手取り15万円正社員の一人暮らし~後悔しないためにすべきこと - cocoiro career (ココイロ・キャリア) - Page 2

手取り15万円の年収と会社負担額

手取り15万円の給与を従業員に支払うために、会社が負担している金額がどのくらいかご存じですか? 会社が負担している人件費から、税金や保険料などを差し引いた金額が、従業員の口座に振り込まれる手取り金額となります。手取り15万の額面給与と年収、会社が負担している人件費を計算してみましょう。

額面給与と年収

税金や保険料は、住んでいる地域や配偶者の有無などによって異なり、計算は複雑です。目安としては、厚生年金・健康保険・雇用保険で2.5万~2.7万円、住民税と所得税で1万~1.5万円、つまり毎月合計4万円くらいが、額面給与から差し引かれています。手取り15万の額面給与は19万円前後、年収はボーナスなしで228万円前後、ボーナスがある場合は年収300万円前後となります。

会社側の負担額

会社側が、従業員に手取り15万を支払うために負担している人件費は、額面給与に保険料の会社負担分を上乗せした金額です。額面給与から控除されている保険料は労働者負担分のみで、会社はそれと同額の保険料を上乗せして納付しています。控除されている保険料の合計が2.6万円の場合、会社は同額を上乗せした5.2万円を納付しています。つまり、会社が手取り15万円の従業員の人件費として負担しているのは、月約22万円です。

月22万の人件費を支払うために必要な売上高は業種によって異なります。例えば、人件費率が30%の業種の場合、手取り15万の従業員には毎月約73万円の売り上げを出す必要があります。それ以上の売り上げを上げている場合は、昇給の交渉の余地があると考えられます。

参考

業種別売上高人件費率の計算とコントロール方法 | 社長が見るブログ

正社員で手取り15万円はブラック企業か?

国税庁の発表によると、全国の25~29歳の平均年収は約370万円、30~34歳は約410万円です。手取り15万に当たる年収228万~300万円は、平均よりかなり低いことが分かります。週5日8時間労働している従業員に、手取り15万円しか支払わない企業はブラック企業なのでしょうか?

参考

平成30年分民間給与実態統計調査|国税庁、P142

手取り15万円は最低賃金以上の収入

最低賃金を下回る給与しか支払わない企業は、間違いなくブラック企業です。しかし、手取り15万円の額面給与が19万円だとすると、最低賃金は上回る計算になります。例えば、東京都の最低賃金は1時間1,013円です。1ヶ月の出勤日が22日だとすると、最低賃金の月額は17万8,288円で、額面給与は最低賃金以上なので、法的には問題ありません。

参考

地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

ブラック企業の見分け方

いくら法的に問題がなくても、従業員の生活を顧みず、不当に酷使するような会社はブラック企業と言えるでしょう。以下の特徴が当てはまれば、ブラック企業の可能性があります。

給与が最低賃金を下回っている

最低賃金以下の給与しか支払わない会社は、最低賃金法に違反しています。手取りが14万円の場合、額面給与は17万~18万円となり、東京都ではちょうど最低賃金を満たすか満たさないかのボーダーになります。

残業が過労死ラインを超える月80時間以上ある

労働基準法が定めている労働時間の上限は、週5日×8時間、1週間で40時間までです。この上限を超えて残業や休日出勤をさせる場合には、会社と労働組合(または労働者の代表)との間で通称「36(サブロク)協定」と呼ばれる時間外労働協定をあらかじめ結んでいなければなりません。36協定なしに従業員に残業させている会社は、労働基準法に違反しています。

36協定では、残業させる業務の範囲や上限時間などを定めます。上限時間は月45時間以内でなくてはなりません。月45時間というと、1日当たり約2時間の残業です。恒常的に1日2時間を超える残業がある会社は、労使間で合意した36協定に違反しています。

特別な事情があれば、例外的に月45時間を超える残業も認められますが、そのような月が年に6ヶ月を超えないことが条件となります。45時間を超えて残業させる場合、単月では100時間以内、複数月では平均80時間以内までと規定されています。単月で100時間、複数月で平均80時間は、病気や死亡、自殺のリスクが高まる「過労死ライン」と言われます。このラインを超えた残業がある会社は、従業員の健康を顧みないブラック企業です。

参考

労働時間・休日 |厚生労働省

時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

時間外労働の限度に関する基準|厚生労働省、P2

残業代が支払われない

会社は、従業員に労働基準法の規定を超えて残業や休日出勤をさせる場合、割増賃金を支払う必要があります。ただし、管理職に対しては、割増賃金の支払い義務がありません。この例外規定を利用し、実際には管理職としての権限や優遇措置がないにもかかわらず、管理職の肩書を与え、残業代を支払わない会社があります。これらの「名ばかり管理職」は労働基準法の定める「管理監督者」には当たらず、違法の可能性があります。

法律上、残業代を支払わないでよい「管理監督者」とは、会社での肩書によらず、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 企業の経営に関わる重要な職務内容を有する
  • 部門や部署を統括し、人事権や決裁権などを有する
  • 業務内容や労働時間など自らの裁量で決められる
  • 賃金面で管理職としてふさわしい待遇を受けている

参考

労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

休日が少ない・有給が取れない

厚生労働省の就労条件総合調査によると、労働者1人当たりの平均年間休日数は114.7日です。カレンダー通りに休むと年間休日数は120日なので、ほぼそれに近い数字となっています。年間休日数が100日以上の企業は、全企業の8割以上を占めます。つまり、年間休日数が100日に満たない会社は、他の会社に比べ休日が少ないと言えます。

同じ調査によると、労働者1人当たりの平均有給休暇付与日数は18日、取得数は9.4日です。会社は、勤続6ヶ月以上の従業員に対して、原則10日以上の有給休暇の付与することと、5日以上の有給休暇を取得させることが義務です。有給休暇の付与日数が極端に少ない、または有給はあっても取得できない場合は、法律違反の可能性があります。

参考

平成31年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省、第4表・第5表

年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省、P1・P3

パワハラやセクハラが横行している

労働条件は何とか法律をクリアしていても、ワンマン社長がトップダウンで無理難題を押しつけたり、酒席で女性社員にお酌を強要したりするなど、パワハラやセクハラがまかり通る会社は、ブラック企業と言えます。一つ一つのことは小さな事でも、社内の閉鎖的な人間関係の中で日常的に繰り返されると、精神的にまいってしまいます。生理的に「嫌だ」「おかしい」と思ったことは、いざというときのために記録を残しておきましょう。

人生後悔しないために何をすべきか

ブラック企業なら一刻も早く辞めよう

前章を読んで、自分の会社がブラック企業だと思ったら、一刻も早く辞めましょう。ブラック企業は、働いている人の心をむしばみます。過労自殺した人のニュースを見て、「自殺するくらいなら会社を辞めたらいいのに」と思っていませんか? ブラック企業の怖いところは、人から正常な判断力・行動力・気力を奪ってしまうことです。健康でさえあれば、人生何度でもやり直しができます。まずは我が身を守ることが大切です。

将来を見据えて転職しよう

ブラック企業ではないけれども、給与には不満な場合、将来を見据え冷静に考えてから行動を起こしましょう。5年後10年後、自分はどんな生活をしていたいですか? 今の会社で働き続けて、理想の生活に近づけるでしょうか? 今の会社ではだめな場合、理想の生活に近づくために今何をすればよいでしょうか? 一時的な衝動で転職に飛びつくのではなく、5年後、10年後に結びつくプランを立てて、実行に移しましょう。

手取り15万でも今の仕事に満足なら、副業で収入アップ

仕事内容や人間関係など、給与以外の点では今の仕事に満足している場合、転職するか難しい判断を迫られます。なぜなら、転職でたとえ給与はアップしても、仕事内容や人間関係が上手くいかなければ相対的な満足度はむしろ下がってしまうからです。その場合、副業で収入アップを図るのもよいでしょう。近年はギグワーカーとして、インターネットを駆使して単発の仕事を請け負い、副収入を得ている人が増えています。副業で違う会社や新しい業種での経験を積み、その経験を基に後に転職することも可能です。

上手な節約で、手取り15万でも満足のいく生活も

地方に住んでいる場合、手取り15万でも、ぜいたくさえしなければ満足のいく生活ができることもあるでしょう。拘束時間が長くなく、通勤にも時間がかからないような職場であれば、空いた時間を趣味や勉強、交友関係などに使うことができ、ワークライフバランスを保った生活を送ることができます。家計簿をつけて支出を管理し、不足の事態に備えて毎月一定額以上を貯金するようにしましょう。

まとめ

ツイッターでは、手取り15万を嘆く声に加え、「手取り15万ならまだいい」とさらに安い給与を公開する人もいます。嘆いていても始まりません。不満なら転職や副業など、行動を起こしましょう。1年後、2年後のキャリアアップ転職を目指し、資格取得を目指す方法もあります。我慢して働き続ければ自然と昇給したのは、ひと世代前のことです。今は、自分の道は自分で切り開くしかありません。

参考

手取り15万で一人暮らしできる?家賃はいくらにすべき?貯金は可能?|Rooch

手取り15万円程度の人の一人暮らしの生活とは? | 住まいのお役立ち情報【ホームズ】

手取り15万円は安すぎるのか?額面や年収はいくら?最低賃金は大丈夫?【税理士が解説】|Youtube

ブラック企業とは|ブラック会社の特徴10個と見抜くポイント|労働問題弁護士ナビ

この記事をかいた人

Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター。明治大学政治経済学部卒業。中国へ2年間留学。中国北京の日系広告会社で営業マネージャー。 結婚・出産後、北京で専業主婦。夫の転勤に同伴したフィジーで、アジアの女性のためのソーシャルグループ代表を務め、文化交流イベントを企画運営。2018年より、インド・デリー在住。ライターとして活動を始める。中国語HSK6級。TOEIC945点。中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期を迎えた1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。