創造性、主体性、共同性が育つ教育方法として、現在世界中で大きな注目を浴びているレッジョ・エミリア教育。その独特な教育アプローチについては世界各地の教育者も、興味をもち積極的にその方法を取り入れようとしています。キーワードは「芸術」。さまざまなアプローチ法についての説明とその教育で育つ能力について、ご紹介していきます。
もくじ
レッジョ・エミリア教育とは
一般的に教育法には考案者の名が付くことが多いのですが、この教育にはイタリア北部の小さな町の名前が付いています。なぜ町の名前が付いているのでしょうか。第二次世界大戦後、イタリアで初めての公立幼稚園が作られましたが、その設立資金は村の農民達が軍事用車両を売って工面したものでした。幼稚園設立によって子供への教育の関心は高まり、その後の教育革新を推し進めることになる人物ローリス・マラグッツィが現れます。彼は子供の個性を最大限に伸ばす教育法を説き、その理念をつづった自作の詩『子供達の100言葉』を手に幼児教育を改革してきました。
マラグッツィによって作られた教育システムは高く評価され、幼稚園は1991年アメリカのニューズウィーク誌で「世界で最も優れた10の学校」に選ばれます。教育法の礎となった彼の『子供達の100言葉』は教育に携わるものの唯一の教科書として今も大切にされています。下記にその一部を抜粋したものをご紹介します。
『冗談じゃない。百のものはここにある』
子供は
百のもので作られている。
子供は
百の言葉を
百の手を
百の考えを
遊んだり話したりする
百の考え方を
愛することの驚きを
いつも百通りに聴き分ける百のものを
歌ったり理解する
百の楽しみを
発見する
百の世界を
夢見る
百の世界を持っている。
……(一部抜粋)
引用元:『冗談じゃない。百のものはここにある』(『子供たちの100の言葉 レッジョ・エミリアの幼児教育』より 著者:ローリス・マラグッツィ 翻訳:佐藤 学 世織書房)
この詩の中に「芸術的な創造体験を通して子供の個性と才能を引き出す」、「個人の発達時期に合わせ、個性に合った方法で学習させる」、「子供の個性を大事にして尊重する」といった教育法の理念が読み取れます。この教育の信念に基づき「自主性と協調性を育むアプローチ」、「創造性を育むアプローチ」、「共同性を育むアプローチ」の3つの働きかけを使った教育法について詳しくご紹介します。