子供の恐怖心の特徴
子供は、知識や経験値が少ないがゆえに恐怖を抱くことが多くあります。そのため、子供の恐怖心にはいくつかの特徴が見られます。
特徴1:子供が成長するにつれて怖がるものが減っていく
富田教授の研究によると、保育園の年中児は、年少児や年長児よりも怖がる傾向や恐怖の程度が男女ともに低くなることが分かりました。
1~3歳で怖かったものが成長するにつれて怖くなくなりますが、4~6歳で新たに怖がるようになったと多くの保護者が回答したのが「1人でいること・親と離れること」だったと書かれています。これは、子供が保育園への入園と共に母親が働き始めるために、家で子供と過ごす時間が少なくなったことが原因だとも言われています。
つまり、子供が成長するにつれて怖いものの全体数は減っていくものの、生活環境が変化することで新たに怖いものが増えるということです。
特徴2:女の子は男の子よりも怖がり
女の子は男の子よりも恐怖の対象物が多く、また恐怖の度合いが強いことが三重大学の調査で分かっています。
その中でも特に言及されているのが「初対面の人や、行く場所、遭遇する事象に対する恐怖」で、その理由は次のように推察されます。
一般的に女児は男児よりも共感性が高く、人間関係により関心を持つ傾向にあるため(Baron-Cohen,2003/2005)、人間関係に困難さを感じた時に恐怖や不安の対象になり易かったのかもしれない。
(引用元:三重大学教育学部研究紀要 第68巻 教育科学(2017)129-136頁 幼児期における恐怖対象の発達的変化|三重大学学術機関リポジトリ 研究教育成果コレクション,P134)
一般的に女の子は敏感な子供が多く、空気が読めると言われますが、その分、男の子よりも怖いと感じることが多いようです。
特徴3:年齢が上がるにつれて想像系の恐怖が増す
子供は3歳ごろになると「お化け・動く人形・テレビの怖いキャラクター」を怖がらなくなり、4歳以降に「暗闇、夜、想像上の怖い物、死、幽霊」を怖がるようになります。
これは子どもによるお化けのイメージが発達的に深まりと広がりを見せていく中で、具体的にイメージすることのできる対象物(妖怪や怪物など)は次第に実在性の観点から恐怖対象から外れていき、具体的にイメージすることの難しい対象物(幽霊や死など)が恐怖対象の中心を占めるようになってくるためなのかもしれない。
(引用元:三重大学教育学部研究紀要 第68巻 教育科学(2017)129-136頁 幼児期における恐怖対象の発達的変化|三重大学学術機関リポジトリ 研究教育成果コレクション,P134)
子供は、経験によって具体的に恐怖の正体を暴けるものを怖がらなくなります。その分、未経験であったり、謎めいていて不明瞭な事象については、成長するにつれて恐怖の度合いが強くなる傾向にあります。
子供の怖がりを克服するために親ができる4つのこと
子供の恐怖対象や恐怖の理由について正しく見極めることができたら、具体的に親としてどのような対処をすれば子供から恐怖心を取り除いてあげることができるのか考えていきましょう。
対処1:恐怖のインプットをしない
子供が言うことを聞かないときに、怖がらせて言うことを聞かせようとしてはいけません。
「鬼」や「お化け」などの恐怖症になりやすい対象は、しつけのときに使うと、ほぼ100%悪い方に転じます。たとえはじめのうちは効果があっても、時間が経てば、その即効性もなくなり、やがては悪影響のみが残ります。結果的に、子どもの自立や行動範囲を狭めてしまうのです。
(引用元:ママの「鬼くるよ」発言は逆効果!子どもの怖がりが加速する!?|SHINGA FARM)
特に未就園の子供は、親からの知識でほとんどの物事を判断して過ごします。そのため、躾と称して恐怖心で支配してしまうと、子供はそれを鵜呑みにしてしまい、成長しても自立できなくなってしまいます。
そのため、子供が言うことを聞かずに予定通りの行動ができなかった場合は、感情的に脅すのではなく、冷静に親の真意を説明し、「なぜダメなのか」という話を理解させるようにしましょう。
対処2:勇気づける
「勇気づけの心理学」と呼ばれるアドラー心理学は、原因(過去)を知ろうとすることよりも目的(未来)に意識を向けさせるようなコミュニケーションを重視しています。
子供の怖がりを克服したい場合、緊張したり恐怖を感じる原因を探り責めるのではなく、まずは恐怖を感じていることをしっかりと認識させて思考と感情を一致させましょう。そして、怖いという感情は悪いことではないと理解させ、それでも頑張って克服できるように挑戦するような声掛けをしましょう。
具体的には、恐怖心があまりないものから徐々に「本当は怖くない」という成功体験を積み重ねていくといいでしょう。そうすることで子供の自己肯定感が高まり、自信を持つことにつながっていきます。
対処3:気づいて共感してあげる
大人にとっては怖くないものでも、子供が怖いと思う感情を止めることはできません。恐怖心を無理に止めようとする弊害について、ベネッセ教育情報サイトで親野智可等氏は次のように述べています。
怖い気持ちや泣きたい気持ちを無理に抑えると、恐怖によるストレスが別の所に出てしまいます。恐怖を押さえつけていると、その反動で怒りの感情が強まり、攻撃的になると言われています。
(引用元:とても怖がりな子[教えて!親野先生]|ベネッセ教育情報サイト)
子供が恐怖を感じていることをしっかりと受け止め、共感してあげましょう。恐怖でパニックに陥る子供の場合は、抱きしめて体の反応を止めてあげることも効果的です。
子供は親に共感してもらうだけで精神的なつながりを感じ、穏やかな気持ちを持つことができるようになります。
対処4:見守る
親が子供を手助けするのは至極当然のことですが、恐怖心を克服するには子供同士で協力して解決していくことも必要です。
とりわけ、虚構と現実の区別の認識が未分化な 4歳以前の子どもにおいては、大人による適度な援助や介入を得ながら、また虚構と現実の区別の認識が分化する 5歳以上の子どもにおいては、子ども自身が主体的かつ積極的に仲間と協同し合いながら、迫りくる様々な困難(大人による怖がらせ)を乗り越えていくという方法及び展開が望ましいであろう。
(引用元:三重大学教育学部研究紀要 第68巻 教育科学(2017)129-136頁 幼児期における恐怖対象の発達的変化|三重大学学術機関リポジトリ 研究教育成果コレクション,P135)
親は子供が成長するのを勇気づけ、共感することで手助けするだけではなく、子供自身が自分の力で恐怖を乗り越えていく姿をただ見守るという姿勢も大切であることを意識しておきましょう。