子供が縄跳びを始めるのは、保育園や幼稚園での遊びがきっかけになる場合が多いのではないでしょうか。家でも休みの日に、失敗を繰り返しながら一生懸命練習しているかもしれません。子供がなかなか上手に跳べない時、親はどのように教えたらいいのでしょうか? スポーツの専門家でも幼児体育の指導者でもない、親ができることとは? 縄跳びの指導について、理論と実践を学んでみましょう!
子供は縄跳びのどこでつまずくの?
縄跳びは複雑な運動
子供時代を振り返ってみると、親自身も跳び方を覚えるまでに四苦八苦した思い出がよみがえるかもしれません。縄跳びを習得するのが難しいのは、縄跳びという運動そのものが、実は難しいからです。
体育史や教育学の研究者である三井登氏は、先行研究を紹介しながら、縄跳び運動の難しさについて次のように述べています。
短縄跳び運動の運動課題は、「両足でジャンプしながら自分の手でなわをまわすという、幼児にとっては極めて複雑な構造を有した」点にあり、「足でジャンプする感覚と腕でなわを操作する感覚を同時に協調させなければならない」という運動特質がある。
(引用元:三井登(2013年)『幼児期の運動遊びにおける指導法の課題』帯広大谷短期大学紀要 No.50)
では、子供は実際に縄跳びの動きのどこでつまずくのでしょうか。いくつかの研究報告から、そのポイントをピックアップしてみましょう。
つまずきポイント①:縄の回し方のコントロール
最初のポイントは、「縄を回すのがうまくできない」という点です。
・構えの姿勢で「にぎり」を肩にかついでしまう ・縄が連続して回転しない ・親指が外側を向いていないので、腕の回転、縄の回転がスムーズにいかない |
参考
丸山政敏ら(1990年)『教育・保育現場における幼児のなわとびを中心とした段階的学習に関する一試案(第二報告)』日本保育学会大会研究論文集(43)
・腕の動きが縄に伝わらず体にひっかかってしまうため、縄を体の前に持ってくることができない |
参考
青野光子(2000年)『幼児のなわとびにおける形態的特徴と指導・援助方法』日本体育学会大会号(51)
つまずきポイント②:縄を地面に叩きつけてしまう
ポイント①に挙げた縄の回し方の一つの特徴でもありますが、上手にできない子供には、縄を回すのではなく叩きつけてしまうという動きも見られます。
・縄を回すというよりも、地面に叩きつけてしまう |
参考
丸山政敏ら(1990年)『教育・保育現場における幼児のなわとびを中心とした段階的学習に関する一試案(第二報告)』日本保育学会大会研究論文集(43)
・腕の振り下ろしが強く、上体の傾きとともに全身で縄を打ち下ろしてしまうため、縄が跳ね返ってしまい、跳び越すことができない |
参考
青野光子(2000年)『幼児のなわとびにおける形態的特徴と指導・援助方法』日本体育学会大会号(51)
つまずきポイント③: 縄と足の協調動作がうまくいかない
最も難しいのは、縄を回しながらジャンプするという、腕と足の協調運動です。
・縄を回すのと同時に、ジャンプしてしまう ・ジャンプした後にすぐにしゃがんでしまう ・縄を振り上げると同時にジャンプしてしまい、縄を跳び越すことができない ・縄の回転が終わった後に床にある縄を跳び越す、というように、動作が分離している |
参考
丸山政敏ら(1990年)『教育・保育現場における幼児のなわとびを中心とした段階的学習に関する一試案(第二報告)』日本保育学会大会研究論文集(43)
青野光子(2000年)『幼児のなわとびにおける形態的特徴と指導・援助方法』日本体育学会大会号(51)
佐々木玲子(1992年)『なわとび運動の動作特性と習熟過程』日本体育学会大会号(43B)
この「協調がうまくいかない」という点について、運動のメカニズムから分析したのが豊田泰代氏らの研究です。
豊田氏らは、子供が一般的に運動する際、上方へのジャンプとともに腕を振り上げる動きが出てくることを指摘しています。縄跳びでは、腕を振り下ろしながらジャンプするという、まったく逆の動きをします。そのため縄跳び運動は、子供にとっては自然に習得できない、できるまでに苦労と時間を要する運動なのです。
参考
豊田泰代ら(2007年)『運動発生に基づく伝承論-幼児の短なわとび運動-』日本体育学会発表資料, 体育方法09-5-K401-7