「9歳の壁」、「10歳の壁」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? この年齢ぐらいの子供には心理面に変化が起き、劣等感を抱き始めてしまう子供もいます。子供を悩ませる「9歳の壁」や「10歳の壁」の正体とはいったい何なのでしょうか? 当記事では「9歳の壁」、「10歳の壁」の言葉の意味や影響、親としての対処法についてご紹介します。
もくじ
発達段階で訪れる「9歳の壁」「10歳の壁」とは?
「9歳の壁」、「10歳の壁」は、子供の発達段階で訪れるとされています。年齢的に小学4年生ごろであることから、「小4の壁」と呼ばれることもあります。
これらの「壁」の正体は何なのでしょうか。この時期の子供に起こる変化から、「壁」の正体をひも解いていきましょう。
10歳前後の子供にはどんな変化が起こる?
9〜10歳の子供の変化について、文部科学省では以下のように定義しています。
9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。
(引用元:3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省)
9歳以降の子供は、それまで以上に物事を追求しようと考えられるようになっていきます。より深く思考をめぐらせることができるようになっていくのです。
しかし、同資料には続けて以下のような記述があります。
自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。
(引用元:3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省)
広い視野を持って考えられるようになるからこそ、自分と周りとの間の差に敏感になっていきます。さらに心身の発達においても、個人差が広がっていく時期でもあります。したがって周囲と自分との間に差を見つけると、劣等感を感じやすくなってしまう時期であるとも言えます。
発達の個人差が顕著になること、劣等感を持ちやすくなることから、さまざまな物事に対して苦手意識を持ってしまう子供が出てきます。ここで働く意識こそ、「9歳の壁」や「10歳の壁」の正体であると言えるでしょう。
10歳の壁を厚くする「抽象的なものを理解する力」
9〜10歳の子供に訪れる変化はほかにも見られます。法政大学文学部心理学科の渡辺弥生教授は、子供の内面に起こる変化について以下のように述べています。
思考の面でも大きな変化が見られます。それまでは見たり聞いたり経験したりしたことやものについて、具体物を用いてシンプルに考えていました。それが10歳前後になると、段々と頭の中で抽象的な思考ができるようになります。
(引用元:「10歳の壁」この時期の子どもの内面に起こる変化や成長とは?【中編】|ベネッセ教育情報サイト)
これまでは目に見えるものを基準として、物事を考えていました。しかしこの年ごろからは、目に見えない事柄についても頭の中で考えられるようになっていきます。
しかし、突然に抽象的な物事を捉えられるようになっていくわけではありません。抽象的思考ができるようになる時期についても個人差があります。そのため友達同士の会話や学校の授業の内容の理解度にも、差が出やすくなる可能性があるでしょう。