【制度を知ろう】高等教育の無償化
いつから始まるの?
高等教育の無償化は、幼児教育から半年遅れて、2020年4月4月1日からスタートします。
無償化の対象となるのは?
高等教育無償化の対象となるのは、次のような要件を満たす学生たちです。
- 大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の学生
- 住民税非課税世帯の学生
- 年収 300 万円未満の世帯については住民税非課税世帯の3分の2、年収300万円から年収380 万円未満の世帯については3分の1の額で支援
無償化される学費の内容は次の通りです。
①授業料等減免
大学 | 短期大学 | 高等専門学校 | 専門学校 | |
授業料 | ||||
国公立 | 約 54 万円 | 約 39 万円 | 約 23 万円 | 約 17 万円 |
私立 | 約 70 万円 | 約 62 万円 | 約 70 万円 | 約 59 万円 |
入学金 | ||||
国公立 | 約 28 万円 | 約 17 万円 | 約8万円 | 約7万円 |
私立 | 約 26 万円 | 約 25 万円 | 約 13 万円 | 約 16 万円 |
(上限額)
②給付型奨学金
国公立(大学・短大・専門学校) | 私立(大学・短大・専門学校) | |
自宅生 | 約 35 万円 | 約46 万円 |
自宅外生 | 約 80 万円 | 約 91 万円 |
(年額)
ただし、学生の学業成績や学校の教育体制・財務状況などについて、給付対象となるために、いくつかの要件が課されます。
参考
平成30年12月28日関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」
文部科学省『高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針の概要』
高等教育無償化の懸念ポイント
高等教育の質は保たれる?
国際教育開発を研究している畠山勝太氏は「日本が高等教育無償化に乗り出すのは今ではないのではないか」と疑念を呈しています。その主な理由は次のようなものです。
- 高等教育就学率の低い日本では、無償化によって就学を促進すると、教育の質の低下が起きる可能性がある
- 日本の高等教育には、私立文系中心の構造、大きな男女格差があるため、それらを考慮した中長期ビジョンがなければ、無償化の社会的な効果を失う
- 税制とセットで変えなければ、富裕層が無償化の恩恵を主に回収することになる
- 大学に対する政府のコントロールが増す危険がある
参考
畠山勝太(2017年)『アフリカから学ぶべき日本の教育無償化のダメな議論』|SYNODOS
大学後のさらなる進学と留学が目指しにくい
OECD諸国における教育制度の構造や財政、成果についてレポートする『図表でみる教育』の日本についてのカントリーノート(2017年版)は、日本の留学状況が低調であることも指摘しています。
また日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査」による分析では、経済的に困難を抱える学生はそうでない学生に比べて大学院進学から就職に進路を変える割合が多いこと、家庭からの仕送り状況は在学中や卒業後の「学びの継続」の不安と関連があることを指摘しています。
今般の高等教育の無償化の目的は、支援を受けた学生が大学等でしっかり学んだ上で、社会で自立し、活躍できるようになること
(引用元:平成30年12月28日関係閣僚合意『幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針』P10, 学業・人物に係る要件)
今回の無償化は、大学院進学や留学にかかる費用をカバーしていません。国内の大学を越えたさらなる学びをサポートするものではなく、職業人への堅実な着地を求めるものと捉えるべきなのでしょう。
参考
図表で見る教育2017年度版 カントリーノート 日本|OECD
日本学生支援機構『平成28年度学生生活調査』識者所見(望月由起)大学生3年生のキャリア形成と「家庭からの給付状況」の関連