昆虫に対する知識を増やしていきます。そして外の世界で出会い、経験を積みます。そのため、知識や経験として動物や昆虫に悪い印象を抱いていると、怖がるようになると推察されます。
【環境系】高い所、暗闇など
大型遊具・真夏のアスファルトなどの日中過ごす場所や、暗闇・夜といった遅い時間帯に感じる恐怖の理由としては、不利益な状況や不意の出現を挙げました。
子供は自分にあった嫌なことを記憶しており、また同じような状況になったときに不安や恐怖心を抱きます。また、謎めいてはっきりと正体がつかめないものに対して恐怖を感じると考えられます。
【外傷系】注射や血など
注射や血などの外傷については、恐怖の理由に身体的な苦痛が挙がりました。
子供は小さいころにたくさんの予防注射を受ける必要があるため、病気でもないのに痛い思いをする経験をしています。必要であることを理解できない子供にとって、注射は恐怖でしかありません。
また自身やお友達が怪我をしたときに血を見ると、身体的な痛みを感じたり、過去の経験から友達の痛みに共感してしまい恐怖を感じることがあります。
そのため、注射や血などは自身の痛みの経験を思い出して恐怖を感じると推察されています。
【空想系】お化けや幽霊など
お化けや幽霊などに感じる恐怖の理由は、年齢が低いころはその外見が怖いという回答が多いのですが、成長するにつれて不意の出現が怖いと回答する意見が増えています。恐怖の原因は次のように推察されます。
お化けも科学的に検証不可能であるという点で、魔術的現象の一群と見做すことができる。謎めいて不明瞭であるが故に、子どもも大人も、言い知れぬ恐怖をそれに対して抱くのである。
(引用元:三重大学教育学部研究紀要 第68巻 教育科学(2017)129-136頁 幼児期における恐怖対象の発達的変化|三重大学学術機関リポジトリ 研究教育成果コレクション,P135)
子供に限らず大人も、知らないことや経験のないことについて言い知れない恐怖を抱く点では共通しています。