教育が無償化される!保育・幼児教育と高等教育、これからどうなる? - cocoiro(ココイロ)

いよいよ2019年の秋から、教育の無償化が始まります。教育費負担が軽減されるに期待する声も上がっていますが、一方で懸念材料も見え隠れし、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。具体的にどういった内容の制度が導入されるのか、問題点はどこにあるのか。日本の教育のゆくえを探ります。

【制度を知ろう】保育園・幼稚園の無償化

いつから始まるの?

2018年12月28日、政府の関係閣僚会議において、教育無償化制度の具体策が了承されました。幼児教育の無償化と高等教育の無償化の2本立てで、2019年の通常国会に関連法案を提出、実施の運びとなります。

保育園や幼稚園の費用が無償となる幼児教育の無償化は、2019年10月1日から、高等教育に先行してスタートする予定です。

無償化の対象となるのは?

就学前の幼児教育無償化の対象となるのは、次のような子供たちです。

保育所、認定こども園、保育ママなどの地域型保育 幼稚園 幼稚園の預かり保育 認可外保育施設 障害児通園施設
3~5歳の子供 無償 月額2.57万円まで無償 月額1.13万円まで無償 月額 3.7 万円まで無償 無償
0~2歳の子供(住民税非課税世帯のみ) 無償 月額2.57万円まで無償 月額1.13万円まで無償 月額 4.2 万円まで無償 無償
※既に実施済

ただし、通園送迎費、食材料費、行事費など実費で徴収されているものについては、無償にはなりません。

参考
平成30年12月28日関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」
文部科学省『幼児教育の無償化に関する住民向け説明資料
教育無償化に年1.5兆円 制度の具体策了承|日本経済新聞

幼児教育無償化の懸念ポイント

低年齢の待機児童が多く、認可外保育園の無償化は不十分

2018年の日本全国の待機児童数は19,895人、待機児童率にして0.73%です。これを年齢区分別に見ると、待機児童は0~2歳児が88.6%、中でも1、2歳児が74.2%を占めています。

また、2017年3月現在での認可保育所と認可外保育施設の利用人数内訳は、次の通りです。

認可外保育施設(人) 認可保育所等(人)
0~2歳 81,455 1,053,758
3歳以上 70,201 1,476,361
151,656 2,530,119

(出典:厚生労働省「平成28年度認可外保育施設の現況取りまとめ」から作成)

幼いほど待機児童になりやすく、認可外保育施設を利用している状況があるのですが、同時にそれら認可外保育施設利用児童では、年齢が小さいほど利用料がかさむという状況も存在します。

保育料(月平均/円) 無償額(月額/円)
【認可】保育所など 21,138 全額
【認可外】事業所内保育施設
0~2歳 33,345 上限42,000
3~5歳 26,984 上限37,000
6歳(就学前) 25,377
【認可外】ベビーホテル
0~2歳 51,265 上限42,000
3~5歳 42,744 上限37,000
6歳(就学前) 39,991
【認可外】ベビーシッター事業者
0~2歳 47,745 上限42,000
3~5歳 39,998 上限37,000
6歳(就学前) 33,772
【認可外】その他の保育施設
0~2歳 46,661 上限42,000
3~5歳 39,029 上限3,7000
6歳(就学前) 37,486

(出典:厚生労働省『平成27年地域児童福祉事業等調査』より作表)

3歳に満たない子供ほど認可保育所に入りにくく、そのうえ保育料が高くなってしまうという問題は、今回の無償化で解消されたとは言いにくいのかもしれません。

恩恵を被るのは結局は富裕層だけ?

今回完全無償化されるのは、保育所、認定こども園、保育ママなどの地域型保育、障害児通園施設を利用している3~5歳の子供たちのみです。このことについて、慶應義塾大学経済学部教授の赤林英夫氏は、以下のような問題点を指摘しています。

  • 低所得世帯に対してはすでに保育料の減免制度があるので、貧困世帯にとっての恩恵がない
  • 無償化の恩恵を受けるのは、現在保育料を払っている中高所得世帯であるため、教育支出格差を広げるおそれがある
  • 公的投資として意味のある、4~5歳の保育所や幼稚園を利用していない子供への支援、3歳以下の子供の教育とケアの充実が手薄

このことを踏まえ、赤林氏は、下記のように警鐘を鳴らしています。

危惧するのは、必要性に乏しい4-5歳への無償化により、保育所や幼稚園の3歳以下の定員拡大のための補助金の充実や、現在の保育の質の向上(これには保育士等の待遇の改善も含まれる)のための余地がなくなってしまうことである。

(引用元:赤林英夫(2017年)『幼児教育の無償化はマジックか?-日本の現状から出発した緻密な議論を』|SYNODOS